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【セミナーレポート】DXで直面しがちな悩みに回答!住民も職員も納得のデジタル活用法を徹底解説。

社会においてDXが広まった感もある昨今。しかし多くの自治体では、ITツールの導入や次のフェーズに向けた動きの中で、戸惑いが生じているのではないでしょうか。

今回のセミナーでは、この分野に詳しい3名の講師を招き、最新事情や、自治体が抱えがちな悩みと解決策などを共有しました。当日の様子をダイジェストでお送りします。

概要

□タイトル:シンDXの恩恵を全てのかかわる人へ
□実施日:2022年10月18日(火)
□参加対象:自治体職員
□開催形式:オンライン(Zoom)
□申込者数:78名
□プログラム
 第1部:自治体DXが目指すカタチ
 第2部:コンシューマーの体験を自治体業務へ
 第3部:市民、職員の皆様に優しい自治体DXとは


自治体DXが目指すカタチ

第1部は、国のDX施策にも携わる船橋市のデジタル化推進担当職員が登壇。DX推進計画の最新事情を解説するとともに、それに対して自治体が直面する課題について共有してくれた。

<講師>

千葉 大右氏
船橋市役所 総務部
デジタル行政推進課 課長補佐

プロフィール

1994年船橋市役所入庁。住民記録システムの再構築やマイナンバー制度対応などの情報化に携わり、2020年4月より現職。2018年から総務省地域情報化アドバイザーを務めるほか、地方自治体のデジタルトランスフォーメーション推進に係る検討会等の構成員も務める。

推進計画へのモヤモヤ感から「なぜDXをやるのか」を読み解く。

私は船橋市の職員ですが、「地方自治体のデジタルトランスフォーメーション推進にかかる検討会」や、「トータルデザイン実現に向けた自治体タスクフォース」というデジタル庁の検討会にも参加しており、近い将来に起きる変化が漠然と見えてきています。ただ、各自治体には伝わっていないこともあるので、今回はその辺りを一緒に考えていきたいと思います。

まず、「自治体DX推進計画(以下、推進計画)」の改定について少し振り返ってみましょう。

テーブル中程度の精度で自動的に生成された説明

推進計画が改定されたのは令和4年9月。計画策定時にはデジタル庁も重点計画もデジ田もなかったということもあり、現在の状況に合わせた改定だといえます。重点取り組み事項は変わっていません。また、これに合わせて全体手順書やオンライン化にかかる手順書なども改定されています。ここで改めて考えておきたいのが、「なぜ自治体DXをやるのか」という点です。

例えば、推進計画の重点取り組み事項には“AI・RPA”があります。これは業務効率化という点において比較的身近なものでしょう。また“行政手続きのオンライン化”も住民の利便性向上のために必要だと分かります。しかし、例えば“自治体システムの標準化”で、目標は経費の3割削減と言われていますが、むしろお金がかかるのではといった懸念もあり、このあたりからモヤッとしてくる。マイナンバーカードの普及も今後のことは不透明です。ましてやテレワークになると、窓口業務などでは難しいのでは、といった疑問があります。

そこで思い出していただきたいのが「自治体戦略2040構想研究会」が出した第二次報告書です。

テキスト自動的に生成された説明

この報告書に、DXに取り組む理由が分かりやすく書かれています。それは“今後やってくる労働力不足に対して、人口縮減時代のパラダイム=転換が必要だ”ということです。ご存じだと思いますが、団塊ジュニアのど真ん中世代は200万ほどいるのに対し、2017年に生まれた子どもは約95万人しかいません。2019年では90万人を切っている状況です。2040年頃には特に若年層の労働力が不足するので、スマート自治体への転換が必要。その1つがAI・RPAといったものを使いこなすことで、もう1つが自治体行政の標準化・共通化である、といったことがこの報告書でうたわれているわけです。

タイムライン自動的に生成された説明

民間サービスも手本にしつつ住民目線のDXを進める!

