平成30(2018)年7月の西日本豪雨で甚大な水害に見舞われた岡山県倉敷市真備町。福祉支援施設「まきび荘」では9月中旬に「City Watchサイネージ」が設置されました。防災情報の発信には、NTT東日本の「ギガらくサイネージ」の機能を活用。
看護師として入居者をサポートしたNPO法人九州キリスト災害支援センターの山中弓子さん(以下、山中)と倉敷市役所・角南誠(以下、角南)さんに現地での利用状況を聞きました。
※下記はジチタイワークスICT×災害対策特集号(2019年3月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供] NTT東日本
避難所での導入を経て情報の大切さを再認識
-利用状況を詳しく教えてください。
山中:高齢者の憩いの場である老人福祉センター「まきび荘」は豪雨に伴って平成30(2018)年7月9日から休館し、8月18日から福祉的避難所として倉敷市によって運営が開始されました。私は災害支援NPOのスタッフとして市職員と連携を図り、24時間常駐し避難所の環境改善や食環境改善、健康管理など避難所運営支援と災害看護支援をしていました。最大44人が入居され、0歳から80歳代までの幅広い年齢層の避難所利用者がいらっしゃいましたが、12月にはすべての避難者が退所されています。
角南:「まきび荘」は市が運営する避難所のなかで唯一看護師が常駐していたこともあり、優先的に福祉利用に充てられていました。私が施設に出入りするようになったのは9月中旬ごろからで、まだ残暑が厳しかったと記憶しています。
-避難所の状況や施設利用者の様子はいかがでしたか。
山中:日中は気温が上がり、入居者や避難所の利用者は精神的にも身体的にもかなり疲れ切っている。感染症の予防に加え、熱中症には特に注意が必要でした。
角南:市の職員として現場に入りましたが、もともと寝泊まりをする施設ではないので、居住スペースの整備や入所者の方の生活のサポートなどで、あっという間に一日が終わりました。人手が足りず、人材にも限りがあります。緊急な対応で精一杯の状態だったと思います。
山中:災害発生からのフェーズによって、必要な支援は変わります。まずはゴミの処理や家の片付けなど、それから被災支援の手続きやボランティアの手配と、段階的に生活を整えていきます。被災届など行政に関わることは避難所のチラシやホームページに掲載されていますが、すべてをチェックするのはなかなか難しい。日中は自宅や職場の片付けに行き、日が暮れるころにへとへとになって帰ってくる。疲労困憊のなかで膨大な文字情報から自力で必要なものを見つけるのはかなり大変ですが、サイネージがあれば受動的に情報を得られるので、そのストレスは軽減されますね。
角南:情報を発信する行政側としても、必要な人に適切な情報が届いているかという懸念がありました。その点では、伝えるべき正しい情報を発信できる「City Watch」は有効なツールだと感じています。
山中:大型画面なので目立ちますよね。避難所の入り口に置いていたので、立ち止まって観ている方もたくさんいました。
さらなる活用に向けて期待すること
-より充実させたい情報は?
山中:育児世代に向けた情報は特にニーズが高く、避難所での生活は数カ月に及ぶ場合もあるので、保健衛生面では季節ごとの情報発信が必要だと感じています。家屋の消毒の仕方などは支援に入るボランティアや個人によって認識に差があるため、知識を平準化するためにもこうしたツールが活用できると便利です。音声出力やタッチパネル化ができれば、さらに利用は広がりそうですよね。
角南:必要な情報をいかにスピーディにまとめ、市民に届けるかが今後も行政の課題だとあらためて認識しました。現場の人材確保と育成も欠かせません。信頼できる情報を、責任を持って発信する。その土壌が確立できたのは今回の大きな収穫でした。今となっては、こんなに便利なツールが今までなかったのが不思議なくらいです。
山中:炊き出しなど避難所ごとの情報と、行政の共通情報の両方がチェックできれば便利ですね。避難所だけに情報が集中しないように配慮しながら、巡回バスやスーパー、郵便局、ボランティアセンター、「まびくら」のような交流施設など市民の目に触れやすい場所にサイネージがあれば、よりスムーズに多くの人に情報を共有できるのではないでしょうか。
まきび荘外観
◎文中記載の会社名および製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
◎文中に記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などはすべて2019年2月時点(インタビュー時点)のものです。
◎本事例はあくまでも一例であり、すべてのお客様について同様の効果があることを保証するものではありません。
導入事例
最後に
「City Watchサイネージ」をご紹介しました。いかがでしたか。
避難所生活は突如としてやってきますし、慣れないことばかりで心身ともに健康でいられなくなります。そんな時こそ、正しい情報を分かりやすく迅速に伝えることが大切ですね。
役立つツールの存在を知ることは、いつか来るかもしれない不測の事態に向けた備えとなるでしょう。