2020-05-12(火曜日)
福岡県 福岡市

在宅ケアに関わる多職種が情報を共有し要介護者やその家族に、より質の高いケアサービスを。

要介護者を支援する専門職の手間と時間を、ICT技術で削減。

全国の自治体が、いわゆる2025年問題(※1)に向けて厚生労働省が示した「地域包括ケアシステム」の構築を急いでいる。福岡市の場合も、20年後には総人口のおよそ3分の1を高齢者が占めると推計されているため、対策を模索していた。

「在宅ケアを必要とする高齢者が急増すると、家族や医療・介護関係者など“支える”側の人材が不足するのは明らかであり、このような関係者の負担を軽減し持続可能とするための取り組みが必要でした」と、福岡市保健福祉局総務企画部政策推進課の真壁 愛子さん。

※下記はジチタイワークス特別号 May 2020(2020年5月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供](株)日立製作所 公共システム営業統括本部

要介護者のケアは、ケアマネジャー(以下、ケアマネ)が策定したケアプランに沿って行われるが、どの程度の介護サービスを利用できるかは「介護認定審査会」の結果によって異なる。在宅医療を受けている高齢者の場合は、医療の内容も踏まえてケアプランを策定する必要があるため、担当医師や看護師などと連絡を取り合うことも多い。ところが、それら要介護者に関する情報の多くは、電話やファックス、区役所での書類閲覧などでやり取りされており、関係者らは多くの手間と時間を要していた。

「ケアノート」による情報共有でサービスの質的向上もめざす。

そこで同市は、ケアサービス関連の情報をICT技術によって共有化し、医療・介護関係者の負担を減らす検討を平成26年頃から開始。プロポーザルを実施して「日立製作所」をベンダーに選定し、平成27年度にシステムの構築を始めた。日立製作所との協創で、平成28年10月から運用をスタートした在宅連携支援システム「ケアノート(※2)」は、在宅ケアを必要とする対象者(登録高齢者)の情報を、医療・介護関係者および対象者の家族の間で共有できるシステムだ。

要介護認定情報やバイタル情報などが共有情報の基本項目だが、情報セキュリティ面が強固でなければ対象者の同意を得にくい上、安全に運用することもできない。そこでケアノートは、厚生労働省が定めるガイドラインに準拠したデータ暗号化やウイルス対策、情報閲覧の自動制限などで安全性を確保。関係者らは時間や場所を気にせず、情報の確認および入力ができるので、事務負担の軽減が見込める。

特にケアマネは、電話や訪問による確認作業が省略される分、大幅な時短が可能だ。また、写真や動画も共有でき、SNSのチャットのような機能を使えば、遠方に住む家族も対象者の日々の生活状況やケアの様子を知ることができる。ケアサービス内容の確認や追加・変更を行う「サービス担当者会議」の日程調整も、チャット機能によって関係者間で一斉に共有でき、連絡漏れなどのミスを防げるようになった。「必要な情報がケアノート上で確認・共有できることで、時短だけではなく多職種間の連携が緊密になり、これまで以上に質の高い在宅ケアが提供できることをめざしています」と真壁さん。


福岡市 保健福祉局
左:高齢社会部 介護保険課 介護認定係長 板本 忍(いたもと しのぶ)さん
右:総合企画部 政策推進課 政策推進係長 真壁 愛子(まかべ あいこ)さん

バージョンアップで利便性が向上。3年半で登録者数は800倍に!

運用開始当初、登録高齢者数30人・利用事業所54カ所だったケアノートだが、取材時(令和2年3月)には登録者約2万4,000人・利用事業所約250カ所に拡大。「事業所向けの説明会や利用促進キャンペーン、区役所でのチラシ配布など、利用者増加の要因はいくつか考えられます。その結果、利用を始めたケアマネさんが口コミで広めてくれた影響も大きいですね」。また、同局高齢社会部介護保険課の板本 忍さん曰く、「直近の統計で、福岡市内の要介護者数は約6万7,000人にのぼることから、システムへの登録高齢者・利用事業所数は今後も増え続けると予想しています」。

