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【セミナーレポート】納得感のある人事が組織のパフォーマンスを高める! 人事最適化の進め方と、人事DXの考え方。

自治体ならではの悩みの1つといえる「人事評価制度」。成果が定量化しづらいため、職員が評価に対し不満を感じることもあります。

このセミナーでは、元日南市長の﨑田氏と、タレントマネジメントシステムを開発する株式会社カオナビが、DXの視点を軸に人事評価のあるべき姿について意見を交換しました。

概要

□タイトル:人事評価制度と運用を見直すメリットはここにある!~自治体の成長につながる人材管理~
□実施日:2022年6月8日(水)
□参加対象:自治体職員
□開催形式:オンライン(Zoom)
□参加者数:115人
□プログラム:
 第1部:人事評価制度はなぜ今、必要か
 第2部:自治体職員の力を引き出す、人事DXの進め方とその効果
 第3部:トークセッション/質疑応答


人事評価制度はなぜ今、必要か

<講師>

﨑田 恭平氏
元宮崎県日南市長

プロフィール

1979年生まれ、宮崎県日南市出身。九州大学工学部卒業後、宮崎県庁、厚生労働省を経て、2013年4月に当時全国で2番目の若さ(33歳)で日南市長に就任。2期8年を務め、3期目は出馬せず、2021年4月に退任。現在は株式会社飫肥社中の代表取締役を務める。


人事評価制度は職員の給与に関わるもの。しかし、それ以外の側面が見落とされがちだ。本セミナーの第1部では、元日南市長の﨑田氏に自らの経験を踏まえつつ、DXの視点も含めた人事評価制度の理想像について語ってもらった。

人事評価制度で職場のパフォーマンスを上げる!

人事評価制度は難しいものです。私自身も市長職にあった頃、非常に悩みました。民間の方と話をすると、"なぜ公務員は思い切ったことができないのか"、"仕事の結果を数値化して給与に差をつければいいのでは"といったことを言われたりしますが、それが難しいというのが自治体の現実です。

例えば水道課では水道料金の徴収をきちんとやることが重要ですが、単に徴収率を上げればいいというわけではなく、仮に貧困家庭があった場合には催促をいったんストップして、福祉課につなぎ、家庭の経済事情をどう整えていくかという観点に立つ必要もあります。1つの尺度で評価できない場面も多いのです。

そこで大切なのは、人事評価制度によって「働きがいのある職場をつくっていく」ということ。成果を数値化して給与を上げるとか、昇進を早めるといった思い切ったことをするのは大事ですが、自治体には高い志をもって職員になった方が多くいるからこそ、それぞれの職場でストレスなく、自分の頑張りがきちんと評価されている、少なくとも見てもらっていると思える体制に移行していくことが大事です。

重要視すべきポイントとしては、人事評価制度を使って“コミュニケーションの活発な職場”をどうつくっていくかということ。例えば、部下が新しい企画を考えたときに、それを上司が前向きに聞いてくれる職場をつくっておけば、さらに斬新なアイデアが上がってくるかもしれません。若手職員の“諦め”をつくらず、やる気を引き出す空気をつくっていくことが大事なのです。

これに対して「自分はそう思っている」という役職者がいたとしても、きちんと言葉や態度で示さないと伝わりません。「人事課がつくった制度があるのでそれをこなしていく」というモチベーションでやるのか、あるいは「職場のパフォーマンスを上げる絶好の機会だ」と捉えるかによって、人事評価制度が活きるかどうかが変わってくる。これが本質だと思います。

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制度を推進するカギはDXで負担を増やさないこと。

では、現状から一歩踏み込んだ仕組みにする上での課題は何かというと、首長や幹部の腹の据わり方が大きいといえます。同時に、現場職員が必要であると思われる施策について、上に向けて提言できる空気感が職場に醸成されているかどうかにもよるでしょう。

