ジチタイワークス

沖縄県浦添市

ナッジ理論とSMSの活用で大腸がん検診受診者数が大幅増!

自治体の通知を自動化・最適化するクラウドサービス

「市民の健康寿命を延ばしたい」というのは自治体共通の願いだ。全国でも様々な施策が展開されている中、浦添市は独自の挑戦をして検診受診率を伸ばしている。その取り組み内容について、同市の担当者に聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.10(2020年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]ケイスリー株式会社

Interview 01



浦添市 前・福祉健康部 健康づくり課(現・いきいき高齢支援課)
平古場 裕子さん
 

慢性的なマンパワー不足を民間が持つ知恵と工夫で補う。

昭和56年以来、日本人の死因で「がん」は常に1位。これに対し政府はがん検診の重要性を訴えつつ、受診率50%達成を目標に掲げ、その指針を自治体にも示している。

浦添市でも、がん検診の受診率を増やそうと、はがきの送付やポスターの掲示、電話での案内など様々な方法で対象者にアプローチしていた。しかし受診率は伸び悩み、平成29年度の実績は約17%。平古場さんは状況をこう語る。「何か新しいことを始めなければ改善されないのは数字からも明白でした。ただ、マンパワーも予算も不足していました」。

そんな折、内閣府(沖縄総合事務局財務部、経済産業部)が主催する「沖縄県成果連動型事業推進プラットフォーム」に参加、セミナーでPFS(成果連動型民間委託契約)※1の取り組みを知った。市の予算を使わなくても新しいことに挑戦できると知り、浦添市は「ケイスリー」の「BetterMe(以下、ベターミー)」を使った新たな実証実験の取り組みを始めた。

 

外部からの助言で見えたSMSの活用という突破口。

ベターミーはデータアナリティクスとナッジ理論(行動経済学)を用い、公的通知を自動化・最適化するクラウドサービスだ。浦添市の場合、SMS(ショートメッセージサービス)を通知手段に採用した。SMSであれば短文を手軽に確認できるため効果が期待できる点に着目した。

浦添市とケイスリーはまず、ターゲットを「大腸がん検診」に絞った。浦添市のがんによる65歳未満死亡割合の中で、大腸がんは男性で1位、女性では3位と、男女ともに上位に入るためだ。同時に、平古場さんはPFS実施に向けて庁内の合意を得るために関係部署に働きかけた。「職員の負担が増えるのでは」「2年目からの予算はどうするのか」といった意見も出たが、市民の健康寿命の延伸と社会保障関係費の増加を抑制するためという目的のもと意思統一を図ることができ、PFSの導入が決定した。

 

浦添市の大腸がん検診受診勧奨事業

 

ナッジ理論にもとづく文面で未受診者層の行動を促す。

令和元年9月、SMSでの案内を開始。送信後はすぐに市民から「受診方法を具体的に教えてほしい」「受診券をなくしたので再交付を」などの反応があった。文面にはナッジ理論にもとづき「早期大腸がんと進行大腸がんの医療費には約300万円の差」「女性の(大腸)がん死亡数1位、男性3位※2」などといった、行動に働きかける伝わりやすい言葉が選ばれた。

さらに、過去6年間大腸がん検診未受診者にも訴求するために、ケイスリー側から「検査キットを送付して、受診予約も不要にしてみては」といった提案もあり、すぐにそれを実行。受診者は徐々に増え、令和2年1月末の時点で比較対象の平成29年度(2,190人)より921人増加の3,111人と大幅に増加。目標としていた「前々年比500人増」の倍に迫る勢いだ。平古場さんは「ベターミーのシンプルで強いメッセージが市民に響いた結果だ」と評価する。

大腸がんに関わらず、病気の罹患率は市民生活の質に直接影響し、医療費にも関係してくる。今回の浦添市の取り組みは、そんな地域の課題を民間の発想で解決しようとするモデルケースだといえるのではないだろうか。