“いつでもどこでも”の利用環境を拡げるため、同市は令和元年7月、システムのバージョンアップを実施。PCだけでなくスマートフォンやタブレット端末でも使えるようにした。一方で、市が発行する電子証明書をインストールした端末でしか情報を閲覧できないようにし、セキュリティを強化。また、認定審査会の2日後だった要介護認定情報の公開を翌日公開に短縮し、ケアプラン策定がよりスムーズに行えるよう改善した。さらに、情報共有がレセプト(診療報酬明細書)ベースの自動設定になったため、登録高齢者が受診・利用している医療機関や介護事業所であれば、ケアマネが手動で設定(招待)をしなくても、ケアノート上の「支援対象者コミュニティ」に参加できるようになったという。

現在は、ケアマネの利用が中心であるが、今後は「医療機関や特別養護老人ホームなどの高齢者施設にも幅広く参加・利用してもらえるよう工夫し、関係者の負担軽減はもちろん、高齢者を支える医療・介護サービスの一層の充実をめざしたい」と、システムの普及啓発を進めていく計画だ。

※12025年問題:約800万人の「団塊の世代(昭和22~24年生まれ)」が、2025年までに75歳以上の後期高齢者となることで、国民のおよそ4人に1人が後期高齢者となる。それにより、医療及び介護の需要が一気に増加するほか、社会保障費の増大が懸念される問題。
※2ケアノートは、福岡市が構築した在宅連携支援システムの愛称。

Solution■課題解決のヒント&アイデア

ケアノート利用(システム導入)のメリット


福岡市ケアノート ホームページ
https://carenote.city.fukuoka.lg.jp/index.html

●時間や場所を気にすることなく家族や専門職間での情報共有が可能になる。
●区役所に行かなくても要介護認定結果や主治医意見書などが閲覧可能になる。
●区役所に電話しなくても要介護認定審査の進捗状況が確認可能になる。
●支援対象者の情報を入力しなくても福岡市の持つ登録高齢者の基本情報などの行政情報が閲覧できる。

01ICTへの“拒否反応”を払拭するため説明会や利用促進キャンペーンを実施。

運用から1~2年が経過しても、ケアノートの利用事業所数は伸び悩んでいた。というのも、「ICT活用」と聞いただけで「難しそう、使いこなせない」「インターネットで個人情報をやり取りするのは危険なのでは?」と感じるケアマネが少なくなかったからだ。そこで同市は平成30年11月から約1カ月間、介護事業所向けのシステム説明会や、初期設定などを市職員が行うキャンペーンを実施。苦手意識や拒否反応の払拭に力を入れた。実際に使って利便性を理解すると、口コミで周囲に利用を薦めるケアマネも増えていったという。


保健福祉局のみなさん

02“要介護の一歩前”から登録を呼びかけることで登録者の利便性が高まり、利用率も増加へ。

運用当初は対象を要介護者としていたが、要介護に移行する可能性が高い要支援者に対象を拡大し、平成30年6月より要支援者のケアプランを策定する市内57カ所の「いきいきセンターふくおか(地域包括支援センター)」でケアノートの利用を開始。いきいきセンターの協力や上記キャンペーン(01)等が奏功し、平成30年の夏頃から登録高齢者・利用事業所ともに増加。「ほかの事業所のケアマネさんからケアノートのことを聞き、保健福祉局に問い合わせしてくる事業所も増えました」と真壁さん。

03事務業務を1カ所に集約し、認定をスピードアップ。電話での問い合わせや窓口対応など、職員の負担も軽減。

将来の利用者数の増加に対応するため、平成31年1月、福岡市中央区に「福岡市要介護認定事務センター」を設立。「それまで7カ所の区役所で行っていた要介護認定事務を、同センターに集約してスピードアップしました。また、ケアノートの利用者拡大効果により、要介護認定結果の問い合わせ電話も約半分に減りました。さらに、従来は区役所に持参しなければならなかった要介護認定申請書もセンターへの郵送で受け付けるようにしたことで、ケアマネさんの一番のニーズである“少しでも早く認定結果を出してほしい”をかなえることができました」と板本さん。

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(株)日立製作所 公共システム営業統括本部

https://www.hitachi.co.jp/app/chiiki_care/

住所:〒140-8512 東京都品川区南大井6-23-1日立大森ビル

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