また、もう1つは、仕事をする中で、人事評価制度で面倒な書類作成が増えてしまったと思っている部署があるとしたら、制度はマイナスにしかなりません。やはり人事課の方が、現場の業務負担を減らす手法をとっていくという点も大事であり、そういう視点でDX化をすると、人事課の仕事自体もラクになるはずです。

こうしたDX化には副次的な効果もあります。上司がノートに手書きでメモするようなやり方ではなく、システムの中にデータを入れていくことで、「一定の透明性が確保されている」という印象も生まれると思います。これは、若手職員や、現場ではものが言えない職員のやる気を引き出すことにもつながるかもしれません。

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やる気を引き出す伝え方で職員のポテンシャルを最大化。

次に、どう定着させるかという点ですが、この人事評価制度をポジティブに捉えてもらえるよう広めていくことが大事です。人事評価制度を一生懸命PRしても「給与が上がるわけではない」と考える職員もいると思います。役所内で思い切った改革はやりづらいからです。しかし、この制度をきちんと活用することで、「現在自分が抱えている仕事上の課題を、上司や職場に共有できる機会になる」とか、「困っていることをきちんとくみ取ってもらえる場になる」といった“本質”がきちんと共有され、それが理解されれば定着していくはずです。

そこで活かせるのがDXですが、使い勝手の良さを追求すると同時に、デジタルを使うことでこの職場は良くなる・楽しくなると思ってもらえるような手法を目指してほしい。単純にシステムを入れるということではなく、多々あるシステムの中から、働きやすい職場を生むということに資するDXにつながるものを見極めることが大事です。

自治体で働き方の評価をする難しさはありますが、できない理由を並べるのは簡単ですし、それでは何も変わりません。全国の自治体職員がやりがいをもっていきいきと仕事をすることが、日本全体の輝きにつながっていきますし、人事課の皆さんは自分の役所の職員がどうすれば「やるぞ!」というモチベーションになるのか、という意識を忘れないでほしいと思います。

この後には、自治体との成功事例を多くつくっている取り組みの発表があるので、私自身も一視聴者として聞きながら、後に質問をぶつけていきたいと思います。

自治体職員の力を引き出す、人事DXの進め方とその効果

<講師>

野田 和也氏
株式会社カオナビ アカウント本部アカウント2部 部長

プロフィール

慶応義塾大学卒業後、新卒で大手コンサルティング企業に入社し、デジタル部門のコンサルタントとしてCRMプロジェクトなどを担当。その後、カオナビに入社、開発からセールス・サポートまでの事業戦略策定に従事。マネジャーとして多数の自治体、エンタープライズ企業を支援した後、同部門の部長に就任、現在に至る。


自治体の人事を最適化し、職員のポテンシャルを発揮してもらうにはデジタルの力が不可欠だ。市場には様々なツールがあふれているが、それによって何がどう変わるのか。ここからは、自治体での導入実績も多い「カオナビ」について、担当者がその内容と効果を語る。

多くの自治体が抱える人事の“3つの課題”とは?

当社は、タレントマネジメントシステムという領域において、「カオナビ」というサービスを提供しています。これは人事評価や配置、育成、離職防止といった部分にフォーカスした商品です。民間も含めて導入実績は2,500以上。自治体の事例としては、魚沼市や椎葉村、韮崎市などで導入されており、総務省でも利用されています。

まず紹介したいのが、当社が自治体向けに実施した人事の課題に関するアンケートの結果です。「人事評価制度の定着」「人事業務の効率化」「人材の発掘」と上位3つで43%を占めており、現場の課題が垣間見えます。

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また、DXに関連した質問では、上図の通り何かしらの評価システムを導入している自治体が45%。検討中までを含めると62%となっており、評価領域ではDXが進んでいるという印象です。実際に、この2、3年で我々が自治体を支援する機会もかなり増えています。そうした中で、当社が多く頂く要望は以下のようなものです。

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こうした点をカオナビが解決できます。カオナビは、紙やエクセル、属人的な情報、人事・給与情報などを一元化して、人事担当者だけでなく現場の方、管理職の方が情報を登録し、それを見ながらマネジメントしつつ評価のフィードバックをするためのクラウドシステムです。

