ジチタイワークス

埼玉県さいたま市

市民に求められる“感染症予報サービス”で、安心・安全な都市の実現へ。

全国の自治体が感染症対策に神経をとがらせる中、「日立社会情報サービス」が手がける「感染症予報サービス」によるインフルエンザ予報の実証実験が、さいたま市で行われた。その内容や期待できる成果を、同市の有山さんに聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.14(2021年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]株式会社日立社会情報サービス

持続可能な都市を目指して市民満足度を上げる取り組みを。

近隣市の合併により生まれたさいたま市は、令和3年の今年、誕生20周年を迎えた。政令指定都市としての発展の中で、特に同市が重視しているのが“選ばれる都市”“持続可能な都市”を目指す取り組みだ。「令和12年までに市民満足度90%以上を目指すというCS90+運動に全庁を挙げて取り組むなど、市民のより良い暮らしのために、官・民・学の連携による先鋭的な事業を積極的に推進しています」と有山さん。

市民の生活を守り、その質を向上させる上で、健康や医療の悩みは大きい。医療費負担の軽減が課題となっている自治体も多いだろう。同市でも市民の健康維持に役立つ取り組みは必須であり、特に毎年大きな影響を受けるのはインフルエンザの流行だ。感染率を下げることは、子育て世代が暮らしやすい環境づくりになり、ひいては生産年齢人口の増加にもつながるはずだ。

そのような中で出会ったのが、日立製作所が研究開発し、日立社会情報サービスが提供を開始した感染症予報サービス。インフルエンザなどの感染症の流行をビッグデータとAI で予測し、4週間先までの予報を出すという内容だ。自治体が地域の予報をSNSなどで周知することで、市民の感染予防に対する意識を高め、行動変容につなげることをねらいとしている。

前例のない“予報”の取り組みも市民のために実証してみよう。

「平成31年度の初めに、市と包括連携協定を結んでいる損保ジャパン(P56インタビュー参照)から話を聞きました。何かできないかということで、すぐに日立製作所を含めた3者で協働を始めたのです」と有山さんは振り返る。サービス導入は急ピッチで進み、「そこから数カ月後の令和元年12月に実証実験を開始しました。走りながら考えるという状況でしたが、チームワークがとても良く、非常に濃密ながら楽しく取り組めたのが印象的でした」。

現在のコロナ禍において、感染症予防に対する世間の意識は当然高い。しかし、同市がこの予報サービスに出会ったのは、コロナ流行より前のこと。前例のない取り組みに、庁内で理解や合意を得るのが難しいことは容易に想像できる。苦労はなかったのだろうか。「取り組みの初期段階では、それなりに苦労もありました。例えばサービスに関わる複数部署との調整、地元医師会への相談なども必須となります。しかし、新しいことを始めるためには必要なことですし、インフルエンザの感染率を下げ、市民生活の質向上に貢献するための実証ですから、個人的にそれを苦労と思うことはありませんでした」。

感染症予報サービス運用のためのエコシステム

官民連携で日々改善し、アクセス数が大幅アップ!

実証実験は令和元年と令和2年の2回実施。様々な課題が日々噴出したが、「シームレスに乗り越えることができるメンバーが揃っていました」と有山さんは胸を張る。例えば、1年目はサービスを市民に周知するために、ポスターやチラシなどアナログな手段で告知したが、WEBへのアクセス数はあまり伸びなかったという。そこで、損保ジャパンがさらに複数の企業との橋渡しを行い、2年目には告知方法を変更。市の公式LINE、ツイッターなどのデジタル告知を強化した。また、市の広報紙での紹介も行ったところ、公式LINEの登録者数が大幅に増え、それに伴いWEBへのアクセス数も1年目と比較して約10倍と大幅な伸びをみせたという。

一方、画面の見やすさ、使いやすさを改良したり、公式LINEの登録者に向けて定期的な情報発信も行った。「特に2年目はコロナ禍に突入したことでインフルエンザが流行しない状況が続きました。もちろん流行しない方がいいのですが、いつ確認しても予報画面に変化がなく、新しい情報がないという状況ではサービスの有用性が薄れてしまいます。そうならないためにも感染予防のアドバイスや、1年前と感染者数を比較するといった参考になる情報を追加発信し、意義のあるものにすることを意識しました」。

この際、予防に関する情報を監修したのが、「日本ヘルスケア協会」だったという(P56インタビュー参照)。

継続希望70%の手応えでサービスの全国展開を願う。

同市による今回の実証実験では、70%以上の利用者から継続的な情報配信を希望されるなど、大きな手応えを感じる結果となっている。現在はインフルエンザ予報サービスとして展開されているが、今後は新型コロナウイルスを含めた、あらゆる感染症予報のサービスとして拡張される予定だ。「全国で初めての試みをさいたま市から始められたのは、大変ありがたいことです。この取り組みが全国に広がっていくことで、市民にとっても自分たちの市から始まったという誇りにつながるのではないかと考えています」。

今後は実証実験の枠を超え、本稼働に向けて具体的に進んでいくという。「このサービスをほかの自治体にも広げることで、自治体間の連携につなげたいという思いもあります。いつの時代も地方自治体は協力していくもの。ともに苦難の時代を乗り越えていけるといいですね」。

