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校務DX、進んでいますか?成功事例から学ぶ導入のポイントを解説。

教職員が教育活動に専念するためには校務の効率化が欠かせない。そのカギとなるのが「校務DX」だ。この記事では、校務DXの概要から、導入の背景、実践のポイント、さらには各自治体の事例やすぐに取り入れられるヒントまで幅広く紹介する。無理なく始められる工夫も紹介しているので、校務改善の一歩としてぜひ参考にしてほしい。

【目次】
 • 校務DXとは?
 • 校務DXが必要とされる背景とは
 • 校務DXのポイントは?
 • 絶対役立つ!校務DX現場からのヒント集
 • 小さな積み重ねが大きな改善に。業務プロセス全般を見直そう

※掲載情報は公開日時点のものです。

校務DXとは?

教育現場の業務は主に、「児童・生徒の学習指導や授業準備に関する業務」と「学校の運営・管理、事務作業などの校務」に関する業務の2つに分けられる。

近年、後者の「校務」においてICTを活用し、業務を効率化する取り組みが進んでいる。このような校務のデジタルトランスフォーメーション(DX)のことを「校務DX」と呼ぶ。校務DXの主な目的は、教職員の業務負担を軽減し、教育の質を向上させることにある。

例えば、学級だよりのペーパーレス化や、出欠連絡を専用アプリで管理できるようにするなどの取り組みが進んでいる。

授業の様子

校務DXが必要とされる背景とは

文部科学省は、教職員の働き方改革の一環として校務DXの推進を提唱している。ここでは、校務DXが必要とされる背景を詳しく解説する。

教職員の働き方改革

教育現場では、教職員の長時間労働が大きな問題となっている。令和4年の文部科学省の「教員勤務実態調査」によると、1日当たりの平均在校時間は小学校教諭で10時間、中学校教諭で11時間を超えている。前回調査(平成28年)から比較するとやや改善傾向にあるものの、依然として長時間勤務の教師は多い状況だ。これを解消するためには、業務のデジタル化を進め、効率化を図ることが不可欠である。
 

より効果的な教育活動を行うため

教職員は授業指導に加えて、成績処理や保護者対応、会議資料の作成など、多岐にわたる校務を担っており、その業務量は非常に多い。そのため慢性的な長時間労働が発生しやすく、教育活動に集中する時間が十分に確保できない現状がある。

こうした課題を解決する手段として校務DXが注目されている。校務DXは、これらの業務をデジタル化・効率化することで教職員の負担を軽減し、より質の高い教育活動にリソースを集中させることを目的としている。

校務DXのポイントは?

校務DXを進めるには、ペーパーレス化、クラウド化、セキュリティ対策の3つが重要になる。以下にそれぞれのポイントを解説する。

ペーパーレス化

校務DXの第一歩として、多くの学校がペーパーレス化を推進している。例えば、北海道旭川市立緑が丘中学校では、以下のような取り組みを実施している※。

●職員会議のペーパーレス化
職員会議ではMicrosoft OneNoteを使用し、資料のデジタル化を進めている。データの編集もOneNoteで操作でき、会議時間が短縮され、効率化が図られている。

●保護者アンケートのデジタル化
保護者面談の日程や各種調査などのアンケートをGoogleフォームで回答できるようにしている。集計もデジタル化し、効率化につながっている。

●進路の案内や入学体験案内もWEBに一元化
Googleサイトを活用してホームページのようにWEB上で発信できるようにしており、保護者や生徒がいつでも情報にアクセスできる。進路日程や体験入学のお知らせなど、これまで案内文書の作成と集計作業に追われていたが、WEBで一元管理が可能になった。

これまで紙ベースでの資料を印刷・配布していたが、作業にかかる手間が省け、学校の業務負担の軽減にもつながったという。

※参照:文部科学省/mextchannelの公式YouTube「校務DX -ICT活用による校務の効率化-(リーディングDXスクール実践事例)

