「優秀な人材の確保」「持続性のある産業の育成」は地域共通の課題だ。ローカルになればなるほど優先度も高い。丸森町では、外部人材の起業・副業支援という面で事業者と協働しつつ、役割分担も絡めて着実に成果を上げている。その具体的な取り組み内容を同町の八島さんに聞いた。
※下記はジチタイワークスINFO.(2021年1月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供] 株式会社MAKOTO WILL
外部人材の誘致を推進し脱・消滅可能性都市を目指す。
丸森町は人口約1万3,000人。宮城県の最南端に位置する自然豊かなまちだが、他の地方と同様、若年世代の流出や人口減少などの課題を抱えている。解決に向け、平成23年に就任した保科町長は「企業誘致を推進する」という指針を出し、同年の東日本大震災で大きな被害を受けたことも重なって、より抜本的な対策を行うべきだという気運が高まった。
「平成26年には消滅可能性都市に指定され、さらに緊張感が高まりました」と八島さんは振り返る。「地域を元気にするには、外部の人材が新しいことを始めるのが有効。そこで、町内における起業と副業支援で、人材誘致に力を注ぐことにしました」。平成27年5月、同町は「創業支援等事業実施計画」を策定し、起業支援推進事業を開始。同時に都市圏の人材が町内で副業を行いやすい環境も整えた。副業は国がガイドライン※を定めて促進していることもあり、人材確保の手段として有効だ。
こうした方向性のもと丸森町は様々な取り組みを行っているが、その強力なパートナーが「MAKOTO WILL(以下、マコトウィル)」だ。
※厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
人を集め、情報を発信する人材発掘拠点“クラスタ”。
マコトウィルは、地域人材への経営支援を通じて自治体の課題解決を行う企業。代表は元自治体職員で、地方が抱える課題に精通しているという強みを持つ。丸森町は同社とタッグを組み、外部スキルの獲得に向けて動き始めた。町内の有形文化財「齋理屋敷」にある蔵を改装した「起業サポートセンターCULASTA(以下、クラスタ)」を拠点とし、ここを起業家支援の窓口やコワーキングスペースとして活用。「自分も一歩踏み出してみたい」と考える町民との意見交換会や、地域事業者向けのセミナー、町内外へのPR活動などを積極的に展開した。
人材は徐々に集まり、各々の活動を始めている。例えば町内の自動車部品製造会社では、副業として製品開発に関わる外部デザイナーのアドバイスを受け、自社技術を活かしたマスクハンガーを考案。これがヒットし、コロナ禍での減収補てんに貢献した。
さらに、事業の一環として「まるまるまるもりプロジェクト」を発足。地域おこし協力隊のスキームを活用し、移住を前提とした外部人材の起業を手厚くサポートしている。マコトウィルは人材を集め、その人の意欲が本物かどうかの見極めをして、事業がスタートしたら軌道に乗るまで伴走を続ける。プロジェクトではすでに10人が起業を果たし、丸森町民として活躍中だ。
これらの取り組みにおいて「丸森町とマコトウィルの役割分担もポイントです」と八島さんは強調する。「事業計画や戦略などのビジネス面はマコトウィル、住居の手配や地域慣習の伝達などは町と、それぞれが専門分野をカバーすることで取り組みがうまく進んでいます」。
左:クラスタの中の様子。マコトウィルが起業に関心のある人を対象に専門的支援を行っている。
右:副業支援で誕生したマスク用の銅製ハンガー。地域の線材加工技術を効果的に活用している。
信頼できるパートナーとともに元気とアイデア溢れるまちへ!
多面的な施策を実現してきた丸森町。八島さんは「まちが元気になった」と目を輝かせる。「以前の丸森町は多様性が不足していると感じていました。そこに外部の人が溶け込むことで、思いもよらないアイデアが出るようになりました」。
さらに、大都市では埋もれてしまうアイデアでも、地方であれば注目され、実現するチャンスも増える。事実、丸森町での起業・副業による新たな挑戦はメディアに度々取り上げられており、企業のCSR活動という面でも有益といえる。もちろん、自治体がこうした取り組みを成功させるには、民間事業者による伴走が必要だ。八島さんはパートナーであるマコトウィルに多大な信頼を寄せているとしつつ、「丸森町というベンチャーを経営している感覚で、一緒に地域を引っ張っていきたい」と締めくくった。閉塞感を抱える地域に新たな風を吹かせるこうした事例は、他の地域でも展開できそうだ。
丸森町 商工観光課
八島 大祐(やしま だいすけ)さん
自治体ごとの特性を見極めて起業・副業希望者を適切にサポートする。
都市部副業人材とのマッチングの場合働き方改革や副業解禁の流れを受けて、都市部の優秀な人材が地方での起業・副業を目指すケースが増えている。一方、地方の企業ではスキルを持つ人材の確保がままならず経営改革が進んでいない。マコトウィルはこの二者をマッチングし、地方創生に貢献する。
都市部副業人材とのマッチングの場合
1.自治体課題を徹底的に把握
自治体が描く、取り組みの目的を明確にするため、何度も話し合いを実施。地域のニーズや自治体の思いを理解した上で、どんな未来を描いているのか、施策はどう打つべきか、どのような人材が地域に適しているかを分析し、そのカルテをもとに取り組みに着手する。
2.事業者向けセミナーの企画でニーズを発掘
経験豊富な講師による経営に関するセミナーを地域事業者向けに開催。多くの自治体と取り組みを進めてきた自社ノウハウをもとに、第三者だからこそ分かる地域の魅力などの“気づき”を提供。地域事業者の人材活用意識を高め、ニーズを生む。
3.優秀な人材を地域にマッチング
マッチングセミナーの開催や、WEB上で求人を行う副業プラットフォームの活用などにより、地域貢献意識が高い優秀な人材を確保。地域のニーズや特性にマッチした人を見極め、自治体と協力の上で現地確認、書類審査、プレゼンテーションなどを経た人選を行う。
4.プロジェクトのマネジメント・サポート
マッチング後、地域事業者へは、コーチングの手法を取り入れながら、経営の計画づくりとその遂行をサポート。毎日・隔週・毎月など相手に合わせたサイクルで、「何に注意し、どう行動するべきか」を具体的にアドバイスする。
自治体の皆様の課題に真摯に向き合います!
三大経営資源はヒト・モノ・カネと言われますが、私たちマコトウィルは、地域活性化においては“ヒト”が最も大事だと考えています。地域を支えるキーマンである起業家・経営者の皆様を支援・誘致することでビジネスを通じた課題解決、将来の雇用・税収の確保につなげてまいります。
代表取締役 菅野 永(かんの ひさし)さん
お問い合わせ
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