ジチタイワークス

愛媛県宇和島市

RPAの活用を広げつつ、デジタル化の意識も高める。

繰り返す定型作業を自動化するツール

国の方針もあり、自治体への導入が進むRPAツール。しかし“庁内での横展開が進まない”と悩む職員も多いのではないだろうか。宇和島市では、事業者のサポートを得て導入を進め、職員の意識改革にまで踏み込んだ動きをしているという。

※下記はジチタイワークスVol.34(2024年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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左から
宇和島市
企画政策部 デジタル推進課
主任 小島 佑貴(こじま ゆうき)さん
主任 長山 雄一(ながやま ゆういち)さん
 

ツールの定着と内製化を目指し、事業者との協働・分担を重視。

全国的なデジタル化の機運を背景に、業務見直しを前提として、定型作業の自動化ができるRPAツールの調達を目指していた同市。当時、導入に関して中心となって動いていた小島さんは「情報収集を行う中で、ツールの定着と内製化に着目していました」と語る。「導入後、いつまでも外部委託を続けるわけにはいきません。とはいえ、開発にはノウハウが必要なので、自治体と事業者の協働・分担が必要だと考えました」。

こうした趣旨で、令和2年度にプロポーザルを実施。寄せられた提案の中で、「オープン(旧・RPAテクノロジーズ)」が提供する「BizRobo!(以下、ビズロボ)」が目に留まったそうだ。一般的にRPAを動かすには、“文字入力”や“クリック”といった自動化したい動作を、具体的に示したシナリオが必要になる。ロボットはこのシナリオに沿って作業を行い、データの集計やグラフ作成、メールの送信などを実行する。同ツールなら、プログラミングの知識や経験がなくても、シナリオの作成が可能。手順をドラッグアンドドロップでフローチャートのようにつなげていくだけでできるそうだ。さらに、シナリオを動作させる際も、同じパソコンで別の作業をしていても動きつづけるバックグラウンド処理を得意としているという。また、同社はパートナー企業制を全国的に敷いており、導入から運用までを対面でサポートできる体制がある。同市への提案も、愛媛県松山市(まつやまし)に拠点を置くパートナー企業から行われたそうだ。「ツールを導入するだけでは活用の幅が広がらないので、庁内での定着を図れるようなサポート体制が必要でした」。これらの点も総合的に評価し、同ツールの導入が決定した。

初めて触れるツールの不安を、研修と啓発を重ねて拭い去る。

導入に先立ち、全庁の業務量調査を行い、試験運用の対象に4課を選定。「入力などの定型作業にリソースを割いている内容を選びました。こうした業務は負荷が大きい反面、職員はどう軽減できるか分からず、困っている場合が多いと考えたのです」。同ツールの導入に向けては、デジタル推進課が主体となり、事業者と協働で各業務のシナリオ作成を行った。ヒアリングシートを作成して業務内容を聞き取り、さらに対面で作業手順を確認したそうだ。

「推進課は原課の業務を深く知り、原課には導入効果を理解してもらう。机上の理論ではなく、一緒に考えることが大切だと当時から考えていました」。このような動きの中で、小島さんたちが留意していたのが“業務改善後の未来を示す”ことだったという。「ツールの使い方を伝えるのではなく、導入することで困り事が減り、業務がラクになると説明をしていました。そう伝えることで、原課の職員も導入後の状況をイメージしやすくなります」。その後、令和4年2月に「宇和島市DX推進計画」を策定。計画では、RPAについて令和4年度から6年度までの3年間で、“適用業務の拡充”を一つの目標として掲げた。こうして、庁内での活用に向けた本格的な動きが始まった。

まずは職員研修を実施したそうだ。事業者の力を借り、実際に同ツールを操作するハンズオン研修も行った。「ツールに初めて触れる職員も多かったのですが、マウスで操作できる使いやすさもあり、体験を通して不安はかなり解消されたようです」と振り返る。このような地盤固めをしつつ、現場導入を進めていった。

定量・定性効果を生むコツは、原課とのコミュニケーション。

まずは税務課の償却資産申告の審査業務を皮切りに、現場でRPAが動きはじめた。導入効果が出てくると、この手応えをもとに対象業務の拡大に取り組んだという。同市が令和5年12月に公表した効果検証では、同時に運用を始めたAI-OCRと合わせて、年間224時間の削減という試算が出た。

