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【公務員のホメ道 連載5】難しく考えすぎず、「承認」でホメ道を実践する。

ホメること、感謝を伝えることには、職場の雰囲気を変え、人を育て、やる気を引き出す力があります。本連載は、自治体でのホメ度や公務員のホメ力を育てるきっかけづくりをお手伝いする企画です。ホメるのが苦手…と感じる背景には、“評価しなければならない”という思い込みがあるのかもしれません。そこで連載後半では、“ホメるとは何か”を構造として捉えてみることに。現役公務員であり「自分軸のキャリア開発コーチ」でもある栗林さんをアドバイザーに迎え、コーチングの基本スキルでもあるアクノリッジメント(承認)を手がかりに考えます。
※この記事は次の調査結果をもとに作成しています。「ジチタイワークスWEBメルマガによる公務員へのアンケート調査」
※実施期間と回答数 2025年7月28日~8月5日 回答数 N=102
※記事の掲載情報は公開日時点のものです。
門下生:前回、コーチングにおける「アクノリッジメント=承認」には、存在・行為・結果の3つがあると教えていただきました。承認を“評価”ではなく“相手を認めること”と広く捉え直すと、どんなプラスの効果があるのでしょうか。
栗林:承認されることは、自己肯定感や自己効力感の向上、モチベーションアップにつながります。
これまでのコーチング経験でいうと、その人がそれまで踏み出せなかった行動が取れるようになったり、挑戦してみようという気持ちが芽生えやすくなると感じています。
門下生:逆に、承認がない状態が続くとどうなるのでしょう?
栗林:モチベーションの低下や、極端な場合には休職や離職につながる場合も……。そうならないようマインドを整え、自律的な行動を促すのが「承認」です。そう考えると、非常に重要なスキルといえるのではないでしょうか。
門下生:ちなみに、自治体において「承認」はどの程度行われていると感じますか?
栗林:公務員が働く環境については、住民目線で考えると“やって当たり前”と思われる仕事が中心なので、結果承認すらない状態に近いかもしれませんね……。
職場内の人間関係でいえば、結果承認や行為承認はあっても、存在承認は少ない気がします。
もちろん挨拶などは行われていると思いますが、どこか照れのようなものがあって“感謝を言葉にしない人や名前を呼ばない人”もいるのではないかと思います。
また最近は、様々なハラスメントを心配し、思いを気軽に言葉にできなくなった人もいるかもしれません。そのあたりは、非常に難しいところですね。

門下生:承認をするためには、まず相手の頑張りや変化に“気づく”必要がありますね。気づき上手、認め上手な人の特徴、共通点とは?
栗林:“相手をよく観察していること”と“相手が何を大事にしているか理解していること”だと思います。
門下生:なるほど。相手が大事にしていることを見つけるには、どうしたらいいのでしょうか?
栗林:仕事における、その人の“こだわりポイント”に注目してみるのはどうでしょうか。
例えば、その人が時間をかけているのはどこか?細かくつくり込んでいるのはどこか?……などです。業務全体を俯瞰して“その人らしさ”が出ている部分を探すと、見つけやすくなるかもしれません。
また、その人との会話の中で、相手の“熱量が上がるところ”や“繰り返し語られるところ”は、その人が大事にしているポイントである可能性が高い。そこを捉えて、「ここは時間をかけて丁寧につくったんだね」といった事実を伝えるだけでも、相手は“頑張りを見てくれている”と受け取るようになります。
門下生:単に業務の達成度を見るだけでなく、プロセスを見る“観察力”と、人柄や個性への“理解力”が大切なんですね。
門下生:ハラスメントに敏感にならずとも……そもそも普段からコミュニケーションの淡泊な上司が、突然、観察したり、承認の声がけを始めたりしたら、怪しまれるんじゃないかと気になります(笑)。
栗林:それはあるかもしれません(笑)。いきなり「君の存在に感謝している!」なんて伝えたら、引かれてしまうかもしれないですね。
まず、自分がホメられる側になったことを想像してみてください。同じ言葉をかけられる場合でも、“声をかけてくる人が誰なのか”によって自分の受け止め方が違うことってありませんか。
承認の効果は、相手のタイプや、その人との信頼関係に大きく左右されます。そもそも信頼が築けていないのに、急に深い承認をしようとすると、かえって不信感をもたれる場合もあるんです。
門下生:信頼を築くためのステップが大事なんですね。
栗林:はい。前回、コーチングには「傾聴」「質問」「承認」「フィードバック」「提案」があるとお伝えしましたが、「傾聴」も承認と同じく、基礎的なコミュニケーションスキル。まずは“傾聴=話をよく聞くこと”で信頼関係の土台ができていきます。
そして、それを粘り強く積み重ねることで、相手は“この人は自分に関心を持ってくれている”と感じ、行為承認などの声がけも素直に受け止めてくれるようになります。これまで、淡泊なコミュニケーションをとってきた人は、関係性の土台づくりから始めることをおすすめします。
門下生:栗林さんのようにコーチングの資格がなくても、こういったスキルを活用することは可能でしょうか?
栗林:一朝一夕には難しいですが、必ずできると思います。主に、下記のようなことから取り組むといいと思います。
●傾聴に集中する
話を聴くとき、作業の手を止めて体を相手の方に向け、うなずきながら聴く。顔を見ながら聴くことで、相手に安心感が伝わり、信頼関係につながります。

●「沈黙」を待つ
相手が考えている沈黙の時間(内省の時間)を妨げないこと。これにより話しやすくなり、相手も自分の考えを深めることができます。

●名前を呼んで声をかける
「○○さん」と相手の名前を呼ぶだけでも、相手の存在を認める立派な存在承認です。

●「ありがとう」を伝える
「〇〇してくれて助かったよ」といったシンプルな感謝の言葉は、行為承認として取り入れやすいでしょう。

門下生:承認することが、その人だけでなく組織の成長にもつながる。それがよく分かるエピソードですね。
では最後に、ホメるのが苦手!難しい!と感じている皆さんへメッセージをお願いします。
栗林:私自身も、かつてはホメることが苦手でした。それは“行為承認や結果承認をしなければならない”と考えていたからだと思います。
ですが、存在承認という考え方を知ってから、相手の存在を認めるだけでいいのだと思えるようになり、気持ちがずいぶん楽になりました。
まずは小さなことからで構いません。相手の名前を呼んで挨拶をするだけでも、それは立派な存在承認。そう考えると、少しハードルが下がりませんか。
また、コミュニケーションを取りたい相手のことをよく観察し、その人が何を大事にしているのかに目を向けてみてください。後輩であれば、一定期間で成長した点を、事実として具体的に伝えることもおすすめです。
きっと“ちゃんと見てもらえている”“認められている”と感じてもらえるはずです!
今回のまとめとチェック
「ホメること=評価」だと思っていませんか?
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