ジチタイワークス

【指出 一正さん】SDGsは「地域に暮らす私たちの目標」だと小さく捉えて。

※下記はジチタイCLASS(2022年5月発行)から抜粋しており、記事は取材時のものです。
※誌面掲載のアンケートは、ジチタイワークス会員を対象に令和4年1月14日~2月7日に実施したものです

さしで かずまさ● 1969年生まれ。2011年、「ソトコト」編集長に就任。島根県「しまコトアカデミー」、和歌山県田辺市「たなコトアカデミー」など、様々なローカルプロジェクトにて監修と講師を務める。また、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部「わくわく地方生活実現会議」委員、環境省「SDGs人材育成研修事業検討委員会」委員など、官公庁・自治体のアドバイザー・委員・監修を数多く担当。

未来をつくるSDGsマガジン「ソトコト」

2019年6月号「SDGs入門」を皮切りに、2020年6月号「続・SDGs入門」、2021年9月号「SDGs入門~地球環境編~」を発行。基本的な考え方や実例が豊富に紹介されており、全体像を改めて把握したい人にも、実務への結びつけ方を知りたい人にもオススメだ。

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自治体職員の声
Q.今ひとつ理解しづらい「SDGs」。どう考えて何をすればいい?

先生の答え
A.「地域に暮らす私たちの目標」だと小さく捉えて。

「みんなが幸せに生きる」ための決まり事。

―― 本誌アンケート(こちらを参照)によると「SDGsは何をすればいいかよく分からない」「本質から学びたい」「整理した情報に触れたい」などの声がありました。

確かに、SDGsを自分の仕事や生活にどう引き寄せればいいか悩む方は多いですね。自分事にするためのヒントは、「小さく捉えること」。SDGsは「世界のみんなの目標」と壮大に捉えられがちですが、丁寧に翻訳すれば「世界のそれぞれの地域に暮らすみんなの目標」。一人ひとりの行動が、社会や世界に影響を与えるのです。では、具体的に何ができるか。国連が出した「持続可能な社会のために ナマケモノにもできるアクション・ガイド」では、ソファに寝たままできることから職場でできることまで、4つのレベルで紹介されています。非常に分かりやすく、腑に落ちるので、ぜひ参考にしてください。

 

―― 日本では、環境の側面からSDGsが語られることが多いように感じますが、いかがでしょうか?

SDGsは、人が人として幸せに生きるための決まり事であり、エコロジーとは明確に違います。サブタイトルの「誰一人取り残さない」という言葉が示すように、目の前にいる人や自分自身が幸せであるためにどうしたらいいか、という話なのです。例えば、ペットボトルが二次マイクロプラスチックになって「ウミガメが泣いているからペットボトルをなくそう」というのがエコの発想。しかしSDGsは、ペットボトルをつくる会社の人やその家族までもが幸せになるにはどうしたらいいか?を考えることなのです。

実は、SDGsの1から17のゴールには矛盾する項目もあります。例えば「8:働きがいも経済成長も」と「15:陸の豊かさも守ろう」。経済成長を追求するためにブナ林に道路をつくれば、緑の豊かさは守れません。企業や自治体では、「うちでは1と7と10をやっている」などとスタンプラリー的に取り組みがちですが、実際は、全項目を広い視野で見て、取り組まなければなりません。その上で矛盾点にも目を向け、折り合いをつけながら前に進めることが大切なのです。

 

SDGsを糧にウェルビーイングを目指す。

――「ソトコト」では、3回「SDGs入門」を特集にしていますね。企画意図を教えてください。

僕は、作家・井上ひさしさんの「むずかしいことをやさしく(中略)ゆかいなことはあくまでゆかいに」という言葉が大好きで、社会の課題を分かりやすく伝え、身近に感じてもらうことを編集方針にしています。入門号の目的は、SDGsを地域や暮らしに落とし込んだ実例を紹介し、その目指す世界観を伝えること。社会情勢や時代とともに伝えるべきことも変化するので、それに即して本をつくったら3冊になりました。

そもそも2015年に国連で採択され、2030年をゴールに設定しているSDGsは、あくまでも通過点。その先に目指したいのはウェルビーイング、つまり「みんなが楽しく幸せでご機嫌な状態」です。そこで自治体に求められるのは、地域に暮らす人たちの幸せ度を上げることだと思います。

 

公務員は「人と人が出会う真ん中」に。

―― その中で、公務員に期待する役割とは?

まずは、公務員である前に1人の人間として「自分の住む地域がどうなったらいいか」を考えること。住民代表として個人のビジョンをもつことが大事ですね。もう1つは、地域を盛り上げるために人と人をつなげること。「この人とあの人が出会えば、まちが面白くなりそう」など、「ハブとしての役割」を果たせるのが公務員。長年、多くの地域とつながりをもってきましたが、地域で様々な物語が生まれるとき、人と人が出会う真ん中には、公務員がいることが多いと感じています。ぜひ皆さんの才能を開花させてください。

 

―― スキルアップを目指す公務員に「指出流、学び方のコツ」を教えてください。

目の前に置かれたものを吸収しつつ、休みの日に思いっきり遊ぶことですね。最近は、「おしゃれで、好きなことがあり、まちの情報を面白がって発信する公務員」が増えてきましたよね。僕自身も、釣りという趣味を芯に、様々な遊びから得たことを仕事に活かしてきました。好きなことを芯に仕事に向き合えば、SDGsでも地方創生でも、まちづくりでも、ヒントや答えを見つけやすくなりますよ。

 

 

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