人事を可視化し多面的に支援する「カオナビ」の仕組み。

ここからは機能に関する説明です。トップ画面では、カオナビという名前の通り職員の顔写真が並び、これをキーに情報を管理。どの部署に誰がいるかも分かりやすく表示されます。導入自治体では、今までエクセルで入力していたものをカオナビ上に移して運用されているケースが大半です。

カオナビの画面はエクセルのように操作でき、関数なども使用できます。これをシステム化するメリットは、評価のステータスを可視化できる点です。例えば目標設定済は誰かとか、目標の承認まで終わっているのは何人いるか、といったものが一目で分かり、職員に一括でリマインドメールを送り、情報を収集することもできます。また、エクセルだとファイルを1つずつ開いて評価を入力するというのが現場での運用だと思いますが、カオナビだと職員を横並びで見ながら入力できます。

これにより評価者の手間が減って業務効率化につながりますし、一人ひとりの顔写真を見ながら、「AさんはBさんよりも頑張っていたから高めの評価にしよう」とか、「Cさんは他の職員と比べたら…」というように相対評価を入れて、メリハリをつけられます。その結果、職員から見ても納得感がある評価につながる、という仕組みです。

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また、色々なワークフローをカオナビに乗せることができるので、最近増えてきている“360度評価”も容易になります。評価においては日頃のコミュニケーションが大事なので、それをワークフローで組んで毎月1回など定期的な面談をするようにして、面談されていない方は人事からリマインドをするといった面でも役立ち、昇格選考フローとか、自己申告のキャリアシートなどもシステムに入れられます。

人事評価以外の機能としては、ピボットテーブルのような機能も備えており、顔写真を並べて横軸・縦軸を自由に設定できます。例えば横軸を所属にして、縦軸を評価にすると、どの部署に優秀な職員が多いのかということや、“評価の甘辛”も視覚化できるので、人事全体のフォローアップにも有効です。縦軸を役職に設定して役職ごとの分布と「異動希望あり」の方を可視化し、配置検討などでも使えます。

ちなみに、個人の顔写真をクリックすると、カオナビのベースとなる人材情報(プロファイルブック)が開き、人事給与システムで管理しているような職員番号や役職、異動歴、過去の評価履歴、資格、研修歴などのデータが見られます。ここには趣味などの情報も入れられるので、それを話題にしてコミュニケーションを活性化することにも役立ちます。

自治体が自らDBを構築しDXの効果も高める!

カオナビのデータベースはドラッグアンドドロップで構築可能で、ベンダーに頼まずとも自治体内で職員による改修ができます。こういった面でDX効果を高めるという自治体も増えています。また、魚沼市では業務効率化と同時に年間2,850枚のペーパーレス化を実現。他の自治体でも、会計年度職員のデータを入れて管理したり、定年延長の方々の人事管理などでも使っていただいたりと活用方法は様々で、顔写真をきっかけにコミュニケーションが活性化したという事例もあります。

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最後に、カオナビでは、機能面だけでなくコミュニティの面も重視しており、導入自治体に関しては、ユーザー同士で課題をシェアできる場を提供しています。もちろん専任サポートもつきますが、自治体同士での情報交換も重要なので、横のつながりも活かしつつ運用されると良いのではと思います。

トークセッション/質疑応答

ここからは司会者をまじえた、登壇者によるトークセッション。自治体を内側・外側から見てきた両氏が、それぞれの視点で人事評価制度や人事DXについて語りつつ、意見を交換した。

―お2人ともありがとうございました。まず、それぞれの感想をお聞かせください。

﨑田:カオナビは本当に分かりやすい。顔が見えつつ、自分の組織の戦力が一元化できて可視化されるというのは大事だと思います。私も市長時代に人事をするとき、全職員のことを知るのは相当大変でした。エクセルの表などで見ていくことの限界を感じていた。それをシステムで分かりやすくするというのは大切だと感じました。

