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商店街活性化で地域の魅力を発信!10個の成功事例から学ぶグッドアイディア

全国的に商店街の衰退や空き店舗の増加が地域の課題となっている。

少子高齢化や大型ショッピングモールの進出、ネットショッピングの普及など、商店街を取り巻く状況は厳しい。そうした中で、商店街のにぎわいを取り戻し地域活性化につなげようと、商店街活性化の取り組みも進む。

全国各地の成功事例からいいアイディアを学び、自分の地域の商店街活性化にぜひ役立てたい。本記事では商店街が衰退する理由や、国の支援策に加えて、商店街活性化のアイディアと全国の成功事例について詳しく紹介する。

【目次】
 • 商店街が衰退する理由とは

 • 国の支援策「商店街活性化法」とは
 • 商店街活性化のアイディア
 • 商店街活性化に成功した事例10をカテゴリ別にご紹介
 • 商店街の活性化は地域の活性化に直結する!

※掲載情報は公開日時点のものです。

商店街が衰退する理由とは

少子高齢化による地域経済の縮小や商店の後継者不足といった人口問題に加えて、大型ショッピングモールやネットショッピングの普及による買い物客の購買スタイルの変化など、商店街を取り巻く状況は厳しく商業機能が低下した商店街も多い。
商店街が衰退する理由はいくつかあり、複合的な要因が関係すると考えられている。

少子高齢化による地域経済の縮小や商店の後継者不足といった人口問題に加えて、大型ショッピングモールやネットショッピングの普及による買い物客の購買スタイルの変化など、商店街を取り巻く状況は厳しく商業機能が低下した商店街も多い。

空き店舗の増加

中小企業庁が令和4年3月に発表した「商店街実態調査報告書(※1)」によると、1つの商店街の空き店舗の数は平均5.49店で、商店街の中での空き店舗の割合は13.59%となっている。空き店舗が10%以上を占める商店街は全体の43.3%で、前回の調査が行われた平成30年よりも2ポイント増加した。こうした調査からも、全国の商店街で空き店舗の増加が続いていることが分かる。 

※1出典:中小企業庁「商店街実態調査報告書」

店主の高齢化・後継者不足

同じ調査では商店の廃業の理由として、店主の高齢化が最も多い68.1%を占める結果となった。商店を経営する店主の高齢化が進み、商店の継続が難しくなっていることも大きな課題だ。 

さらに、現況の商店街が抱える理由として最も多く挙がっているのは「経営者の高齢化による後継者問題」で、72.2%の商店街がこの問題を挙げている。後継者問題への対策を講じている商店街は極めて少なく、「対策を講じていない」と答えた商店街が96%を占めた。ほとんどの商店街で後継者不足に悩んでいるものの、有効な対策ができずにいるのが現状といえる。 

衰退の理由がある一方で、街の中心部や駅の近くなど便利な場所にある商店街も多く、商店街がにぎわうことで地域コミュニティの再生や地域の魅力向上にもつながることから、これまで商店街が担ってきた商業機能のほかにも、アクセスの良さを活かした新たな価値の創造が期待されている。

国の支援策「商店街活性化法」とは

国の支援策「商店街活性化法」とは

衰退する商店街を支援しようと、平成21年8月に「商店街の活性化のための地域住民の需要に応じた事業活動の促進に関する法律(地域商店街活性化法)(※2)」が施行された。事業計画を作成して経済産業局の認定を受けると、補助金や無利子融資などの支援が受けられる。

※2出典:中小企業庁「地域商店街活性化法について」

1.地域のニーズに沿った空き店舗利用を支援

空き店舗対策として土地譲渡所得の1,500万円特別控除が設けられている。税制措置を行うことで商店街内の遊休土地の譲渡を促進する狙いがある。

2.商店街の意欲ある人材を育成・確保

商店街の活性化を図る人材支援として、中小企業基盤整備機構が原則無料でサポート事業を行っている。

専門家を派遣して助言を行う「巡回型支援」と、複数の専門家で構成するプロジェクトチームによる伴走支援「パッケージ型支援」の2種類がある。 

3.ソフト事業も含めた商店街活動への支援を強化

商店街の活性化を目的としたソフト事業でも補助金や融資が受けられる。

高齢者・子育て支援、宅配サービス、地域イベント、商店街ブランド開発などがこれに該当する。 

商店街活性化のアイディア

低コストで取り入れられる、商店街活性化のアイディアを見ていこう。

スタンプラリーの実施

スタンプラリーの実施

商店街の店舗を回り、スタンプを集めるスタンプラリーを実施する商店街も多い。商店街の中で買い物客が回遊することを狙って行われ、イベントの開催にかかるコストも少なく済むため定番のアイディアとして全国各地の商店街で取り入れられている。

商店街を100円ショップに!