こうした現実を踏まえ、昨年12月に行われた「デジタル社会構想会議」という有識者会議で、私も関わっている自治体職員有志チームが発表したのが「対面窓口のデジタル化」です。北見市の「書かない窓口」のようなもので、窓口でもデジタルを活用し、住民のためになるようなサービスが必要だといったことを紹介しました。

また、身近な拠点でのサービス拡充という面で、神戸市などで取り組んでいる「リモート窓口」も同様です。窓口を必要としている住民を取り残すわけにはいかないので、そうした方々への対応が今後必要なのではといったことを紹介しています。これらは後に、令和3年度のデジタル田園都市国家構想推進交付金の中で、タイプⅠ事例として取り上げられ、全国の自治体で交付金を使った取り組みが進められています。こうした窓口のデジタル化をまとめたものが下図です。

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ここで前掲の「これからの行政サービス」という図に戻りますが、自治体DXで現在できていないものの1つが「行政とのコミュニケーション」です。特にサービスの処理状況をリアルタイムで把握することはできておらず、もっとインタラクティブに住民とやりとりできれば、便利になるのではといった点があります。

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上図はデンマークの市民用ワンストップポータルですが、2000もの行政手続きが可能です。これに対し、日本のマイナポータルは、ポータルサイトとしての役割・機能は持っていますが、2000の手続きというまでにはなっていませんし、これとは別に、市区町村もポータルサイトを持っていたりします。手続きが集約されておらず、マイナポータルの中でできることも限られているといった状況です。

では民間はどうか。例えばドコモの「マイドコモ」ではダッシュボードが画面上にあって、情報閲覧も手続きも全部できます。行政のポータルサイトも、こうした点を改善して民間並みのサービスに近づかないと、将来的にあまり変わっていかないのではないかという懸念があります。

もちろん国も制度を変えたり、様々な取り組みを進めたりしています。代表的な例でいうと、マイナンバーカードの電子証明書がスマホに搭載されるというもの。スマホの中に電子証明書が入れば、手続きも非常にやりやすくなるはず。こうした部分から利用者の体験が変わっていけば、使う人も増えていくのではないでしょうか。

皆さんも、今後の取り組みにおいては、何があっても“利用者中心の行政サービス”ということを念頭に置き、行政サービス・行政手続きのオンライン化などを進めていくと良いのでは、と考えています。

コンシューマーの体験を自治体業務へ

自治体の課題は、時に事業者の客観的な指摘の方が的確に本質を捉えていることもある。第2部からは、そうしたIT系事業者からの指摘と共に、課題解決に向けて提供されているサービスの概要を紹介する。

<講師>

山田 一也氏
ServiceNow Japan合同会社

プロフィール

日本アイ・ビー・エムや日本マイクロソフトなどでプリセールスSEの職務を20年以上経験。2020年8月にServiceNowに入社し、2021年自治体担当として行政DXを推進する活動を実施中。

縦割りの組織体制はDX推進においても障壁となる。

このコロナ禍では、給付金のオンライン申請や、ワクチンの接種予約などが使いにくい、という課題が浮き彫りになりました。政府もデジタル化を進めていく中で、ユーザー視点でのシステム設計の重要性を研究しているのですが、行政組織においてはなかなか難しい。なぜそのような課題を抱えてしまうのか、といった話を中心にお伝えします。

例えば“子育て”という観点で見ると、行政では出生届や医療費の助成、児童手当の請求などが細分化された組織で運用されています。そして、個々の組織でシステムを導入するので統一感がなく、見た目もIDも違う。住民から見たら、子どもが生まれてから中学校を卒業するまでのライフイベントで、個別に把握する必要があるのです。さらに、行政では制度がきちんと適用されているのか、という点を管理する必要があるため、システムをつくる際にもそちら側に注力される傾向があります。

そのため、ユーザー視点があまり見えない状態で議論されているというのが当たり前でした。こうしたやり方では、世の中の動きに対応していくのが難しい。速いスピードで変わりゆく世の中の状況に合わせつつ、ユーザーの多様性などにどう応えていくのか、どんな仕組みにしていくのか、というのを改めて考え、実現する必要があります。

ゲーム画面のスクリーンショット中程度の精度で自動的に生成された説明

ユーザーが不在という現状は、上図左のような状態です。これは行政と企業とのコミュニケーションの問題だと私は考えており、例えば調達仕様書においては細かい仕様の部分を満たしているかどうかで決められる傾向にありました。しかしこれからは、“誰に・何を・どのように”利用してもらって、それで“どういう効果”を生みたいのか、という点を基軸に考えていく必要があると思います。AmazonやUber Eatsを想像していただければと思うのですが、それらの仕組みで機能ごとにアプリがつくられているようなことはありません。

千葉さんの話でもあった通り、こうした考え方を行政でも取り込んでいくことが重要になってきます。

グラフィカル ユーザー インターフェイス自動的に生成された説明

デジタル統合とシームレス化で住民・職員のも満足度を上げる!