また、定性的な効果も大きいと長山さんは話す。「デジタルツールは正確なので、職員の“間違いは許されない”という心理的負担が軽減されます。子育て関連の資格更新や高齢者向けの予防接種など、一時期に集中する業務では、作業時間の削減にも貢献。“とても助かった”という声が届いています」。さらに、職員に起きた変化も見逃せない。「操作研修を受講した職員から、新規事業を立案するときに、RPAの活用を前提に業務フローを検討したいという相談が寄せられるようになりました。これは大きな前進だと感じています」。

もちろん、相談を受ける全ての業務に対応できる訳ではない。この点についても注意を払っていると付け加える。「RPAは人の判断が必要になる業務には向かないので、向き・不向きがあることを繰り返し説明しています。ただし、不向きだから断るのではなく、“業務のこの部分には適用できそうだ”といった代替案を出し、ともに知恵を絞るのです」。こうしたやりとりも含め、原課職員とのコミュニケーションが重要になるのだという。「現場の困り事に寄り添う姿勢が大切。一緒に悩む中でアイデアが生まれることもあるので、納得がいくまで話し合うことを大事にしています」。

※AI(人工知能)とOCR(光学文字認識)の読み取り技術を融合させ、紙に書かれた文字をデジタル文字に変換するツール

効率化の先の市民サービス向上を目指し、改革を進める。

令和6年時点でRPAの導入部署が増え、改善事例が生まれつづけている同市。また、原課でのシナリオ内製化に向けた人材育成も進めており、事業者の協力で、さらにワンステップ進んだ操作研修を毎年実施している。この研修会は、原課からの要望を吸い上げる機能も果たしているという。「研修の後、職員が自分の部署に戻ってから、どんな業務に適用できるかを提出してもらっています。私たちには業務の細かい部分が見えづらいため、この報告をもとに次の導入先を検討することができるのです」。

長山さんは次のステップに向けての意欲も見せている。「ビズロボは操作がしやすく、できることも多いので、普段やっている業務をある程度は再現できると思います。入力作業や職員の負荷が大きい業務など、解消できる部分はまだまだ多くあると思っています」。

また、小島さんは「RPAは汎用性が高く、デジタル化推進にフィットしている」と語る。「ツールの使い方や概念を学んでもらうというよりも、導入による業務の効率化は、結果として市民サービスの向上につながる、という意識を職員間に広めていくことが大切。今後も、庁内に向けてこうしたマインドセットを続けていこうと考えています」。

RPAを単なる業務自動化ツールとしてではなく、この導入をきっかけにデジタル化の意識向上にまで役立てようとする同市の取り組み。今後も原課と意見交換をしながら、新しいチャレンジを生み出しつづけていくことだろう。

RPAの特性を活かした宇和島市での活用例

入力・照合・抽出・データ作成など、パソコンで繰り返し行われる定型作業をRPAで自動化。住民対応などの職員にしかできない業務に向き合う時間を創出できるという。同市での導入業務と、その成果を聞いた。

 

そのほかの活用例

教育総務課 就学援助希望者リストの整理
市民課 自治会長専任届の処理業務
建設課 工事修繕・手数料見積依頼・執行伺い起票 など

 

導入で期待できること

1. “人にしかできない業務”に向き合う時間を創出

RPAが得意とするのは平準化された作業。こうした仕事が大量にある場合も、RPAが処理している間に、職員は住民と向き合う業務に集中できる。

2. ロボットが作業するのでミスが起きにくい

一定の条件下であれば“モレ・ムラ・ムダ”を出さないのがロボットの特性。長時間に及ぶ作業でも正確にやり遂げてくれる。

3. 職員の心理的負担の軽減にもつながる

個人情報などの機微なデータの照合作業などは、ミスが許されず神経を使うものだが、そうしたものをRPAに任せることで、職員のストレスを軽くできる。

利用者向けのサポートコンテンツ

導入や利用に関して不明な点を調べることができる、利用者向けWEBページ「My BizRobo! 」。利用者同士の情報交換や学習動画など、サポートコンテンツが集約されているという。

 

利用者向けWEBページ「My BizRobo!」

導入に向けての資料ダウンロードが可能

RPAが得意とする定型作業の具体的な内容や、導入の流れを紹介した資料のダウンロードが可能。申し込みはこちらから。ツールの詳細や導入についての具体的な相談はお問い合わせを。

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