郵送請求キャッシュレスサービス(東京都練馬区)
全国で行政サービスのデジタル化が進んでいる中、その隙間に取り残されてしまう住民もいる・・・
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法人による住民票請求のオンラインサービス(東京都東村山市)
住民サービスの向上と、持続可能なまちづくりを目指し、業務のDXや官民連携を積極的に進めている東村山市・・・
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※下記はジチタイワークスVol.35(2024年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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郵送請求キャッシュレスサービス
全国で行政サービスのデジタル化が進んでいる中、その隙間に取り残されてしまう住民もいる。練馬区ではそうした人たちにもサービスを届けるため、新たな取り組みにチャレンジしようとしている。
練馬区
左:情報政策課 DX推進担当係長
下澤 大(しもざわ まさる)さん
中央:戸籍住民課 窓口サービス担当係長
丸山 和子(まるやま かずこ)さん
右:戸籍住民課 主事
石村 紅(いしむら べに)さん
住民・職員ともに非効率な定額小為替の利用を見直す。
同区は、政策展開を示す総合計画として令和6年3月に「第3次みどりの風吹くまちビジョン」を策定。同ビジョンの前段階として、前年度にはDX推進の基本的な考え方や取り組みを示した「DX推進方針」を策定した。この方針やビジョンにもとづき、デジタル化の施策を進めていったと下澤さん。「手続きのオンライン化やデジタルツールなどの活用による業務DXの取り組みを、全庁的に進めていきました」。
中でも必要性が高かったものの一つが、証明書などの郵送請求への対応だ。同区では、住民票・戸籍・税関係の証明書だけでも年間約7万件の取り扱いがある。申請者は、請求の際に証明書の交付手数料を定額小為替で支払わなくてはならない。そのため、郵便局へ行き、購入手数料も負担している。また、担当課は額面確認や金融機関での手続きなど、多くの時間と手間をかけなくてはならないという。さらに、申請内容に不備があると業務の負担は増す。「住民票だけでも、1日10件ほどの不備が発生します。その都度、申請者への電話確認が必要になり、電話がつながらなければ何度もかけ直すことになるのです」。
これらの問題の解消を目指し、同区はまずキャッシュレス決済が可能なオンライン申請の導入に着手した。
利用する住民の視点に立ち、便利さを届けるための選択。
令和5年8月から開始した証明書交付のオンライン申請は、別の課題が残されたままだったと石村さんは語る。「このオンライン申請にはマイナンバーカードが必要なため、カードを持っていない住民は利用ができません。また、その人たちは、コンビニ交付も利用できないのです。電子証明書を保有していない法人・士業も含め、カードを持っているかどうかにかかわらず、利用できるオンライン対応が必要だと考えました」。
情報収集を行う中で、「富士フイルムシステムサービス」の「郵送請求キャッシュレスサービス」を知った。このサービスでは、申請者がプラットフォームに登録を行い、請求番号を取得する。それを書類に記入して郵送することで、キャッシュレス決済の申請として手続きが進むという仕組みだ。マイナンバーカードや電子証明書がなくても利用でき、定額小為替も不要になるそうだ。同区ではこのサービスに注目し、検討を進めた。「導入自治体への問い合わせや、展示会で実際にシステムを操作して、使いやすさなどの調査をしました」。その結果、課題にマッチしていることが確認できた。こうしたプラットフォーム利用型での導入は前例がなかったが、契約や法務など関係部署への相談を繰り返し、準備を整えていった。
ともに挑戦する仲間を増やしDXの“X”の実現を目指す。
同区は、令和6年10月から同サービスの運用を開始。これにより、申請者側は定額小為替を購入する手間と、購入手数料の負担がなくなり、申請手続きの進捗がプラットフォーム上で確認できるように。区側も定額小為替の管理や金融機関での手続きが不要になるだけでなく、申請に不備があった場合は、チャット機能で連絡することが可能だ。
事前に庁内でデモを行った際には、職員からも歓迎の声が寄せられたという。「電話連絡が不要になることに驚く職員が多かったですね。やはり負担は大きかったのだと改めて感じました」。