ではそれを踏まえた上で、行政機関には何が求められるかというと、上図左側の部分がそれをあらわしています。重要なのは、国民、事業者に向けたサービスにおける満足度の向上です。しかし今までの考え方では実現が難しいので、ユーザー体験の見直しというものが求められます。

もう1点は図の右側にある職員エクスペリエンスの向上です。こちらが深刻で、我々も多くの自治体から「有望な若手が辞めていく」という悲痛な声を聞きます。市民サービスだけでなく、職員満足度の向上も必須。そのためにも、庁内・外問わずワンスオンリー、ワンストップでサービスを作れる共通基盤を持つことが重要なのです。

しかし、“職員エクスペリエンスの向上”を実現しようとすると、「デジタル化をすると仕事が増える」という声が出てきます。紙の申請とデジタルの申請の2つが存在していることが大きな原因で、業務が減らない。この状態にマイナポータルが追加されたときには一体どうなるのか、というのが課題です。

これに対し我々は、全てデジタルで統合するという効率化を提案します。せっかくデジタル化されているものが紙やエクセルに変換され、承認プロセスがまわって、最後にそれぞれの文書管理システムに入っていく……これでは大変です。例えば練馬区には65歳以上の高齢者が約16万人います。この方々にワクチン接種を伝えると、16万人が一斉に連絡してくる。前述のような作業を16万件繰り返すのは負担が重すぎます。そうしたことをデジタルに統合し、職員の手を介在せずに最初から最後までデジタルで自動化していくのです。

タイムライン自動的に生成された説明

この取り組みを進める上で大事なポイントは、全庁基盤でやるということです。ただし、これが止まってしまうと庁内業務が止まってしまうことにつながるので、そのリスクを避ける機密性・完全性・可用性という情報セキュリティの要素が重要になります。

当社の「Now Platform」は、この3要素を考慮したアーキテクチャになっています。お客さまごとに個別にデータベースを用意するので、例えばパッチ適用とかアップグレードなどをお客さまの好きなタイミングで実施できます。また全てのデータは1つのデータベースに保持されるので、データが散在することがなく、データの整合性を考えたり、面倒なプログラミングをしたりする必要もありません。

テキスト が含まれている画像自動的に生成された説明

Now Platformは単一のアーキテクチャ、単一のデータベースで構築されており、ここに様々な部品が置かれています。その部品がある程度パッケージ化されているSaaSを用意。そのSaaSをローコード、ノーコードで少しカスタマイズすることで、市民、事業者はもちろん職員も、ここを開けばやりたいことができるという環境が構築できます。これはポータルである必要はなく、既存の電子申請やSNS、あるいは庁内でTEAMSを活用しているのであればそれを使えばOKです。もちろんPCだけでなくスマートフォンにも対応しています。

このように、ユーザーが入力した情報がデジタルでバックエンドにある各業務システムに流し込まれることで、最初から最後までシームレスに連携する本当のDXを実現することができるようになるのです。

市民、職員の皆様に優しい自治体DXとは

第3部はITサービスマネジメントを手がける「Blueship」の担当者が登壇。これまで自治体をサポートしてきたノウハウの中から、DXで直面しやすい3つの壁を取り上げ、それぞれの解決法について分かりやすく解説する。

<講師>

野﨑 祥司氏
株式会社Blueship 専務取締役

プロフィール

新卒で損害保険のソフトウェアパッケージ会社に入社。インフラの担当として4年間活躍し、2004年、株式会社Blueshipに創立メンバーとして参加。27歳で会社全体の売り上げ向上を職掌として取締役に就任。現在は専務取締役。

