ジチタイワークス

地域の明暗が分かれるのは今!公共施設マネジメントの未来を語る。

総務省は現在、自治体に総合管理計画の見直しを求めている。同時に、見直し時の支援策としてアドバイザー派遣事業が創設された。このアドバイザーに就任した3名の先生方に、「コロナ時代の公共施設マネジメント(以下、公共FM)」をテーマに話を聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.14(2021年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]日本管財株式会社


【編集室より】

この鼎談はクローズドのオンライン形式で実施。どこを取っても興味深い内容だったのですが、誌面では全てを紹介できませんでした。こんなに有益な情報をお蔵入りさせるのはもったいない、ということで、誌面に掲載できなかった部分を公共FMサロン限定で公開しています。ぜひ、ジチタイワークス誌面の記事とあわせてご覧ください。


 ●「公共FMサロン」とは?

日本管財(株)が運営する、Facebookを用いた自治体職員限定の無料サロンです。公共FM実践のリアルがわかる情報を日々発信しているほか、パートナー専門家にもジョインいただきサロン会員を含めたオンライン交流会などの限定企画も実施しています!
サロン加入のお申し込みはこちらから

Talk Members

東洋大学 客員教授
南 学(みなみ まなぶ)さん

1977年、横浜市役所に入庁。1989年、UCLA大学院に留学派遣。帰国後、立大学事務局、市長室などを歴任し、横浜市立大学教授、神奈川大学特任教などを経て現職。自治体の経営・マネジメントを研究。また、行政刷新会議の事業仕分けにも民間評価者(仕分け人)として参加。著書『ポストコロナ社会の公共施設マネジメント』(学陽書房)など。

前橋工科大学 工学部建築学科准教授
堤 洋樹(つつみ ひろき)さん

早稲田大学助手、九州共立大学准教授を経て2011年より現職。専門は建築経済、建築生産、建築構法。建物の長寿命化の実現に向け、ソフト・ハードの両面から研究を行う。会津若松市・港区・群馬県建設技術センターなどのアドバイザー、日本建築学会建築社会システム本委員会幹事などを兼任。著書に『公共施設のしまいかた』(編著・学芸出版社)など。

合同会社まちみらい 代表社員
寺沢 弘樹(てらさわ ひろき)さん

2001年、流山市役所入庁。建築・企画・教育委員会・都市計画部門を経て財産活用課で公共 FM を推進。初代 FM 推進室長。2016 年に退職後、日本 PFI・PPP 協会業務部 長。常総市・南城市等のアドバイザー、静岡県湖西市・埼 玉県鴻巣市等の包括施設管理業務などを支援。2021年 4 月 か ら 現 職 。著 書 に『 P P P / P F I に 取 り 組 む と き に 最 初 に 読む本』(学陽書房)など。


総合管理計画の見直しで国が求めている結論とは?

―まずは今回の公共施設等総合管理計画(以下、総合管理計画)の見直しについて、アドバイザーに選出された皆さんの見解をお聞かせください。

 総合管理計画から個別施設計画、そして見直しで、「また計画か」という印象ですが、総務省の権限は交付税配分と地方債発行同意なので、“財政上の整合性をとってくれ”というのが本音だと思います。各自治体では、施設面積をマクロ的に見て、更新財源の不足を総合管理計画で試算しました。さらに、施設ごとの状況と今後の進め方を個別施設計画にまとめましたが、総合管理計画の当初の数字がざっくりしているので、個別施設計画の数字を積み上げて再集計してほしい、というのがこの見直しの趣旨でしょう。財源不足は変わらないので、統廃合などの“縮充”実践は、次の段階になります。

 以前、総務省に話を聞きに行きましたが、ほぼ南先生の説明通りの回答でした。趣旨を知らない自治体が戸惑うのも、無理もない話です。疑問点も多々あるのですが、自治体における総合管理計画の位置づけやつくり方が気になるので、自治体やほかのアドバイザーと一緒に改善したいと考えています。

寺沢 総合管理計画を策定してから何年も経っているのに、現場とはなかなかリンクしませんよね。それに、今回の見直しに関する通知には“コロナ”という言葉が出てきていません。こうした疑問もあって、私はアドバイザーを引き受けるかどうか迷いましたが、外からあれこれ言うよりも、中から変えられるのであれば一度やってみようと考えて受けることにしました。

コロナ禍であらわになった現実を公共FMのチャンスに変える!