ペーパーレス化
 

校務支援システムのクラウド化

従来、教務管理システムや学習管理システム、教職員間の情報共有ツールなどの校務支援システムは、校内サーバー上で運用されるのが一般的だった。しかし、この方式では職員室など特定の場所に設置された専用パソコンからでなければアクセスできず、柔軟な働き方が制限されていた。

クラウド化を進めることで、場所を選ばずどこからでもシステムにアクセスできるようになり、校務の生産性が向上する。加えて、災害時にも安全にデータを保管・活用できる点や、更新・保守が容易になりシステムの安定性が高まる点も大きなメリットだ。

自治体が共通のクラウドサービスを採用すれば、教職員が異動しても環境を変えることなく、同じICT環境で校務を継続できるようになる。これは人事異動の多い教育現場において、業務の継続性と効率化の両立を実現する上で有効な手段である。
 

セキュリティ対策

クラウドサービスの導入にあたっては、文部科学省が策定した「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を確認しよう。特に、個人情報の管理やアクセス制限、データのバックアップ体制の整備が不可欠だ。

このように、ペーパーレス化と校務支援システムのクラウド化により、教職員は業務に集中する環境を確保できる。クラウド化にはセキュリティ対策が必須だ。安全性を確保しながら校務DXを推進することで、学校運営の安定性が向上する。

役立つ!校務DX現場からのヒント集

ここからは各自治体が実際に取り組んでいる校務DXの具体例を紹介する。現場での工夫や成果から導入のヒントを得てほしい。

福岡県:ICTのちょっとしたヒントを動画で解説

福岡県教育センターが提供する「ICTお困り解決ちょっと動画」は、教職員が直面するICT活用の課題を解決するための動画コンテンツを配信している。

動画では、Zoomの画面共有やICTを活用したテストづくり、通信環境について学ぶことができる。さらに、テキストマイニングを活用したデータ分析の手法や、Googleドライブやスプレッドシートの効果的な使い方など実践的な内容も充実している。デジタルツールの導入に不安を感じる教職員にとって、短時間で学べるコンテンツは頼もしい味方となるだろう。
 

神奈川県:小・中学校ですぐ使える活用事例を共有

神奈川県立総合教育センターが公開している「ICTすぐ使えるTips(活用事例)」は、県内の小・中学校で実際に行われているICT活用の取り組みを分かりやすく紹介している。ICTを活用した授業支援、クラウド上での教材や連絡資料の共有、さらにはデジタル教材の作成・活用法など、すぐに取り入れられる実践例が多数掲載されている。

加えて、Google Classroomやスプレッドシートの活用法を解説する動画コンテンツも用意されており、ICT初心者の教職員にも分かりやすく役立つ内容となっている。他校の工夫やノウハウを学ぶことで、校務の効率化や授業改善への新たな視点を得ることができる。
 

石川県:「業務改善取組事例集」を発行

石川県教育委員会が発行した、学校現場における「業務改善取組事例集」では、多忙化する学校現場の業務を見直し、教職員の働きやすさと教育の質の向上を両立させるための実践例が紹介されている。

例えば、「マイ定時退校日」や「立ち会議」など勤務時間の工夫、ICT活用による採点ソフトやペーパーレス会議の導入、欠席連絡のWEBフォーム化など、現場の教職員が実際に行ってきた改善活動を具体的に紹介している。単にICTを導入するだけでなく、教職員の意識改革や職場環境の改善にも力を入れている点が魅力的だ。

小さな積み重ねが大きな改善に。業務プロセス全般を見直そう

校務DXは一度に進めるのではなく、小さな改善を積み重ねていくことが重要だ。例えば、アンケートや学級通信のペーパーレス化といった身近な業務から着手することで、スムーズに取り組みやすくなる。ICTの操作やクラウド化などの仕組みも、実際に使用するうちに慣れていくだろう。この記事で紹介した各自治体の事例を参考に少しずつ校務DXを進めていってほしい。

 

 

 

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