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【セミナーレポート】情報配信の課題を“まとめて”解決! 正確・迅速・効率的な情報配信へ向けたシステム一元化の手法とは?

多様化する情報伝達の手段。住民への情報配信においても対応は必要ですが、自治体のリソースは限られています。このジレンマを解決する方法はあるのでしょうか。

このセミナーでは、“システム一元化”をキーワードに、住民だけでなく庁内にもメリットをもたらすDXと、国の支援について情報を共有していただきました。

概要

□タイトル:全庁一体での情報配信DX
 ~課を横断したシステム連携により進む効率化と迅速な情報配信~
□実施日:2022年8月23日(火)
□参加対象:自治体職員
□開催形式:オンライン(Zoom)
□申込者数:111名
□プログラム:
 第1部:自治体DXの推進について
 第2部:導入事例に学ぶ全庁一体での情報配信DX
 第3部:全庁一体の情報配信がもたらす効果とオペレーション構築の裏側


自治体DXの推進について

自治体現場での状況や解決策を共有する前に、まずは課題の整理から。第1部では総務省の担当者が登壇し、自治体DXの現状と課題について実例を交えて紹介し、国の補助政策などについても語ってくれた。

<講師>

総務省 自治行政局 地域力創造グループ
地域情報化企画室
 

やがて来る“2040年問題”とそれに対する総務省の考え。

まず地方制度調査会が総理に提出した答申の内容からお伝えします。

当省では“2040年問題”という言い方をしていますが、2040年頃、地方行政に大きな転換期が訪れるということに危機感をもってまとめたのがこの答申です。

本答申における基本的な認識ですが、2040年頃までに人口減少・高齢化が進み、同時に更新時期の到来したインフラが増加。地方公務員の数は減り、高齢化も進みます。一方で、行政が担うべき社会福祉の部分はより深まっていくため、そうした問題に今度どう向き合っていくべきかを考える、という点にあります。また、新型コロナへの対応として、どうすれば行政サービスを引き続き提供できるのか、ということも考えられています。

上記資料に「目指すべき地方行政の姿」と書かれていますが、注目していただきたいのは「地方行政のデジタル化」という部分です。これは、Society5.0における技術の進展を最大限活用し、時間や場所を問わず迅速かつ正確な行政サービスの提供を推進しましょうということで、「公務員が減る、仕事は増える、では効率化するためにデジタル化を」という考え方です。

具体的には、国・地方を通じた行政手続きのデジタル化、つまりマイナンバーやマイナンバーカードを使ったデジタル化の推進をはじめ、情報システムの標準化、AI活用、データ利活用と個人情報保護制度があり、こうした取り組みを進めるために人材面の対応をとりつつ国としても自治体DXを進めていこうという考えです。

当省では、令和2年12月に「自治体DX推進計画」を定めました。また、その流れを踏まえ令和3年7月には「自治体DX推進手順書」をまとめています。さらに令和4年には、改めて「デジタル社会の実現に向けた重点計画」や、「デジタル田園都市国家構想基本方針」、「デジタル原則に照らした規則の一括見直しプラン」が策定され、これらを踏まえて推進計画も今後改定していく考えです。最新情報はホームページに載せる予定ですのでご確認ください。

自治体DXの現状と実例、国からの補助について。

続いて、自治体DXの現状と、当省の課題意識などをお伝えします。

上記は自治体DX全体手順書の概要です。大きく4ステップに分かれており、その手順に沿って何か取り組みを支援できないかという点をまとめています。

このテーマに沿った実例ですが、山形県舟形町では、若手職員で構成される委員会でDX計画を検討しています。全庁的なDXの認識共有を図るために、各課の現状やヒアリングを、委員会を設けて取り組んだという事例です。

また、群馬県前橋市では、市が果たすべき使命や存在意義、実現したい未来、組織がもつべき共通の価値観を明示したDX推進計画を策定されています。こうしたゴールや目的意識を庁内で整理・共有し、様々な取り組みを推進する土台をつくったそうです。