―その“コロナ”について。公共施設をとりまく環境では、コロナ禍において、どういった変化が起きていますか。

 まずは財政の落ち込みです。国はコロナ禍の影響を赤字国債でカバーしていますが、昨年度は90兆円も発行しているので、今年度はそこまでの金額は無理です。勤労者所得も物価も下がって、経済がまわらない衰退型の社会なので、税収は上がらない。国も自治体も財政が行き詰まり、施設への投資は落ちる以外にありません。ここで新しい施設をつくったりすると大変なことになります。

寺沢 いま“財政非常事態宣言”を発出している自治体は、そうした現実を見つめた結果の行動なのだろうと思います。逆にコロナの影響が読めないからと経営をめぐる本質的な問題を先送りした結
果、破綻する自治体も今後は出てくるでしょうね。

 一方で、“施設が要らなくなる”という変化も起きています。コロナ禍では人が集まることを避けることになり、これまでの施設の機能を見直さざるを得ない。ならばこの機会に施設は機能を充実させて必要最小限にしよう、という議論を進められるはずです。ポストコロナでは、学校と公民館を統合するなど、従来の施設概念を打ち破る議論・検証が必須になるでしょう。今が千載一遇のチャンス!という捉え方をすべきです。

 施設の存在意義が問われていますね。例えば、私の勤める大学でも“対面”をどこまで重視するべきか議論が始まっています。具体的にはどこまで“DXで解決”できるのかといった方向に向かっていると思われます。ただし、その際に自治体で問題になるのは情報セキュリティです。例えばLGWANという壁がそびえていますが、ブロックチェーンのようなテクノロジーを活用すれば、解決できるかもしれません。そもそも、そこまで厳重なセキュリティが必要なのかも考えなくてはならないでしょう。ほかにも、公共施設の維持管理のデータはオープンにするべきだと、私は考えています。

寺沢 情報セキュリティをクリアすれば、公共FMの考え方にも変化が起こってくるでしょうね。例えば静岡市では、2人の職員がシェアオフィスで働き、市にビジネスをつくるという企画を進めています。庁舎でなくても公務員は働くことができるし、まちのために貢献できるはずです。これまでは行政が“ハコ”を整備してきましたが、民間の施設をリソースと捉えることも必要です。市民がスポーツクラブに通う費用を補助する方が、体育館を建てるより安く済むはずだし、地元の経済もまわります。総合管理計画でも、ハコの議論ではなくサービスが重要だということを改めて考え、民間施設や屋外空間を使っていくことも視野に入れるべきだと思います。

10の縮減と100の挑戦で地域をもっと面白くする。

―そうした状況でも、自治体は計画見直しを進めなくてはなりません。見直し後の計画が画餅に終わらないようにしていくには、どうすればいいでしょうか?

 私は以前、“使っていない計画は不要”と考えていたのですが、現場で調整している中で次第に必要だと思えてきました。自治体には多様な機能が存在し、民間も絡んでくるので、縦割りで進めると何らかの反発が起きます。そうした中でも全体の方向性を示し、合意形成の流れをつくるための計画が必要になります。ただし、計画と予算をきちんと結びつけて管理業務の流れに組み込み、 “施設カルテ”と連動させて公開しなければならないと思います。

―施設カルテとは?

 私の言う施設カルテは、各施設の再整備に必要なデータをまとめたものです。延床面積や利用者数、運営経費などが一元化されていて、それを施設評価や整備の優先順位につなげることを目的に作成します。

寺沢 現実を見直す中で、過去から現在までの修繕積み残しがどのくらいあるのか明らかにすることも重要です。この積み残しの想定額は、総務省の推計ソフトでは向こう10年間に按分しています。しかし、そんな猶予はないですし、財政状況などを理由に必要な更新を先送りしてきたので本当はもっと多いはず。そうでなければ、各地に老朽化した学校が溢れている説明がつきません。だからといって政策が縮減一辺倒だと、“まちに失望した動ける人(お金を持っている人、他のまちでもビジネスできる人、若くてやり直せる人)”から流出していきます。地域の経営に貢献してくれる人が減って、支えなければならない人が残り、さらに財政がひっ迫する。こうした負のスパイラルに陥らないためにも、10の施設を減らすなら100の面白いプロジェクトを展開して、魅力的なまちにしていかなければならない。

