自治体の業務では、ほかの自治体や外郭団体などと連絡を取ることも多い。宮城県の市町村課では、そうした一連の作業をクラウドの活用で効率化している。取り組みの中核を担うコミュニケーションツールについて、開発の経緯を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.17(2021年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]サイボウズ株式会社
煩雑な業務をスマート化し職員の疲弊を防ぐ取り組み。
宮城県利府町職員の松木さんは、令和2年度から県に派遣され、市町村課の任についた。そこで直面したのが膨大な事務作業だった。「国から受けた調査依頼を市町村などに展開し、取りまとめるのですが、その業務量に驚きました」。市町村課がやりとりをする団体は51もある。しかも、調査依頼は、通知文書、調査概要、入力用、取りまとめ用などいくつものファイルに分割されて送られてくることが多い。これらを整理・統合して51の団体にメールを送るのだが、送付先によってサーバーの容量制限が異なる上、圧縮したデータを受信できない団体もあるという。そのたびに確認や再送信の作業が発生する。また、51通送付したら、51通返事がくる。どこから返事が来ているか、どのメールに返信が来ているかを把握するだけでも膨大な作業量だ。
同課の榊原さんは、こうした作業を効率化できないか課内で議論を進め、その内容を「サイボウズ」に相談。そこで得た回答が“kintone(以下、キントーン)なら解決できる”というものだった。このツールは同社の業務改善プラットフォームで、クラウドサービスとして提供されているので、すぐに実装できる。まずはやってみようと、同課は新しい仕組みの開発に向けて動き出した。
“スモールスタート”からの段階的な導入がカギに。
令和2年12月、まずは市町村課でテスト導入。課内で開発チームを結成し、アイデアを出し合った。そして完成したのが、幅の広い情報共有機能とデータベースを併せ持つ、キントーンベースのコミュニケーションツールだ。愛称を「コネミヤ(Connect-MIYAGI)」とし、まず、メールに代わる連絡手段としてテスト運用。松木さんは「ノーコードで開発できたため、業務用アプリの作成や改修もスムーズにできました」と振り返る。
テストで手応えを得た後は、課内の“班”単位でトークルームを作成。案件ごとにスレッドを立てる方式を採用して、令和3年2月から市町村を加えた2次テストを開始した。新しい方法に戸惑う団体もあったが、「次第に使いやすさを理解してもらえました」と松木さん。
テスト運用を終え、同年4月から同ツールは本格稼働を開始。その効果はすぐにあらわれた。通知や調査依頼は一斉配信でき、開封・提出履歴なども一目瞭然。また、市町村からも“添書やメールをつくる手間がなく効率的だ”などの反応が寄せられ、送受信時のトラブルも減少したという。
アイデアの共有を進めつつ業務効率化の輪を広げる。
運用開始から半年が過ぎ、同ツールはその本領を発揮している。これまでは、たとえ近隣であっても自治体間の交流は少なかったが、現在においては、独自に市町村や団体が意見交換や資料の共有を進めているという。「メールを代替するだけでなく、情報交換の場でもあるということが浸透していったようです」。また、この新しい取り組みに庁内からも反応があり、職員から“キントーンについて詳しく教えてほしい”という声が徐々に聞かれるようになったという。
こうした変化を感じながら、榊原さんは次のような目標を描いている。「当課には市町村からの派遣職員も多くいます。彼らがこれらツールの有用性を学び、派遣元にノウハウを持ち帰ることで効率化も加速するはずです」。松木さんも「このツールを将来的には、テレワークや災害発生時の緊急対応といった分野にも役立てていきたいです」と今後を見据える。
職員の熱意がつくり上げたコミュニケーションツール。同課の取り組みが今後どのような発展を遂げるのか注目していきたい。
宮城県 総務部 市町村課
左:課長補佐(行政第二班長)榊原 潤(さかきばら じゅん)さん
右:主事 松木 聡(まつき そう)さん
直感的操作によるシステム内製で“こんなツールがほしい”を実現。
コネミヤを構成するキントーン。コミュニケーションの場としてはもちろん、データベースとしても活用できるこのサービスが、煩雑だった業務を変える。
宮城県でのキントーン活用例
■調査・回答:国からの依頼を仲介し、市町村に照会。回答を集約し報告する業務。
導入前
①各団体にメール送信
②返信データを集計
③まとめて国に報告
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導入後
各担当者とやりとりできるスレッドへの一元化で効率が大幅UP!
■名簿管理:市町村および各団体の職員名簿を人事異動のたびに更新する業務。
導入前
①市町村から都度提出
②県が名簿を結合
③各団体にメールで展開
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導入後
クラウド上の名簿ファイルを各市町村の担当者が随時直接更新!
■情報共有:国や県からの通知・資料などを市町村に展開・周知する業務。
導入前
①メール用にデータ統合
②各団体にメール送信
③各担当者がPCに保管
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導入後
クラウド上の書庫アプリに保管。検索機能で照会も容易に!
自治体間の意見交換を活性化
1.悩みや課題を解決に導く
現状の課題に関する質問を投げかけ、集合知で解決の糸口を探ることができる。
2.共通の資料や知見をシェア
マニュアルなどの資料を交換し合い、既存業務のムダを削減することができる。
3.互いの進捗状況などを共有
進行中の調査に関するリマインド、自分の自治体の動向などを一斉通知できる。
導入から運用までフォローも万全
「ガブキン道場」 活用人材をオンラインで育成!
キントーンを活用し、“DX・業務改善力”を身につけることを目的とした自治体職員向けセミナー。同じ思いでデジタル化に取り組む仲間づくりの場にもなっている。
「自治体kintoneずかん」 活用方法を具体的に共有!
自治体業務にマッチする活用例を一覧で紹介。システムの活用イメージを、実際のキントーンの画面を触れながら確かめることができる。開発済アプリのダウンロードも可能。
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