では、そのDXが現在日本でどのくらい進んでいるのか、という点です。

上の表は令和3年4月時点の調査です。赤枠で囲っている通り、やはり小規模の団体において取り組みが遅れがちだということが見えてきます。特に外部人材の活用が遅れているとみられ、この部分に力を入れて取り組んでいきたいと考えています。

当省では、DXを進める上で自治体のリソースだけでは限界があるという認識に立ち、例えば首長をCIOとしておいたときに、外部の方がCIO補佐官として入ることで、今まで庁内になかった発想や専門的な知見などが得られ、DXが進むのではないかと考えています。

こうした観点から、市区町村がCIO補佐官として外部人材を任用するときには、必要な経費について特別交付税措置を講じています。なお、この特別交付税措置の期間については、DX計画が令和7年度までと定めている関係もあり、令和7年度までは措置するとしています。

最後に「情報配信」の取り組みについて。当省では自治体DX推進計画に合わせ、「地域社会のデジタル化にかかる参考事例集」をまとめています。地域社会の中でどんなことがデジタル化で良くなるのかということをまとめたものです。もともと令和3年に策定したのですが、この8月中にバージョンアップを図ろうと考えています。

こうした地域の取り組みに対して、地方財政措置を令和3年、4年とそれぞれ2,000億円計上しています。重点計画においては令和5年度も引き続き支援する予定で、今後財政当局等々の検討が進むものと考えているところです。

また、「デジタル田園都市国家都市構想」というものがありますが、その交付金においても、各自治体の創意工夫をこらした取り組みに対して、交付金を出す仕組みがありますので、ぜひご活用ください。

導入事例に学ぶ全庁一体での情報配信DX

“情報配信”は、自治体DXを実施する上で効果を実感しやすい分野でもある。このジャンルにおいて全国で圧倒的なシェアを誇るのがバイザー社のツール。自治体に支持される秘密はどこにあるのか、同社の担当者が解説する。

<講師>

星 聡太氏
バイザー株式会社 営業部

プロフィール

全国の自治体様向けに情報発信ソリューションのインサイドセールスを担当。


コロナ禍で浮き彫りになった情報配信に関する課題とは。

私たちバイザー株式会社は、2007年に高速メール配信システム「すぐメール」を提供開始し、2018年には進化版の一斉情報配信システム「すぐメールPlus」をリリース。ほかにも職員安否確認・参集システムの「すぐ参集」や、教育現場と家庭をつなぐ連絡システム「すぐーる」を提供。全国500以上の自治体に導入いただいています。

この情報配信という分野ですが、コロナ禍の影響により自治体で情報配信の頻度が増加し、それに伴い様々な課題が顕在化しています。例えば防災の部署では感染者情報やワクチン接種の案内などが発生しましたが、人員不足や、配信メディアの多様化などがあり、かつ配信メディアの管理部署が異なることで迅速に情報配信ができないという声があがっています。

また、教育現場でもコロナによる一斉休校の周知や、保護者との欠席連絡、アンケートなど双方での連絡機会が増え、職員の負担もかなり増しているようです。

こうした課題に対し、全国で多くの自治体がDXによる解決に取り組んでいます。例えば岐阜県神戸町は、早くから住民向け、職員向け、教育現場向けに迅速な情報伝達を行う重要性と、全庁的に同じ使用感で連携できる必要性を認識し、アプリなども活用され、まち全体の情報共有の仕組みを変えていくために当社のサービスを導入されました。

これらサービスの中から、まず「すぐメールPlus」の概要を説明します。

非常時に、最小限のマンパワーであらゆるメディアに一斉配信!