商店街全体を100円ショップに見立て、各店の店先に100円商品を用意する「100円商店街」。平成16年に山形県新庄市の南本町商店街で始まり、その後全国の商店街に波及しているイベントだ。新規顧客を各店内まで誘導し、まち全体を回遊させる取り組みとして人気を博している。 

学生と提携したイベントの開催

学生と提携したイベントの開催

全国の商店街に広がっている取り組みとして、学生と連携したイベントの開催も定番だ。

東京都品川区の戸越銀座では、立正大学の学生たちと協力して商店街の定番みやげ「戸越銀座コロッケ」を開発。戸越銀座を「コロッケのまち」として売り出すプロモーション活動も行い、学生がギフトボックスのデザインや販売店のマップ作製、のぼりの作成にも携わった。こうした連携は全国で行われており、若者ならではの発想やSNSでの宣伝活動が効果を発揮する事例もある。学生との連携そのものが取り組みに対する付加価値を生み、メディアにも取り上げられやすいアイディアとして人気がある。 

商店街活性化に成功した事例10をカテゴリ別にご紹介

ここからは商店街活性化に成功した全国の事例を、カテゴリ別に見ていこう。

商店街の空き店舗を活用

商店街の中の空き店舗を活用した取り組みの事例を紹介する。

【北海道札幌市】子どもへの学習・食事支援で「頼れる商店街」になる

【北海道札幌市】子どもへの学習・食事支援で「頼れる商店街」になる

北海道札幌市の麻生商店街では、空き店舗を活用して平成25年に「へるすたでぃ・藤麻人(とまんと)」を開設。

ひとり親家庭の子どもを対象に、栄養バランスのとれた食事の提供と学習支援を行う場として、藤女子大学の学生が運営に参加する取り組みを始めた。平成26年から店舗名を「麻生キッチンりあん」に変更し、平成28年にはより広い空き店舗へ移転して「子ども食堂」を新たに開始した。

運営資金を捻出するために、オリジナルグッズや北海道各地の特産品を販売するイベントも定期開催している。食事や栄養は藤女子大学栄養学科の先生とゼミ生が担当し、調理面は地域のボランティアが活躍。学習支援は NPO法人 Kacotamが担当する協力体制で運営されている。 

【福岡県大牟田市】リノベーションを中心としたネットワークの形成と、まちのファンづくり

福岡県大牟田市の銀座通り商店街では、空き店舗のリノベーションを中心とする「街なかストリートデザイン事業」に取り組み、商店街の活性化に成功した。

空き店舗の改装にはプロの業者だけではなくアマチュアも参加する「DIYリノベーション」のイベントを実施。1号店には海外で経験を積んだシェフがイタリア料理店を新規出店した。その後も廃線になった路面電車を活用して「古くて新しい」をコンセプトにしたカフェ「hara harmony coffee」の開業や、マルシェの開催やワークショップの開催などを行う「マルシェのがっこう」を実施。新聞取材やSNSでの宣伝活動、クラウドファンディングを通じた資金調達が話題を呼び、商店街のファンや出店希望者を増やした。 

【群馬県前橋市】商店街有志による空き店舗を活用した若者の街なか居住の推進

群馬県前橋市の前橋中央通り商店街では、空き店舗を利用した学生用シェアハウス「シェアフラット馬場川」を整備して、商店街の有志が里親代わりのサポートを行っている。

学生用シェアハウスは、前橋工科大学と地元商店主による協働プロジェクトとして始動。若者離れが進んだ商店街に生活者の一員として学生たちを呼び込んだことで、日常的な賑わいを創出するとともに、学生の商店街・自治会活動への参加にもつながっている。 

若手や学生の活躍で商店街を活性化

若手や学生が活躍している事例を見ていこう。

【新潟県三条市】中心市街地拠点施設の一新で若者集客に成功

新潟県三条市の一ノ木戸商店街では、商店街の中にある拠点施設をリニューアルして「TREE」をオープンさせた。

「TREE」は古民家を改装した施設で、飲食店を中心に若者が関心をもつ構成になっている。商店街の和菓子店のコーヒーやケーキが味わえ、Wi‐Fiやコンセントを完備したコワーキングスペースとしても使えるカフェや、オリジナルハンバーガーやキャンプ料理を提供するレストラン、会議や勉強に使えるフリースペースも備えている。

拠点施設を中心に若者の集客が増え、商店街に集まる若者を中心に写真撮影会や写真展、着物での街歩きや空き店舗でのDJイベントなども開催された。若者が商店街に集まることにより、商店街の売り上げはアップし、新規出店者も増加。若手のメンバーが商店街に加わったことで、既存の店舗とのコラボ商品の開発やワークショップの開催など、新たなイノベーションも生まれている。 

【東京都目黒区】多くの個人店に着目し次世代へのバトンタッチを

【東京都目黒区】多くの個人店に着目し次世代へのバトンタッチを

東京都目黒区の都立大学商店街では、次世代への円滑なバトンタッチを目的に30~40代の若手を集めた「とりつじん実行委員会」を組織した。

若者の創造的なアイディアを軸に「あえて商店街らしくない商店街事業」を要請し、予算と権限を与えることで商店街の人材の新陳代謝を図る取り組みだ。商店街の見どころを紹介するガイドブック「とりつじん」を作成したほか、ミニ講座「とりつ大学」、店舗同士が協力する回遊イベント「とりつイベント」を継続的に開催し、若手世代への商店街の継承に成功した。