将来に向けて掲げたビジョンをもとに、デジタルによる挑戦を続けた同区。丸山さんは「大事な税金を使うからこそ、住民にとって行政サービスの利便性を高めるものを導入したい」と力を込める。「こうした思いは職員共通。その意識を通じて仲間を増やし、新たな挑戦を続けることが大切だと思います」。また、下澤さんはDX推進担当の立場から、ここまでの歩みを次のように振り返る。「業務改革は日々の業務と並行して行うため、負担になることもありますが、とにかく一歩を踏み出さないと何も変わらない。この取り組みをきっかけに、今後は改革にあたるDXの“X”を所管課とともに進めていくつもりです」。
法人による住民票請求のオンラインサービス
住民サービスの向上と、持続可能なまちづくりを目指し、業務のDXや官民連携を積極的に進めている東村山市。人口減少社会を見据えて新たに取り入れたサービスについて、市長に取り組みの詳細を聞いた。
東村山市
市長
渡部 尚(わたなべ たかし)さん
自治体が抱える共通課題に突破口をつくるための挑戦。
東京のベッドタウンとして栄えてきた同市は、高齢化・少子化に向き合い、持続可能な行政サービスの実現を重要課題と捉えて様々な施策を進めている。中でも、職員数の減少と業務量の増加というジレンマに対しては抜本的な対策が必要と考え、官民連携とDXにとりわけ注力しているという。民間からの提案を積極的に受け入れている中、「富士フイルムシステムサービス」から「法人請求オンラインサービス」の開発に向けた話を聞き、多くの可能性を見出したそうだ。
法人による住民票の請求は、全国で年間約500万件※にのぼるといわれている。職員は郵送の請求に対して、仕分けや開封など手作業で対応。手数料の収受は定額小為替で行うため、法人・職員双方に手間がかかる。さらに1件につき5枚ほどの紙が必要になるため、総使用量は約2,500万枚に達するとみられ、環境負荷も高い。「こうした課題に対し、同サービスが解決への突破口になるのではと期待しました」と市長の渡部さん。令和3年度に実証実験、翌年には他自治体や法人も交えた検討ワーキンググループ(以下、検討WG)に参加。「サービスの内容が固まっていくのに伴い、日本を変えるインパクトのある事業だと考え、本導入を見据えたトライアルの参加を決めました」。
請求者の利便性向上だけでなく業務軽減やSDGsに貢献も。
同サービスは、事前に利用登録をした法人が、プラットフォーム上で住民票の第三者請求の申請を行う。自治体がそのデータの審査を行い、郵送で住民票を届ける仕組みだ。オンラインによる統一書式での申請なので、郵便物の開封などが不要になり、審査項目の把握もしやすくなるという。また、住民票の発行手数料は同社を通じて自治体へ支払われるため、申請ごとの定額小為替が不要になるそうだ。同市は令和6年3月にトライアルを開始。「書類確認などの作業が不要になり、約40%の業務削減になる見込みです。さらに定額小為替の購入もなくなるため、法人からも喜ばれているようです」。これらの効果に加え、紙の削減効果も大きい。同市は「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」に選定されており、持続可能な社会づくりに向けた意識が高い。ペーパーレスにも積極的に取り組んでいるため、市の方針と同サービスが同じ未来を目指していることを確信したという。
「当初は、法制度などでも障壁があり、スムーズに進んだとはいえませんが、実証実験や検討WGとステップを進める中で仕組みもブラッシュアップできた。“効率化により市民に向けた業務に力を注ぐことができる”という確信に変わっています」。
職員のDXマインドも高めつつ持続可能なまちづくりは続く。
民間と力を合わせ、未来への課題に挑戦した同市の取り組み。渡部さんは次のように総括する。「職員は業務で手一杯なため、以前は官民連携に及び腰な印象もありましたが、今回は同社の熱意もあって前向きでした。こうした変化も収穫です。とはいえ、私たちが本当に実現したいのは一気通貫での法人請求。ここを目指して今後も取り組んでいきます」。住民票は紙での発行が義務付けられているなどの制約も残るが、全国の自治体にこうしたサービスが広まり、法の壁もなくなる日が来ればと期待を込める。
また、全国への波及を目指しつつ、その目はまちの将来を見据える。「2050年までには日本の人口が3分の2ほどに減るといわれています。そうなると業務も今より少ない人数でまわさないといけない。そんな状況でも持続可能なまちをつくるためには、官民連携とDXは必須です」。ただし、単に官民が協業するだけでサービスが向上するというわけではない。互いに知恵を出し合える関係づくりが重要だと熱意を語る。「民間には、私たちが思いもつかないようなデジタルの活用法や、新しいソリューションなどがあります。当市はそうしたものを受け入れ、今回の取り組みのように官民共創で自治体の未来を切り開いていきたいと考えています」。
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