自治体DXで抱えがちな3つの悩みと、それに対する回答。

私からはまず、自治体DXのお悩みポイントを紹介します。我々が多くの自治体を訪問した中で聞いた、現場で本当に困っていることの代表的なものが以下の3つです。これらの課題について、ひとつひとつ、我々の回答をお話します。

グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション自動的に生成された説明

「作業負担が減っていない」

上図では、電子申請の例を挙げています。使われているツールはクラウドサービスで、主管部門が住民の申請を印刷してトレーなどにいったん入れる。それとは別に紙で申請されたものもこのトレーにまとめる。そこから申し送り票を添付して審査業務にまわす……という流れになっているかと思いますが、結局"紙はなくせない"という部分が残っています。この点を我々は調査しました。

グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション自動的に生成された説明

昨年から行われている特別定額給付金について、当社では電子申請と紙申請の両方を受け付けるサービスを展開しました。そのときのデータなのですが、子育て世帯への給付時は、電子申請が約7割で、紙は約3割でした。これが非課税世帯になると、ご年配の方が中心になるという面もあり、電子は約3割、紙が約7割と逆転しています。このような状態はしばらく続くと認識しています。そこで我々が何を解決できるのか、というのが下図です。

タイムライン自動的に生成された説明

住民が電子申請をすると、申請情報は全て「servicenow(サービスナウ)」の中に格納されます。紙申請はAI-OCRで読み取り、作業はRPAで自動化して全てservicenowに集約。職員は審査をするだけです。また、この仕組みの中では、ブラウザ上から今のステータスも分かるようになっています。

参考事例として、以前30名体制で対応しており、それでも給付金の対応が追いついていないという自治体があったのですが、我々のサービスを提供した後は6名体制になり、かつ約3倍近くの生産性を作り出した、というものがあります。

「何をどう進めればいいのか」

次に進め方についてですが、千葉さんの話でもあった通り、"市民ファースト=利用者側の使いやすさ"を常に考えていく必要があります。その中で我々は、以下のように整理しました。

グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション自動的に生成された説明

必要なのは総合ポータルです。市民は、まずどこを見ればいいのか分かるようになります。ただし紙の運用も残っているので、バックオフィスの作業も全てワンストップにして、シームレスな連携を行うというのがポイントです。同時に、問い合わせを受けるコンタクトセンターには、FAQやチャットなどチャンネルを増やし、かつ職員への連絡先などを全て電子化してつなげ、アサインも整えていきます。

これらの実施について当社が提案しているのは、アジャイル方式×ローコード開発+自治体標準テンプレートでスピード開発を実現するというものです。とはいえ、職員がすぐにこれらをフル活用するというのは難しいので、まずは我々の方で、“アジャイルリーダー”や“スクラムマスター”といった要員を準備しサポートしています。

「分かりにくい」

オンライン申請の進み方は自治体によって違いますが、分かりづらさを解消するためには、窓口を統一し、市民の動線にあわせていくことが重要。下図がそのイメージです。

グラフィカル ユーザー インターフェイス が含まれている画像自動的に生成された説明

中央に「バーチャル総合案内」とありますが、まずは市民の情報を入力すると、その人に必要なオンライン申請が案内される。これをタブレットなどで実現することで、高齢者の家に職員が出向き、一緒に操作しながら申請する、といったことも可能になります。

また、図の中にある「マイページ」では、住民個々の情報や、市からの通知などを見ることができ、市民の満足度を上げることにつながります。統合IDはシングルサインオンを可能にするもので、一度認証を通せば他サービスを使うときに再認証をする必要がなくなり、ユーザーのストレスも解消されます。

これらの機能を搭載した「らくらく自治体総合プラットホーム」を通し、当社は自治体と一緒に取り組みを進めていきたい、と考えています。市民は、煩わしい事務処理や申請自体が簡便になっていくことで家族との時間などが増え、職員は事務処理に追われることから脱し、市民と触れ合う仕事にもっと力を注げるようになる。そういう時間を創出するための手段としてご検討いただければと考えています。お気軽にご相談ください。
 

お問い合わせ

ジチタイワークス セミナー運営事務局

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