防災部署が現状抱える大きな課題として、「人員不足」、「メディアの多様化への対応」、「防災行政無線が届かない住民がいる」の3つが挙げられます。これに対し、すぐメールPlusを導入した場合、1つの操作卓から複数メディアへの一斉配信が可能になります。少ない人員で対応でき、配信忘れや誤配信などのリスクも軽減。メディアの違いによるタイムラグも抑えた住民への情報配信を実現します。

同時に、地震やJアラート、気象情報と連携し、特定の条件の際にあらかじめ用意したテンプレートをもとに各メディアへ一斉配信することも可能。例えば夜中に地震が発生した場合、現場に職員がいなくても、住民に警報などを配信することができます。

また、誤配信を避けるため部署ごとにアカウントを分けて作成することができ、ほかにも多言語での翻訳配信など、公共用途に特化した便利機能もあります。

自治体の導入事例として、例えば茨城県つくばみらい市では、従来、職員が1人で全てのメディアを配信するのに約30分かかっており、メディアによって管轄部署が異なるので迅速に情報伝達ができないという課題がありましたが、すぐメールPlus導入後は、配信メディアが増えたのにも関わらず作業時間は約5分に短縮できました。また、防災職員が、広報の担当するSNSにも配信できるので、より時間が短縮できているということです。

教育現場とのシステム連携でユーザーの大幅増も見込める!

さらに、アプリならではの機能として、日常的に使えるコンテンツも用意しています。例えば、地域で開催されるイベントの内容、場所や日時を登録できるイベントカレンダーなどです。

このすぐメールPlusには、教育機関向けの「すぐーる」との連携機能があります。この2つを導入している自治体であれば、配信情報を両ツールで連携し、すぐーるのユーザー(保護者)にも防災などの情報を届けることが可能。毎年の入学シーズンには保護者の登録増加が見込めるため、より多くの人に伝達できるようになるのが特徴です。

すぐーるを教育委員会で一括導入するメリットとしては、まず市内の学校の運用状況が確認できるという点と、教育委員会から保護者へ直接アンケートやメッセージを配信できるという点があります。

また、生徒数の多い学校と少ない学校ではPTA会費が違うので、学校により連絡システムが使えないなど情報伝達の格差が生じていることがありますが、すぐーるの一括導入により、保護者はどの学校でも同じように情報を受け取ることができるようになり、先生が異動してもシステムが同じため運用がラクになった、という声もいただいています。

そのほか、すぐーるの特徴として、お便りのデジタル化があります。紙の配布物では時間とコストがかかりますが、すぐーる導入後はアプリで配信可能なので、こうした課題も解消され、保護者の利便性も向上します。

欠席・遅刻連絡についても、コロナ禍では毎朝電話が鳴りっぱなしだった学校が、すぐーるの導入で管理画面をチェックするだけで良くなり、ほかの業務ができるようになったという話もあります。

最後に、「すぐ参集」について説明します。

すぐ参集は有事の際に職員の安否確認や、参集のアンケートが配信できるシステムです。気象情報と連携した自動配信も可能で、すぐメールPlusと共に導入された場合は、例えば夜中に地震が発生した際に、すぐメールPlusで住民に自動配信し、すぐ参集では職員に安否確認と参集のアンケートを配信できます。

職員から回答があるまで一定時間ごとにメール、LINE、電話と繰り返し配信することで、確認漏れや情報伝達ミスを軽減する「リレー配信」の機能や、アンケートを自動集計することで状況確認がスムーズにできるという特徴もあります。

ぜひご検討ください。

全庁一体の情報配信がもたらす効果とオペレーション構築の裏側

第3部は自治体での導入事例。情報配信システムを、庁内・庁外、および非常時・平時問わず一元化し、以前から抱えていた課題を一挙に解決した土佐市がその経緯と導入後の効果について共有してくれた。

<講師>

野田 太以良氏
土佐市 企画財政課 係長

プロフィール

平成20年土佐市役所に入庁
平成30年4月から情報システム担当。


どの配信手段も一長一短…システム一元化前の土佐市の課題。

土佐市の野田と申します。私からは、当市の情報配信システムの導入経過や導入後の所管などについてお話しします。

まず、バイザー社のサービスを導入する前の状況についてです。以前は市民への情報配信は市のホームページか広報紙、防災行政無線、防災メールしかありませんでした。それぞれ一長一短があり、広報紙は緊急のお知らせはしにくく、全市民に行き渡らないことが課題です。