こうした取り組みがメディアに取り上げられたことで、商店街の知名度向上にもつながった。

画像出典:都立大学駅前商店街のお店で働く個性的な人々を紹介するガイドブック「とりつじん」

【兵庫県神戸市】クリエーター達のアンテナショップ「TuKuRu」などで新たな「元町らしさ」の創出へ

【兵庫県神戸市】クリエーター達のアンテナショップ「TuKuRu」などで新たな「元町らしさ」の創出へ

兵庫県神戸市の元町商店街では、若手商業者が中心となった青年部商店街リブランディングに取り組んでいる。

生まれ育った商店街を活性化したいとの思いから開催した、関西のクリエーター約100人を集めたクラフトイベントがきっかけとなり、クリエーターたちのアンテナショップ「TuKuRu」をオープンした。この出来事を契機にほかの若手商業者にも意欲が生まれ、平成26年に青年部が発足。

「若者の街・三宮」に対して「大人の街・元町」をコンセプトに掲げ、「ワインアベニュー」や「灘の酒ストーリー」など酒に関するイベントを企画・開催した。平成27年には大学と連携して子育て支援施設「ぽかぽっぽモトロク」をオープン。子どもたちの遊び場や親同士の交流の場として、周辺地域の住民でにぎわっている。 

デジタルツールの活用で商店街を活性化

デジタルツールを活用した取り組みを紹介する。

【東京都板橋区】商店街の人流データを活用して生産性向上を目指す

【東京都板橋区】商店街の人流データを活用して生産性向上を目指す

東京都板橋区のハッピーロード大山商店街では、AI交通量計測システムを導入して商店街の人流データを分析している。

商店街を行き交う人の属性や時間帯などのデータを活用して、効果的な販売戦略や人員配置につなげる狙いだ。商店街に必要なデータのみを収集するシステムにすることで、導入コストを抑えることができた。

人の属性、自転車や車の交通量などに限定し、コストのかかる全身画像を取得する機能を省いたもの。人流データを見ることで、商店街の営業時間を見直したり来訪者の多い曜日を割り出したりなど、新たなビジネスチャンスの創出につなげていく方針だ。 

【京都府亀岡市】電子地域通貨「かめ Pay」による地域経済活性化

京都市亀岡市では地域経済活性化のため、デジタル地域通貨「かめPay」を導入した。市内の約100店舗が加盟する亀岡商業協同組合は、ポイントが貯まるプリペイドカード「ふれ愛カード」を運営していた商業団体。

従来のプリペイドカードからポイントを引き継げる「かめPay」を新たに導入し、既存の電子通貨よりも手数料を引き下げることで加盟店の増加を見込んでいる。さらに、その手数料の一部を使ってポイント還元キャンペーンを行うことも可能。亀岡市内で資金が循環する仕組みづくりに取り組んでいる。 

商店街のブランディングで知名度アップ

商店街のブランドづくりを行うことで、地域活性化を図る取り組みを紹介する。

【秋田県大仙市】様々な地域資源を商店街ブランド「毎日大曲」として売り出す

秋田県大仙市の花火通り商店街は「地元の親子三代揃ってお馴染みさんで暮らせる場所づくり」をコンセプトに、商店街のリブランディングに取り組んでいる。

アンテナショップ&カフェ「毎日大曲」を地域の交流拠点として整備し、30~40歳代の女性をターゲットにした新商品を「毎日大曲」の統一ブランドで開発。SNSを活用した広報活動も効果を発揮し、地域住民以外にも市外や県外から買い物客を呼び込んだ。 

【福島県会津若松市】空き店舗7割のシャッター街を来街者30万人超の人気商店街へ

【福島県会津若松市】空き店舗7割のシャッター街を来街者30万人超の人気商店街へ

福島県会津若松市の商店街・七日町通りでは、大正ロマンを感じさせる街並みづくりに取り組み、観光客が集まる商店街を実現した。七日町通りにはもともと蔵、木造商家、洋館など昭和初期以前の建物が残っており、その歴史的遺産である建造物の保存や修景を行い、統一感のある景観づくりに取り組んだ。

地道な活動を15年続けた結果、街並みを見ようと観光客が訪れるようになり、魅力ある店舗の出店につながる好循環が生まれた。地元の商店も協力して新たなニーズに応える新商品を開発するなど、商店街の魅力を高める取り組みが続けられ、来街者30万人超の人気商店街になっている。 

商店街の活性化は地域の活性化に直結する!

少子高齢化が進んだことで、商店主の高齢化や後継者不足、空き店舗の増加など商店街は様々な課題を抱えている。商店街の利用客の購買スタイルも変化する中、衰退する商店街も多い。

街の中心に位置する商店街のにぎわいを取り戻すことで、地域全体の活性化につなげようと、国の支援も行われている。商店街の活性化には地域のニーズをくみ取り、実情に合った事業計画を立てることが必要不可欠だ。全国の商店街の成功事例からヒントを得て、自分の地域の商店街活性化につなげたい。

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