さいたま市未来都市推進部
有山 信之(ありやま のぶゆき)さん
 

「感染症予防は予報とセット」が当たり前の世の中を目指す。

協働団体「日本ヘルスヘア協会」 担当者の声

天気で体調が左右される人が天気予報に助けられるように、感染症についても事前に流行を予測した情報源があれば多くの人が助かるはずです。今回のお話を聞き、大変素晴らしい取り組みであり、ぜひ参加したいと思いました。

私たちは、ヘルスケア産業に健康寿命の延伸のための枠組みをつくることを目的として発足した、産業横断+学会横断で活動する組織です。病気の予防・治療・ケアの分野まで幅広く関わるため、今回の取り組みとは親和性が高いと感じています。予報サービス内では主に、情報の監修や週に1回配信されるお知らせの内容作成を担当し、感染予防に効果的な体づくりや生活習慣についてのアドバイスなども行います。また、広報のお手伝いとして、協会内や私自身が所属するウエルシア薬局でのサービス周知の活動もしています。

今までもインフルエンザについての情報を記載した冊子などはたくさんあったと思いますが、“予報”というコンセプトと、テレビの天気予報のようなWEBの視認性の高さは、唯一無二のものだと感じています。外出する前に天気予報を確認するように、このサービスも日常に浸透してほしいですね。今は特に、感染症に対してとても敏感でいなければいけませんし、予報と予防はセットですから。

協会の参加企業には、感染症を得意分野とする企業もたくさんあります。そのような企業と接点を持ち、より良いサービスになるように今後も力を入れていきたいです。
日本ヘルスケア協会
小原 道子(おばら みちこ)さん
 

仲間を探しエコシステムを構築。安心・安全・健康の実現へ!

協働団体「損保ジャパン」 担当者の声

私たちの主業は損害保険ですが、その先に“安心・安全・健康に資する最高品質のサービスを提供し、社会に貢献する”というグループの経営理念を掲げています。この理念を追求し、保険の先へ挑むという目的があったため、インフルエンザ予報サービスを知ったときに大変な期待感を覚えました。インフルエンザは毎年必ず流行し、そして報じられることは少ないですが、かなりの数の方が亡くなっています。私たちにとっても立ち向かうべき大きな課題だったのです。

日立グループは、当社の保険の取引先企業であり、社会課題の解決に向けた取り組みを一緒にできないかと、何もかも手探りで活動を始めました。私たちの役割は、このサービスのコンセプトに共感していただける仲間を探し、業界や立場の垣根を越えたエコシステムをつくることです。今回はまず、さいたま市にご提案し、日本ヘルスケア協会などにお声がけをしていきました。ここには挙げきれませんが、ほかにも多数の企業にご協力いただいています。

このサービスは、安心・安全な暮らしを提供するための仕組みであり、4週間先まで予報できるため有用性も高く、多くの地方自治体にインパクトを与え、関心を持ってもらえるのではないかと思っています。まだ始まったばかりですが、様々な感染症予報に必要なデータ取得のためには、もっと多くの医療機関にご協力いただく必要があるなど、課題もあります。引き続き協力体制の確立に取り組みつつ、大きな行動変容につながる動きを仕掛けていきたいですね。

損保ジャパン
市川 裕邦(いちかわ ひろくに)さん
 

小さなトライの積み重ねが、将来につながる手応えに。

1.インフルエンザ情報は“過去”より“これから”が重要

さいたま市ホームページには従来からインフルエンザ関連情報が掲載されているが、今回の実証実験により、従来のページと比較して、予報サービスには5倍以上のアクセス数があった。感染者数など過去のデータより、これから先の予測を重視していることがよく分かる。

 

2.サービスの認知度アップには紙とデジタルの両方が有効

市の公式LINE、ツイッターなどを使ったデジタルマーケティングだけでなく、市報を使った告知でも大きく認知度が上昇。公式LINEの登録数増加は、予報サービスへの大幅なアクセス数の伸びに貢献し
たとデータからも確認できる

 

3.画面を見やすく改良を重ね市民の理解もスムーズに

多くのアクセスを集めながら、市民からの批判的な意見や問い合わせはゼロという結果に。初の取り組みにも関わらず高い理解度を得られたのは、サービス画面が分かりやすく、直感的に使えたのも理
由の1つといえるだろう。

医療機関提供オープンデータとAIにより感染症流行を4週間先まで予測

医療機関から提供されるオープンデータを中心に各種データを組み合わせ、AI分析により感染症の流行を予測。自治体はその情報をWEBサイトで公開し、SNSを利用したプッシュ配信によるお知らせや情報提供も可能。“自律的な判断に役立つ情報”をもとに市民の予防意識を高めて行動変容を促し、感染症の流行を低減させる。現在はインフルエンザのみだが、今後は様々な感染症へのサービス拡張が計画されている。

 

感染症予報サービスを全国の自治体で!

感染症の流行を事前に予測し、予報情報を提供するという新たな価値・サービスを通じて、安心・安全なまちづくりのための情報インフラになることを目指しています。実証実験など含め興味・関心のあるご担当者様は、ぜひお問い合わせください。

お問い合わせ

サービス提供元企業:株式会社日立社会情報サービス

E-mail:ifs-contact@ml.hitachi-sis.co.jp
住所:〒140-0013 東京都品川区南大井6-26-3 大森ベルポートD館17F

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