※1成果連動型民間委託契約方式による事業(PayForSuccess):自治体などが民間事業者に実施させる事業において、行政課題に対応した成果指標が設定され、報酬がその指標の改善状況に連動する事業。
※2大腸がん死亡数は全国統計を参照

 


 

浦添市の大腸がん検診受診勧奨事業の実施までの流れ

1.導入計画段階

受診率17%という地域の実状をもとに、「比較対象年度より最大で500人増加」という目標を設定。目標最大値を達成するために、ケイスリーと事前打ち合わせを行い、ナッジ理論およびSMSを活用することに決定。ケイスリーがデータの分析と文面案の検討を開始。

2.庁内での合意形成

PFSを進めるためには市全体の連携が必要で、財政や企画など他部門との会議を重ねる。業務の増加や、必要経費を懸念する声も出たが、取り組みの意義を丁寧に説明。キックオフミーティングも他部門の関係者を集めて実施した。

3.記者発表・配信スタート

市民が戸惑わないよう、事前に記者発表を行い、市のホームページや地元新聞へも情報を掲出して取り組みについての理解を促す。市民からSMSの内容に関する問い合わせがあれば、それも受診へ直接誘導できるチャンスとして活かす。

4.途中経過の検証とこまめな改善

SMS送信は年間で12回。このうち前半の反応を検証し、後半は特に過去6年間大腸がん検診未受診者へのアプローチを強化することで一致。送信文章をより訴求力のあるものに変え、検診キットの直接送付といった作戦も実施した。

5.結果

令和元年9月配信開始~令和2年1月末時点で、平成29年度(2,190人)比921人増の3,111人で目標クリア!(目標達成率184.2%)


Interview02


浦添市 前・福祉健康部 健康づくり課(現・市民生活課)
課長 与那覇 純子さん

 

新しい挑戦とその効果が職員のやる気を引き出す。

今回の大腸がん検診×PFSという取り組みの結果、様々な成果が上がったと与那覇さんは語る。中でも大きかったのは、①大腸がん検診の受診率向上②職員の意識の改革③庁内全体への影響の3点だ。

受診者数については、前述の通り目標の倍に迫る結果を出している。この点を与那覇さんは「大腸がんだけでなく、他の検診の受診率向上にも好影響を与えてくれた」と評価する。また、職員の意識改革という面でも「初めての取り組みでしたが、課内でわくわくしながら挑戦できました。職員のモチベーション向上につながる、とても貴重な体験でした」と振り返る。そして、これらが庁内全体に好影響を与えていると与那覇さんは考える。PFSに限らず、初めての取り組みで良い結果を残すことは、次の機会につなげる意味でも重要だ。

 

民間の力を有効活用し自治体内部の硬直化を防ぐ。

自治体では、新しいことを始める際に組織内部での調整が多く、その段階でギブアップしてしまうこともある。これが組織の硬直化につながることもあるが、「今回は民間の力を借りることでクリアできた」と与那覇さんは語る。「民間事業者が、内部調整の際に充実した資料を用意し、エビデンスをもとに説明してくれると庁内の合意形成がスムーズになる。新しい視点で話し合うこともできるし、硬直化した部分もほぐれてくるようです」。

個々の職員も成長できたという浦添市の取り組み。この成功体験をもとに、浦添市は次の挑戦へ向かっていくことだろう。

 

 


 

浦添市が活用したクラウドサービス「ベターミー」について

特徴

ベターミーは、自治体から市民へのよりよい働きかけを可能にし、かつ自動化によって職員の負担を軽減するためのクラウドサービス。データアナリティクスとナッジ理論にもとづき、市民の属性に応じた適切なメッセージングを行うことで市民自身にとって望ましい行動を促すことができる。

 

1.市民データの分析・分類化

対象となる市民のデータを分析し、セグメント分けし、セグメント毎の阻害要因の仮説を立てる。例えば、大腸がん検診については、年齢、性別、過去の受診歴をもとに3分類に初期設定した上で仮説を立てた。

 