野田:﨑田さんのお話で印象に残っているのは、人事評価は給与を決めたりするものでありつつ、その仕組みを使って互いを知ることで職場のコミュニケーションが活性化することが重要だ、という点。私たちも、そうした副次的な効果を重視しているので、とても共感しました。

―﨑田さんが市長をされていた頃の人事に関するエピソードを教えてください。

﨑田:私が市長になったのは10年ほど前で、DXという感覚もない頃です。当時の私は、職員が書く自己申告書を全員分読んでいました。日南市の職員は約700人で、ギリギリ読めなくはない。私なりに全体像を把握し、市長在職中に人事面でいろいろやろうとしたのですが、この状況把握に時間と労力がかかるというのが1番のネックでした。首長は常に忙しい。もっと大きい自治体になるとさらに大変です。そういった意味では、情報をデータ化・可視化することから人事DXは始まるのかなと思います。

―野田さんへ参加者から質問です。「評価とモチベーションはどのくらい連動しますか?」

野田:評価とモチベーションは、かなり連動すると思います。よくあるケースとしては、若手職員がこの期はすごく頑張ったので評価がいいと思っていたら、予想よりも低い評価がきて、ショックを受けて結局辞めてしまった、というようなものです。自分のまちへの貢献という感覚も、評価次第で変わると思います。

デジタルを通して見ることで人による“ブレ”を補正する。

―DXに関する質問がきています。「公正な評価はどうすればいいのでしょう」という内容です。人間なので主観がまじってしまうのではということですが、いかがでしょう。

野田:これまでの紙・エクセル管理とか、上長や人事担当者の頭の中に情報があるといった属人化した状態を、システム化することで、人となりの部分が過去から現在まで点ではなく線でつながります。それをしかるべき方に向けてオープン化することもできるので、評価者や人事担当者ができるだけ客観的な情報をもとにして評価・育成・配置に役立てられる。こうした部分はシステム化することで寄与できる部分だと思いますし、自治体からいただく声からもそのように感じます。

﨑田:DX効果の1つですよね。それに加えて、人がもっと労力を使うべきところに注力できるようになる。そうした意味でも、業務効率化になるものをもっと取り入れてほしいと思います。紙やエクセルの管理で時間を費やすのではなく、便利なツールを入れて職員のパフォーマンスを上げることが大切です。カオナビの仕組みも非常にいいと思うので、こうしたものを活かしてほしい。

―次の質問です。「仕事で評価されるべきだという話ですが、窓口業務が多いところと企画業務が多いところでは差がつきやすいと思います」。

﨑田:おっしゃる通り。だからこそ私は、部局の中で目標を設定して、職場全員でパフォーマンスを上げるためのツールとして人事評価制度を使うといいのでは、と提案しています。今のところ完璧な解決策はないと思うので、個人への評価以外のメリットにも目を向けるべきかと思います。

古い考え方を捨ててパフォーマンスありきの評価を!

―「人事評価が手間で、やらされ感が出ている職員が見られます」という質問についてはいかがでしょうか。

﨑田:これは、研修・啓発をやっていくしかない。当自治体の人事評価制度はここに力点をおいてやる、ということを分かりやすく伝えることでしか始まらないと思います。

野田:評価を入れることで得られる効果を、職員に伝わる言葉できちんと語るということが重要でしょうね。「評価制度を入れることでその評価情報が引き継がれ、配置の検討にも使われるので情報をきちんと入れてください」など、何のために入れているのかということを人事・上長から職員に対して発信していくことが大切だと思います。

―今後の人事評価のあり方として、何を重要視すればいいでしょうか。

﨑田:働き方の価値観を変えないといけません。残業時間が長い人が頑張っているというような考え方ではなく、「短い時間でパフォーマンスを上げる人が素晴らしい」と。今や働き方を重視しないと優秀な人材が入ってこない時代なので、在宅ワークや時短勤務も含めて、パフォーマンスありきで評価されるようになったら本物だと思います。一概には言えませんが、まずは仕事に対する価値観を変える必要があるでしょう。


 

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