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公開日:2025-12-02

「学びたいけど時間がない」その気持ち、よくわかります

キャリア・働き方
読了まで:9分
「学びたいけど時間がない」その気持ち、よくわかります

公務員応援企画 INTERVIEW

転機を経験したゲストの言葉を通じて、“自分の暮らし”や“これからの人生”に目を向けるきっかけを届けます。日々の仕事に向き合う中で、自分自身の“これから”を考える時間をもつ。そこで得た気づきが、新たな学びやチャレンジへの一歩となれば幸いです。


目次

これって、自治体の仕事ともすごく似ていると思うんです
「誰一人取り残さない社会」をつくりたい
“暮らし”って一体何なのか。現場にいるだけでは分からなかった
学びは自分を肯定する手段

武田 真一(たけた しんいち) 氏
フリーアナウンサー

プロフィール

1967年熊本生まれ。1990年、NHKに入局。元・NHKエグゼクティブアナウンサー。NHK時代は、「ニュース7」「クローズアップ現代+」の総合司会を担当。2023年にフリーに転身。情報番組「DayDay.」(日本テレビ系)にMCとして出演中。

これって、自治体の仕事ともすごく似ていると思うんです

──NHKという公共性のあるお仕事で、公務員と重なる部分はありますか?

僕自身、NHKのアナウンサーとして全国の放送局を回ってきましたが、その経験の中で常に意識していたのが、“公共性”と“公平性”でした。特に報道では、「真水のように」色をつけずに情報を届ける──これは視聴者の命や財産、民主主義の根幹を支える“情報インフラ”を守ることだという思いで臨んでいました。

でも、NHKの仕事はそれだけじゃないんです。ニュースや災害情報といった“命に関わる”情報だけでなく、バラエティやドラマ、音楽番組など“心の潤い”を届ける番組もたくさんある。娯楽や文化もまた、人の生活を豊かにするために不可欠な“公共サービス”なんですよね。これって、自治体の仕事ともすごく似ていると思うんです。道路や水道といったインフラを整えると同時に、“生活の質”を支える取り組みも実施する。「公共のために、今何が必要か?」を問い続けて番組をつくってきた時間は、まさに公務員の皆さんと重なる営みです。

「誰一人取り残さない社会」をつくりたい

──人生の転機となったような出来事や挑戦はありますか?

最も大きな転機になったのは“震災報道”です。1995年の阪神・淡路大震災が、最初の原点でした。まだNHK松山局にいた頃で、地震発生直後に淡路島へ取材に向かいました。まちが壊滅し、誰もが言葉を失っている状況。特に小さな子どもたちの棺が並ぶ合同慰霊祭に立ち会ったときは、本当に胸が張り裂けそうでした。

あの経験以降、僕にとって“災害報道”はただのニュースではなくなりました。命を守る情報を、どうすれば確実に届けられるのか。伝え方に、発する言葉に、責任をもたなければならない──そう心に刻んで仕事を続けてきました。

その思いがさらに強くなったのが、2011年の東日本大震災です。発生直後にスタジオに入り、津波が仙台平野を飲み込んでいく映像を見たとき、僕は完全に言葉を失いました。訓練も知識も通用しない圧倒的な現実の前で、何を伝えるべきか、自分の無力さを痛感しました。でも、その絶望の中で気づいたんです。「一人でも犠牲者を減らす」ではなく、「一人も犠牲にしない」ことを目指さなくてはならない。その思いが強くなりました。以来、“減災”という言葉の意味を根本から見直すようになりました。そしてこれは、公務員の皆さんにも通じる想いではないでしょうか。「誰一人取り残さない社会」をつくる。そのために何ができるかを問い続ける。あの震災報道の現場で感じたことは、今もずっと僕の中で生き続けています。

“暮らし”って一体何なのか。現場にいるだけでは分からなかった

──“これは人生を豊かにしてくれた”と感じる学びがあれば教えてください。

僕にとって“学び”は、教室の中や書籍の中だけで得られるものではありませんでした。むしろ、家族や地域の中で、そして日々の暮らしを通して得たものが、人生を何倍にも豊かにしてくれたと思います。

父親として、夫として過ごす日々の中で、サッカーチームの応援団をやったり、「おやじの会」に入って田植えや日食鑑賞会を企画したり…。そんな経験が人とのつながりを生み、地域や学校、家庭の役割を通して“リアルな暮らし”を理解する学びになりました。

報道ではよく“暮らしを守る”という言葉を使いますが、その“暮らし”って一体何なのか。現場にいるだけではわからなかったことが、家庭や地域の中にたくさんあったんです。

こうした“暮らし”に身を置くことで、子育て支援の制度や教育の課題、地域行事の意味などが“自分ごと”として見えてきました。それまではニュースの中の出来事だったことが、“今ここで起きている現実”として体感できるようになって、報道に向き合う解像度が上がるのを感じました。

何が人生を豊かにするかは、正直わからない。でも「ムダだと思っていたことが、思いがけず自分を助けてくれる」。そんな瞬間が人生には何度もありました。学びは暮らしの中にこそあると感じています。

学びは自分を肯定する手段

──学びに踏み出そうとしている公務員の方々に、メッセージをお願いします。

僕はアナウンサーとして、長く報道の現場に身を置いてきました。けれど今は、情報番組やバラエティ番組に出演していて、自分でも驚くくらい違う分野に挑戦しています。最初はもちろん戸惑いました。報道では“自分の考えを出さない”のが鉄則でしたが、今は“自分の言葉”で語ることが求められる。でも、その違いにもがきながらも、「今、やっていることそのものが、自分のキャリアなんだ」と思えるようになりました。

キャリアって、過去に積み上げてきたものだけではなくて、“今、悩んでいること”も、未来につながるキャリアになると思うんです。「学びたいけど時間がない」…その気持ち、よくわかります。でも、学びは自分を肯定する手段でもあります。一歩踏み出せば、新しい出会いや発見が待っている。僕はそう信じています。

 

▶武田さんには、12/13(土)開催のセミナーにご登壇いただきます。 詳細はこちら


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