2.ナッジ理論にもとづく訴求文面を作成

1のデータをもとに、それぞれのセグメント対象者に応じた内容の文章をナッジ理論にもとづき作成。短いメッセージの中で受診のメリット、受診しない場合のリスクの重大性や受診の簡単さなど複数パターンを作成し、市民のアクションにつなげる。

3.クリック率・受診結果等を分析し再勧奨

SMSのURL(検診予約ページ)クリック率やその時点での予約、受診結果等を分析し、次回SMS文面やセグメント方法を随時変更。1度の勧奨では行動につながらない市民に複数回勧奨することで受診勧奨の効果を高めた。

 

利用するメリット

●コスト削減(SMSは1通当たり約10円)
●はがきと比較し通数単価が安価なため、年に複数回送信可能
●勧奨文面を対象者の属性毎にナッジ理論を用いて最適化
●効果測定と文面改善による高速PDCAを実現
●データアナリティクスによる学習効果で利用するほど効果を発揮

 

○ベターミーの利用シーン

がん検診、特定健診、予防接種、納税督促、防災、マイナンバーカード交付申請、新型コロナウイルス感染症に対する正しい行動知識の習得など

 


 

事業開発者の思い


ケイスリー株式会社 取締役 片岡 和人さん

 

ベターミーが自治体と市民とのコミュニケーションと行政サービスを変える!

近年では行政が抱える課題も範囲が広がり、課題解決の難易度が高くなってきています。また、人手不足や財政の問題もあり、自治体の力だけでは解決が難しい場合もあります。そうした場面に、当社は様々な角度から解決策を提示。浦添市のケースでは「ベターミー」を活用していただきました。

ベターミーは、データアナリティクスとナッジ理論を活用した、自治体による市民向けコミュニケーションプラットフォーム。個々の市民のデータを分析し、誰に、どのタイミングで、どのようにメッセージを送信すればよりよい行動につながるかということを考え、働きかけを実際に行うツールです。浦添市では、その特徴が「大腸がん検診」という場面で活かされました。

地域の課題に対し、ベターミーは様々なシーンで活用できます。例えば特定健診受診率や予防接種実施率の向上、納税督促、防災情報、マイナンバーカード交付申請の呼びかけなどです。加えて、新型コロナウイルス感染症に対する正しい行動知識の習得などにも活用可能です。はがきでの通知と比較してもSMSコストは格段に安く、手軽に何度でも配信可能。属性に応じた最適な文面を送信することが可能です。さらにデータアナリティクスを駆使し、回を重ねるごとに学習効果が発揮され、精度が高まるというメリットもあります。

現状は、自治体様と共通目標を設定した上で、当社も最大限の支援をしながら進めています。データ分析やナッジ理論にもとづく文面の作成も当社で支援をさせていただきますので、運用に関して自治体側の負担は少なくなるように努めています。

浦添市での成果は前述の通り大きな成果を上げることができました。従来手法による対象者と比べて、本事業で受診勧奨を行った対象者では、2倍以上の受診率を達成できました。特に受診率が低い過去大腸がん検診未受診者に関しては、従来手法では3%弱の受診率ですが、本事業では10%以上の受診率を達成できました。

行政サービスを工夫すれば、その結果として市民の行動も有益な方向へ向かい、社会がよりよくなります。これを実現する仕組みを作ることが私たちのミッションです。地域の課題解決を、ぜひ一緒に進めていきましょう。

なお、浦添市の事例ではSMSを活用しましたが、ナッジ理論を活用できれば、例えばチャットツールなど、様々な手段での告知も可能です。スモールスタートで、業務や対象者を絞ってクイックに始めることもできます。まずは気軽にお問い合わせください。

 

ベターミーの実証実験を受付開始!

ベターミーの実証実験を行う自治体を募集します。検診受診の勧奨をはじめ、自治体からの啓発、督促、調査など様々なシーンで試行可能です。詳しくは下記までお問い合わせください。

お問い合わせ

ケイスリー株式会社

TEL:03-6260-9532
住所:〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西1-33-6 JPnoie恵比寿西1F co-ba ebisu内
E-mail:contact@k-three.org
担当:片岡

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