地方公務員の他薦にもとづき、現役の地方公務員が審査を行い、「本当にすごい!」と思う地方公務員を表彰する取り組みである「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」。株式会社ホルグが毎年開催し、2022年で第6回目の開催となる。
そこで、ジチタイワークスも協賛メディアとして、アワードを盛り上げるべくコラボレーション。
今回は当アワードの主催者である株式会社ホルグの代表取締役社長・加藤 年紀さんにお話を伺う。「“すごい”公務員の存在が世の中に広まると、もっと公務員を応援する機運が高まっていくはず」と加藤さん。“本当にすごい!”とは何か?アワード開催の想いとあわせて徹底解説していく。
加藤 年紀(かとう としき)さん
株式会社ホルグ 代表取締役社長
プロフィール
2007年、株式会社ネクスト(現・株式会社LIFULL)入社。2012年、同社インドネシア子会社「PT.LIFULL MEDIA INDONESIA」の最高執行責任者(COO)/取締役として出向。子会社の立ち上げのため、ジャカルタに4年半駐在。
2016年に同社退社後、同年に株式会社ホルグを設立。地方自治体を応援するメディア「Heroes of Local Government」を立ち上げ、各地で奮闘する公務員のインタビュー記事を掲載。2017年から「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」を毎年開催。有料コミュニティ「地方公務員オンラインサロン」、YouTube「公務員応援ちゃんねる」を運営。
一般社団法人日本GR協会理事、三芳町魅力あるまちづくり戦略会議政策アドバイザー(平成30年)、富山県成長戦略会議 県庁オープン化戦略WG委員(令和4年)、生駒市人事制度担当官(令和2~4年)。境町人事戦略アドバイザー(令和3~4年)なども務める。
地味派手問わず活躍する公務員を社会へ発信
―― まず、地方公務員アワードを始めたきっかけを教えてください。
加藤さん:当イベントを初めて開催したのは2017年でした。かつては、公務員個人が世に出ることの難しい時代もありました。でも、個人の顔の見えない行政組織は格好の攻撃の的になります。そういう構造の中で、公務員が成果をあげやすい環境が根本的につくられていない状況だと僕は認知していました。
また、当時は「地方創生」という単語がすごくはやっていて、その文脈で商工観光系の取り組みがメディアに取り上げられることも多かったんですが、公務員からすれば仕事は他にもあります。セーフティーネットやインフラなど、派手ではない仕事にも光があたってほしいと思ったことが開催のきっかけでした。
―― 加藤さんは前職時代に公務員の可能性を見出し、株式会社ホルグを設立されたと伺いました。
加藤さん:前提として、2012年から、新卒入社した株式会社LIFULLのインドネシア子会社社長としてインドネシアに駐在していました。当時のインドネシアは、ビザ取得に関して賄賂を請求されたり、都会で洪水や停電が発生したり、役所の仕事がめちゃくちゃずさん。その経験から、日本の公務員はすごくちゃんと仕事をしていることに気づき、興味を持つようになりました。でも、公務員は金太郎あめのようなイメージで、個人が世に出ていないなと感じてもいましたね。
―― 2016年には『Heroes of Local Government』を始められていますが、どんなきっかけがあったのですか?
加藤さん:同時期にスーパー公務員のような人が登場し始めたことがきっかけでした。例えば、『ローマ法王に米を食べさせた男』の羽咋市役所・高野誠鮮(たかの じょうせん)さん、『県庁そろそろクビですか?』の佐賀県庁の円城寺雄介(えんじょうじ ゆうすけ)さんですね。
こういう方がもっと知られれば、ネガティブな意味での公務員たたきが減り、革新的な成果を出す公務員のノウハウが広がるんじゃないかと思いました。その延長線上に2017年からはじめた「地方公務員アワード」があり、公務員のノウハウや人となりを社会の人に知ってもらうことが目的です。
―― 当時と今とで、加藤さんの中で変化したことはありますか?
加藤さん:最初のころは「そんなにたくさん推薦が来るのかな?」と思っていたのですが、毎年すごい方が推薦されてきます。すごい受賞者を毎年知ることになるので、「地方公務員にはすごい方が無限にいる」と感じるようになりましたね。
―― なぜ“すごい人”が必要だと考えているのでしょうか?