ホームページはタイムリーに掲載できますが、自発的に閲覧してもらう必要があり、掲載が認知されていない場合がありました。防災行政無線については音声が聞き取りにくい場所があり、そもそも市内にいないと伝わらないことが課題でした。

また、登録制の防災メールがあったのですが、災害時に情報を送ることや、市職員の参集、消防団への連絡が主な用途であり、コロナ禍では保育園での連絡手段としても利用していましたが、平時での市民への通知手段ではありませんでした。

ほかにも、長寿政策部門での一斉架電システムがあり、災害時には高齢者や障害者などの、特に配慮が必要な方に対して電話や個別のFAX送信をしていました。しかしこのシステムは、防災担当課が防災行政無線で流した内容を、長寿政策部門の担当職員が録音し直して架電するという運用になっており、同じ内容を再録音するという二度手間となっていました。

学校現場ではフリーのメール配信ソフトを利用していました。そうした中、新たにアプリでの情報配信を検討している部署があり、予算の査定の際に複数の課からアプリ導入の要望が出ました。しかしコストが高額になることや、同じ市で複数のアプリがあれば市民の手間が増え、職員も異動のたびに使い方を覚えなければならず、利用者が増えるのかという観点も含めシステム部門としては懐疑的でした。

住民も職員もメリットを感じつつ5つの課題を一挙に解決!

こうした話が出る以前から、LINEの自治体アカウントを申請していたこともあって、まずはLINEを活用したシステムへの一本化を検討することとなりました。そこで、各部署の代表者に集まってもらって、防災メールを廃止してLINEでの情報配信に移行したいと説明を行ったのですが、消防の方から、「消防団には高齢の方が多くガラケーを使用しているため、メールは残してほしい」との要望がありました。

また長寿政策の二度手間の件や、保育園でもメールに代わるシステムが必要だということもあったので、それぞれの対応について検討し直すことになりました。

その時点でバイザー社に話を聞くと、マルチメディア配信が可能なすぐメールPlusやすぐ参集があれば一元化できるという話になりました。そこで再度、各課の担当者と協議した結果、好反応が得られ、セットで導入することで下図の通り5つの課題を同時に解決できると分かり、詳細に要件を決めていくことになりました。

実際の運用は令和4年4月から開始。運用の成果として、メールよりLINEの登録者数が増加しました。なお、下図のメールの割合には、従来使用していた防災メールの利用者も含まれる為、新規の登録者としてはLINEが多かったと把握しています。

スモールスタートで進めようということになっていたので、一斉配信を希望していた課や、市民が興味のありそうなことをピックアップしてカテゴリを作成しています。

例えば、すぐーるについては、保育園の休園などの連絡は以前からメールで送っているのですが、保護者が受信するメールボックスにメールが埋もれて結局伝わっていないといった事例があった中、すぐーるはアプリなので気づきやすくなったことや、欠席連絡を電話でしなくても良くなったことに高い評価を得ています。小・中学校でも同様で、ほかにもイベントの情報を載せるといった使い方をされているようです。

また、教育委員会が管理者となるので、各学校を経由せずとも、教委から一斉に保護者へ送信できるようになり、効率化が図れています。

すぐ参集については、導入以降に大きな災害などは起きていませんが、導入時点やテスト段階では、防災担当などから「配信の手間が省けるし、時間も短縮できるのがいい」といった評価を得ています。リレー配信の機能についても、LINE、電話、メールの順番でくるのでより気づきやすくなり、対応も迅速化できるといった意見が出ています。以上、当市の導入経過についてお伝えさせていただきました。
 

 

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ジチタイワークス セミナー運営事務局

TEL:092-716-1480
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