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会計年度任用職員とは?非正規職員のためのルールを理解しよう!

会計年度任用職員とは、地方自治体などで期限付きで雇用される職員のことだ。地方公務員法および地方自治法の一部が改正され、令和2年度から非正規職員の待遇や採用を適正化するために会計年度任用職員制度の運用が始まった。これまでの非常勤職員・臨時職員・パート職員は会計年度任用職員に移行され、昇給制度や休暇の取得など一部の待遇においてもルールが設けられている。本記事では会計年度任用職員の制度のほか、現状や課題についても詳しく解説する。自治体運営に欠かせない存在でもある会計年度任用職員について、理解を深めておこう。

【目次】
 • 会計年度任用職員とは
 • 会計年度任用職員の現状
 • 会計年度任用職員Q&A
 • 会計年度任用職員の課題とは?
 • 会計年度任用職員制度は始まったばかり

※掲載情報は公開日時点のものです。

会計年度任用職員とは

会計年度任用職員とは、令和2年4月の地方公務員法の改正で導入された非常勤の地方公務員のこと。フルタイムとパートタイムの働き方があり、従来の非常勤職員・臨時職員・パート職員で制度の趣旨に合致する者が会計年度任用職員に移行された。一般企業においては、契約社員やパートタイマー、アルバイトに当たる働き方。国や地方自治体の会計年度が4月1日から翌年の3月31日までと定められていることから、会計年度任用職員はその期間内で雇用(任用)されている。ただし、勤務成績が良好な場合は多くの自治体で公募なしでの再任ができる。以前は再任用は原則2回までとされていたが、令和6年6月に制限が撤廃され、現在は自治体の判断で上限なく再任用が可能となっている。会計年度職員の公募は自治体やハローワークのHPで行われている。

会計年度任用職員の現状

ここからは総務省が公表している調査結果から、会計年度職員の現状について解説していく。

人数

総務省が令和6年度に行った調査によると、全国で約66万1,000人の会計年度任用職員が働いている。また、会計年度任用職員全体の約4分の3を女性職員が占めていることも明らかとなった。

職種

一般事務、土木や清掃などの技能職、保育士や教員、看護師など、会計年度任用職員は様々な職種で活躍しており、全体の約3割は一般事務職として働いている。次いで「技能労務職員」が全体の13.8%、「保育所保育士」が8.5%を占めている。都道府県・指定都市・市区・町村の全ての団体区分で「事務補助職員」として会計年度任用職員を任用する団体が最も多く、1時間当たりの平均報酬額は1,118円だった。

会計年度任用職員とは?

種類

会計年度任用職員は勤務時間によってフルタイムとパートタイムの2種類に分けられる。フルタイムで働く人は7万2,000人で全体の10.9%、パートタイムの職員が58万9,000人で全体の89.1%を占めている。

※出典:総務省「会計年度任用職員の施行状況等に関する調査結果について」

会計年度任用職員Q&A

ここからは会計年度任用職員に関するよくある疑問について解説していく。

ボーナスや退職金はある?

フルタイム、パートタイムいずれの職員にも期末手当として在職期間などに応じたボーナスが支給される。これまで非常勤の地方公務員にはボーナスが支給されていなかったが、会計年度任用職員制度の創設により期末手当が支給されるようになった。令和6年度からは会計年度任用職員のボーナスがさらに拡充され、勤務成績などに応じた勤勉手当の支給も可能となっている。公務員のボーナスは期末手当と勤勉手当の2つで構成されており、会計年度任用職員のボーナスもそれに合わせることで格差是正が図られる。また、期末手当と勤勉手当に加えて、時間外勤務手当のほか、宿日直手当、休日勤務手当、夜勤手当も同様に支給される。

退職金(退職手当)に限っては、6ヵ月以上勤続したフルタイムの職員のみが対象となっている。

※出典:総務省「地方自治法の一部を改正する法律の運用について」

労働契約法の「5年ルール」は適用される?

会計年度任用職員には「5年ルール」が適用されず、更新を続けて5年以上働いても無期雇用には転換されない。民間企業では労働契約法にもとづき、契約社員やパート・アルバイトなどの有期雇用労働者が同じ職場で5年以上働いた場合、労働者の申し出により無期雇用契約に転換できる通称「5年ルール(無期転換ルール)」が適用される。しかし、公務員である会計年度任用職員には労働契約法が適用されないため、任期を終えた後も同じ職場で働き続けたい場合は再任用の手続きを行う必要がある。

これまで会計年度任用職員の公募なしの再任用は原則2回までというルールがあったが、令和6年6月に人事院が制限の撤廃を各省庁に通知し、総務省も会計年度任用職員のマニュアルから再任用の上限回数を削除した。現在は自治体により対応が分かれている状況で、再任用上限回数を撤廃する自治体と、そうではない自治体がある。

※出典:労働政策研究・研修機構「会計年度任用職員の再任用の上限見直しの検討状況を調査/自治労連」

副業は認められる?

パートタイムの職員には副業、兼業が認められている。副業が認められる業種や時間などについては自治体や部署によって規定が異なり、書類の届け出が必要な場合もあるため、任用者に事前に相談した上で副業を行うことをおすすめしたい。フルタイムの職員については一般の公務員と同じく服務規定があるため、副業や兼業は原則禁止となる。しかし、こちらも自治体によって対応が異なるため、任用されている自治体の服務規定や職場の方針をしっかり確認しておこう。

会計年度任用職員とは?

会計年度任用職員制度の課題とは?

会計年度任用職員制度は新設されてからまだ間もないため、公務員の間での格差是正については依然として様々な課題がある。

勤務時間のわずかな差でパートタイムに?

総務省が令和5年度に実施した調査では、常勤職員との勤務時間の差が1日あたり15分しかないにも関わらず、パートタイムとして任用されている職員が一定数いることも明らかになった。総務省は、フルタイム勤務とすべき業務量がある職について、パートタイム会計年度任用職員として位置づけること自体を目的に、勤務時間をフルタイムよりわずかに短く設定する状況は適切ではないとして任用状況を見直す必要性を指摘。具体的な業務内容や時間外勤務の有無など、勤務実態を把握した上で必要に応じてフルタイムでの任用を進めていく方針だ。

※出典:総務省「令和6年度 会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査結果」

フルタイムとパートタイムに格差がまだある

会計年度任用職員の間でも、フルタイムとパートタイムには依然として格差があり、さらなる待遇の改善が待たれる状況だ。現状では退職手当が支給されるのはフルタイムの職員に限られており、パートタイムには退職手当が支給されていない。

年収が下がってしまうケースも

会計年度任用職員制度が導入されたことで、かえって年収が下がってしまうケースもある。これまで非正規職員に対して独自に高い報酬を設定していた自治体では、賃金の計算方法に明確なルールができたことで職員の年収が下がるといった問題も発生。会計年度任用職員の賃金は常勤職員の初任給月額を参考とするため、資格を持っていても収入が増えにくいことも問題となっている。

会計年度任用職員とは?

会計年度任用職員制度は始まったばかり

会計年度任用職員の制度は令和2年度にスタートしたばかりの制度。これまで自治体によって運用が異なっていた非正規職員の待遇を全国で統一し、公務員の中での格差を是正することを目的に導入された。しかし、依然として正規職員との格差や会計年度任用職員の間での格差が生じるなど、多くの課題も抱えている。今後、さらなる格差是正のため見直しが進むと考えられる。自治体を運営する上で欠かせない存在である会計年度任用職員について、この制度の行く末を注意深く見守っていきたい。
 

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