 ただ、100のプロジェクトは役所単独で展開できない。公民連携が注目されるのは、役所にカネとノウハウがないからです。事業は民間に任せて、職員はプロデューサーに徹するべき。民間は、事業収益が前提でハコをつくりますが、行政はハコができてから中身をつくる。逆ですよね。地域を面白くするには、民間が力を発揮でき、役所の予算を最小にしてプロジェクトを成り立たせるという発想が大切です。

 官民の役割分担は重要ですね。自治体が面白いことを考えるといっても限界がありますから。同時に、10の施設を減らす必要があってもネガティブにならず、“縮減も有意義である”という発想を持つことが必要です。今までは施設を増やす方に注力していましたが、減らすことも重要なプロジェクトだし、インパクトもある。それが面白い取り組みになるのが理想的だと思います。

寺沢 例えば、茨城県常総市は保育所が耐震診断で全部アウトだったので、“保小連携”として小学校に統合しました。それを市の広報でお知らせする際には、「小1ギャップが解消できた」「園児も運動場や体育館を広く使えるようになった」といった伝え方をしています。公共FMは手段であって、総量縮減はその過程でしかなく、大切なのは“どんな未来を創出できるのか”です。暗い世界じゃないということを伝えるのは確かに重要ですね。

 兵庫県高砂市の保全計画策定もモデルになります。ここでは、市内の主要100施設を選んで、専門事業者に委託してその全てを点検しました。結果を並べたら危険度が一目瞭然になった。5年以内に緊急改修しなければまずい施設をデータが示し、すぐに対応することになったのです。まずは専門業者の力も借りて施設の現状をきちんと知る。そこから必要な施策を打ち出して即アクションを起こ
す。これが理想的なまちづくりの姿だといえます。

“つながる、広げる、模倣しない”が公共FM成功への道になる。

―計画の見直しを経た後、公共FMを成功させるために必要なマインドは?

寺沢 待っているだけだと、得られるものもわずかです。まずはアンテナを立てて、ネットワークをつなぎ、それを広げていかなければ。そして、手にした情報の中で面白いと思えるものがあったら、現場を見に行ったり、関係者の話を聞いたりする。そうすると「このプロジェクトは□□の事例に倣った」「このアイデアは○○さんに聞いた」などと、芋づる式に世界が広がっていきます。ただし、ほかの事例を形だけコピーしたり、コンサルに丸投げして要求水準をつくるのはNG。それでは劣化コピーに陥るだけです。岩手県紫波町のオガールの事例があるからといって「図書館に産直を付けるといい」ということではありません。

 私もよく、「真似だけしてもダメ」という話をします。まちはそれぞれ状況が違うので、自分たちの課題を考えずに模倣しても失敗するだけです。なので私は、自治体にアドバイスをする際にも、課題が明確でない状況では、基本的に事例を出さないことにしています。公共FMで使える知識は、全く別のジャンルにも溢れています。私の研究室では公共FM以外のことも色々と扱っていますが、「これは施設管理で使えそうだ」と思ったら、すぐに情報をストックします。同様に、他分野の取り組みでも足を運べば得るものがあるかもしれません。できることは片っ端からやる、というのが私の方法論です。

 そうした情報収集や、人とつながるということを続けていくと、ある種の“勘”が働くようになりますね。あともう1つ、“書く”という作業も大切です。私は雑誌の連載や書籍の出版などで書くことを続けていますが、文章はかたちとして残る。従って綿密に調べなくてはならなくなります。その作業の中で情報が蓄積され、自分の発言に責任を持つようになり、さらに勘が働くようになります。アウトプットの手始めに、私たちも参加している公共FMサロンの場で、自分のまちの取り組みや疑問を発信してみるのもいいでしょう。クローズな環境なのでハードルも低いはずです。ぜひ試していただきたいですね。

専門家3名の情報収集方法

1.WEBスクリーニング

週1回程度、WEBでキーワード検索

・公共施設マネジメント
・PPP/PFI
・公民連携
・包括施設管理業務
・民間提案制度

2.業界誌や定期刊行物のチェック

興味を持った内容はさらに深堀り
●業界新聞
例)建設通信新聞、日刊建設工業新聞 など


●定期刊行物
例)ジチタイワークス、地方財務など→これらはWEBでチェックできる場合も!