加藤さん:人は他者の顔や個性を知ってこそ感情が動かされると感じるからです。例えば、藤井聡太さんが世に出たとき、将棋教室が満員になったという話がありました。でも、誰かが将棋の面白さや素晴らしさを熱弁したとしても、その結果は多分生まれなかった。人を動かすのには、個としての人の魅力が伝わることが重要だと感じています。
人は、実際に顔の見えない他者に対して残酷になることができます。世の中にはネガティブな公務員像が存在しているので、価値やありがたみを感じることは難しい状態です。だからこそ、地味派手問わず様々な領域で、仕事の成果を積み重ねていく個としての公務員に光を当てることが社会的に必要だと思っています。
市民のために成果をあげる人が“すごい”公務員
―― これまでの受賞者や被推薦者に関して、”すごい”の共通項はありますか?
加藤さん:自分なりの世界観や使命感を持って市民のために突き進んでいることです。また、前例主義的な組織の中で新しいことをやれているということは、上司の信頼を得る力が強いと言えるのではないでしょうか。役所内では、派手に活動しているように見える人が疎まれがちですが、裏で地道に信頼関係を構築しているからこそ大きな仕事を任されているのだと思います。
―― アワードを始めたころと最近を比較して、受賞者や被推薦者の傾向に違いはありますか?
加藤さん:地方公務員アワードでは、地方公務員が地方公務員を推薦し、地方公務員が審査をします。同じ公務員から見て”すごい”と思う人が世の中に知られたらいいと思っているので、本質的に傾向は変わっていないと考えています。
―― 加藤さんが考える「本当に”すごい”地方公務員」とは、どんな人でしょうか?
加藤さん:組織のためでなく、市民のためになるように仕事に向き合い、成果をあげている方ですね。でも、それは直接的な成果だけではありません。例えば、パワハラに悩む職場環境を改善したり、育児休暇後の職員や休職者が安心して働ける環境を整備したりした場合なども、成果をあげやすい職場環境を構築した点からすごいことだと思います。
―― これまで、日の目を浴びるような取り組みや人ではないけれど受賞・推薦された方はいますか?
加藤さん:地道な取り組みでは、児童虐待や生活困窮者支援、上下水道や公会計などにおいても受賞者が存在しています。人については「すでに有名な人が選ばれているだけだ」と言われることもありますが、知名度の高くない方が受賞するケースはたくさんあって、公務員なら誰もが知っているような方が受賞するケースの方がまれなんです。
また、役所の世界では有名な方であっても、社会で有名な公務員というのはほとんど存在していません。ホルグが目指しているのは、活躍する公務員が社会に広く知られていくことです。公務員の顔が見え、イメージが向上すれば、市民は公務員とより良好な関係を構築するようになる。それによって、公務員がより成果をあげやすい状態になると考えています。
応募によって働く環境の機運がアップ
―― 最後に、今年の地方公務員アワードに対する想いを教えてください。
加藤さん:繰り返しになりますが、僕は公務員がちゃんと認知されることが社会的にプラスになると思っているので、企業や社会を巻き込んでもっと公務員を見てもらって、公務員のために仕事の成果が出やすい環境をつくりたいと考えています。
今年も新たに協賛企業が増えたのですが、公務員を応援し、良い部分をしっかり見てくれる企業が増えてきている点で、社会は変わってきていると思います。今はコロナ禍で地方公務員の存在感も注目度も増してきています。
そういうときに”すごい”人が世に出ていくと、公務員の環境を良くする機運が高まっていくはずなので、皆さんのまわりにいる”すごい”方をたくさん応募してもらえたらうれしいです。
―― 今年は新たに「自治体業務マニュアルアワード」も同時開催されると伺いました。
加藤さん:多くの自治体では3月下旬に異動を通知されるので、仕事をちゃんと引き継ぐことが難しいんですよね。自治体は全国に点在していますが、同じ法にのっとって似たような業務を遂行しています。優れたマニュアルが整備されていることが伝われば、その組織の担当者だけでなく、全国の自治体の成果も高められると思います。
初回である今年は、従事者が多く影響力も強い「税務」部門のマニュアルが対象です。ご応募いただいたマニュアルについて、官民の有識者でアドバイス・表彰できればと思っています。「地方公務員アワード」「自治体業務マニュアルアワード」ともに応募締め切りは7月7日です。皆さまからの応募をお待ちしています。
「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2022」
「自治体業務マニュアルアワード2022」について
【開催概要】
1)スケジュール
・推薦・応募受付期間:2022年5月31日(火)~7月7日(木)
・結果発表(WEB上)2022年8月中旬
・表彰式:2022年10月7日(金) ※スケジュールは変更する可能性がございます
2)応募・推薦方法
▼詳細はこちらから
『地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2022』開催のお知らせ
3)結果発表等
・2022年8月中旬に、『Heroes of Local Government』 にて掲載
・2022年10月7日(金)夕方に表彰式開催予定(変更可能性有)