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「いまさら聞けない!自治体予算・会計の超基本」公務員から公務員へ、現場を学べる一冊

財政課で培った豊かな知見をもとに、保育課や障害福祉課などの現場で、数々の施策を展開してきた海老澤さん。特に保育課時代に行った「公設民営保育園の民間移譲」では、市の負担を1園あたり年間1億円ほど削減した上、運営法人にも毎年約400万円が支給されるスキームを構築。自治体・運営法人の両者にメリットを生む施策が評価され、「地方公務員アワード2023」を受賞した。
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本書は、予算や財政に精通した海老澤さんが「そもそも財政とは」という基本的な知識から、予算書の読み方や予算獲得のコツといった実践的な内容までを幅広く解説。特に「財政担当課を説得できない!」と悩む自治体職員にとって、事業提案をうまく進めるためのコミュニケーション術は必読の内容といえるだろう。

なぜ本を書こうと思ったのか、どういう人に読んでもらいたいのか、本書に込めた思いを聞いた。

※著者の所属先及び役職等は2024年11月公開日時点のものです。
※記事の掲載情報は公開日時点のものです。


【著者】
海老澤 功(えびさわ いさお)さん

東京都西東京市
健康福祉部 障害福祉課 課長


プロフィール
明治学院大学卒。大学を卒業後、民間企業に勤務。2000年、田無市役所(現:西東京市役所)に入庁。生活福祉課をはじめ、東京都市町村課への派遣や財政課、企画政策課を経験。その後、保育課に異動して「公設民営保育園の民間移譲」を成し遂げる。幼児教育・保育課を経て、現在は障害福祉課に勤務。

 

【書籍】
いまさら聞けない!自治体予算・会計の超基本 
(学陽書房)


【本の内容を要約すると?】

本書では、予算や会計など財政知識全般に不安を抱えていらっしゃる方に向けて、実務に役立つ情報をまとめています。予算の適用ルールや予算編成、財政課とのやりとりなど、知っていると役に立つもの、ためになるもの、そしてお得なものを中心に説明しています。

予算や会計、財政知識に自信がない職員に向けて、分かりやすく解説。

このような内容にした理由は、大きく分けて2つあります。

1つ目の理由としては、財政知識に関する体系的な理論や、根拠法の背景などについては、すでに優れた専門書や学術書が数多く存在します。しかし、予算や会計に初めて触れる職員向けに、平易な表現で分かりやすく解説された本は少ないと感じたためです。本書では、広く一般の職員に向けて、厳密な表現よりも平易な表現を優先しています。

2つ目としては、「地方公務員オンラインサロン by HOLG(※1)」や、「オンライン市役所(※2)」での交流の中で、新人職員ばかりか係長クラスの職員さんでさえ、予算や会計、財政の知識に自信がないケースが多いことを知ったからです。例えば、新しい事業を始めるために予算要求を行った際、事業については一生懸命考えたけれど“財政が厳しいから、このくらいで要求してみよう”と根拠なく金額を設定したために“全額査定カットされてしまった”という事例をよく耳にしていました。

※1 HOLG:地方自治体および地方公務員を応援するメディア。地方公務員限定の有料コミュニティ「地方公務員オンラインサロン」を運営。
※2 オンライン市役所:全国の公務員で運営する、公務員限定のオンラインプラットフォーム。

財政に関する基本知識から、予算に関する実務的な内容まで。

本編について簡単に触れさせていただきます。

第1章では、財政について解説します。担当課にいると、“財政課が現場の事情も知らずに予算を査定する”と思うことがありますよね。一方で、私たちは財政課の事情を知っているのでしょうか。予算についての相談などをするときに、わずかでも相互理解が生まれれば妥結点も見えやすくなるというものです。そのため、財政課がよく口にする“財政が厳しい”とはどういうことなのかを理解していきます。

第2章では、予算の使い方について説明します。予算などは関係ないと思っていた方も、読み進めていく中で事業が予算に影響されていること、そして自分たちの事業が予算の大きな流れの一部を担っていることが徐々に理解できていくと思います。私たちの給与も予算を通して支払われているのですから当然です。財政課や会計課がなぜ予算執行に口出ししてくるのか。その理由を知ることで、指摘の原因となっている事象を防ぐことができれば、お互いに気持ちよく仕事ができるようになるでしょう。

第3章では、予算のつくり方について触れていきます。担当している事業における自然増減などの将来動向はもちろんですが、改善や拡充、はたまた新規事業の創設などにも欲が出てくるでしょう。しかし、巷にあふれるのは“財政課に予算を切られた”“事業提案が通らなかった”というため息ばかり。皆さんも、モチベーションが下がってしまった経験があるのではないでしょうか。そこで予算計上の基本から、財政課の理解を得やすい計上の手法、議会の議決まで学ぶことで、予算計上におけるコミュニケーションの大切さを理解していきます。

第4章では、身近な予算から離れた応用編として、国が見込む地方財政や決算分析、財政破綻を防ぐ仕組みについて解説します。住民からは様々な要望があがってきますが、自治体の財政状況などを知るはずもなく、自分たちの要望を“何とかしてください”とあげてきます。その要望に対して、皆さんは“財政が厳しいので……”と説明したことがあると思います。住民からは“隣の自治体ができているのに、なぜ私たちのまちではできないのか?”と、すぐには納得していただけないこともあるでしょう。自治体の財政状況や他団体比較などについて、住民の方と建設的なコミュニケーションをとることで、納得してもらう必要があります。そのコミュニケーションがうまくいけば、皆さんの負担も大きく減るはずです。

財政課とコミュニケーションを取り、よりよい事業提案を。

財政課職員は特別な職員ではありません。一職員であり、私たちも明日には財政課に配属されるかもしれません。いがみ合うのではなく、同じ職員の仲間同士、予算などに関する知識を少しでも分かち合い、お互いの行動原理や背景を理解して、協力できることは協力し合うことが大切ではないでしょうか。また、住民とも建設的な意見交換を行うなど、より良い行政運営を目指しませんか。

予算・会計、総じて財政の知識に悩まれている多くの方々に本書をお読みいただくことで、住民の暮らしを支える自治体の仕事が一歩でも前進し、スムーズに進んでいくことの一助になることを願っています。
 

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