3.集まりに参加する

様々なつながりの中で情報収集
例)日本PFI・PPP協会のPPP入門講座、国土交通大学校や建設研修センターなどの研修、都市経営プロフェッショナルスクール など
●オンラインサロン
例)公共FMサロン、シンFM など
●オフラインの繋がり
例)現地視察、公共FM仲間との懇親会 など

自治体職員限定の公共FM情報コミュニティ
ヒントが見つかる!仲間が増える!知識と仲間が集まる公共FMサロン。

スペシャルインタビューで語られた通り、コロナ禍は公共FM推進のチャンスだ。人が集まる活動が制限される中、この流れを止めてはいけないと立ち上げられたのが「公共FMサロン」。運営事務局の恒川さんがその思いを語る。

公共FMの実践に向けて今こそ必要なオンライン交流。

「コロナ禍により、これまで自治体職員の皆さんが“情報交換”、“仲間づくり”を目的として利用されていたセミナー(リアル)が開催できなくなりました。公共FMサロンはそれに代わる場として今年の2月に立ち上げました」。参加は無料で、全国の事例や専門家の知見を集約し、悩みを共有して公共FMの課題解決を目指す場だ。令和3年5月末日時点で、全国62自治体75名の自治体職員が加入しているという。

「こだわったのは“自治体職員限定のクローズな環境”であること、そして“パートナー専門家を含め、気軽にやり取りができる場”をつくることです。多くの自治体職員の皆さんにこの場をうまく活用いただき、公共FMの実践につながるヒントを見つけてほしいと願っています」と期待を語ってくれた。

全国の自治体職員に期待する専門家からのメッセージ。

サロンには、スペシャルインタビューでご登場いただいた3名の先生方も参加。

 組織の殻に閉じこもっていると突破口も見えなくなります。悩みの共通項はこうしたサロンのような場にあるはずです。できない理由は考えずに、どうすればできるか、を考えることから始めましょう。

 一般的な事例よりも、地域にこういう問題がある、といった具体的な話の方が答えやすいので、思いついたらパッと相談するくらいの勢いで参加してください。このサロンなら気軽に色々聞けますよ。

寺沢 公共FMは孤独な作業でもあります。でも、分かっている人同士がつながりあえる場所に行けば、様々な反応が得られるかもしれません。まずはこのサロンを、つながるきっかけにしてくれたら嬉しいです。

サロン運営事務局の皆さん

公共FMサロンの特徴

1.無料&自治体職員限定

Facebookを活用した、無料×実名×クローズな環境のオンラインサロン。だからこそ、気軽に会員同士のコミュニケーションが可能です。

2.パートナー専門家

現在4名の有識者にご参加いただいています!
●東洋大学 南 学さん
●前橋工科大学 堤 洋樹さん
●合同会社まちみらい 寺沢 弘樹さん
●東京都立大学 讃岐 亮さん

3.サロン限定コンテンツ

様々な企画やコンテンツを配信しています!
●パートナー専門家とのオンライン交流会
●建物のプロが教える!建築物の維持保全講座
●自治体職員寄稿「なるほど!公共FM知恵袋」

次回予告&サロン参加方法

次回vol.15では静岡県島田市の事例をご紹介!サロンでは、先行して連載動画「事業者からみた包括管理・実践のリアル」を公開!サロン加入は無料ですので、ぜひこちらのフォームよりお申し込み・ご参加ください。

サロン活動実例~オンライン交流会~

●ゲスト
前橋工科大学 堤 洋樹さん
●交流会テーマ
「堤先生と一緒に公共FMの実践を考えよう!」

●当日のタイムテーブル
・参加者の自己紹介・近況報告など
・堤さんによる研究室の活動紹介
・参加者とのフリーディスカッション

●当日のトークテーマ
・予防保全によるLCC低減の効果を具体的に示すことはできる?
・学校施設に関するFMで具体的な取り組みの事例は?
・地区ごとの施設再編をエリアマネジメント的な発想で取り組めないかと思っているが、どのように進めるといい?
・民間提案制度や包括管理を進める上で、庁内や議会、住民からはどのような反応があった?

 

後日公開した“交流会レポート”のコメント欄では、「長寿命化」についてさらに議論が加速!今後もオンライン交流会は月1回程度開催してまいります!

 

お問い合わせ

日本管財株式会社

TEL:03-5299-0851
住所:〒103-0027 東京都中央区日本橋2-1-10 柳屋ビルディング5F
E-mail:eigyo_market@nkanzai.co.jp
担当:マーケティング推進部 恒川・大原・石井・島田

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