給料や賞与から天引きされているのは税金だけではない。実は、税金よりも社会保険料の方が大きな負担となっているという。
今回は、社会保険料の仕組みや、保険料を抑える方法などについて、元・東京国税局職員のマネーライター小林 義崇(こばやし よしたか)さんに教えてもらった。
※本記事は、資産形成に対する理解を深めるための情報提供を目的としており、いかなる投資の推奨・勧誘を行うものではありません。
後編を読む 住宅ローンの金利はどう決まる?仕組みを徹底解説
解説するのはこの方
小林 義崇 (こばやし よしたか)さん
大学卒業後、東京国税局の国税専門官として、都内税務署や国税局などに13年間勤務。相続税調査をはじめ、確定申告の相談対応や不動産売買、証券取引にかかる税務も経験し、「お金持ちはなぜお金持ちになれたのか」社会のリアルを知る。退職後は、マネージャンルの記事執筆を中心に活動。
著書に、『すみません、金利ってなんですか?』(サンマーク出版)、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)などがあり、累計の販売部数は20万部超。
社会保険料の基本的な仕組みとは。
人が生活を続ける上で、病気やけが、老齢など、様々なリスクがあります。そうしたリスクに直面した際に支えになってくれるのが、「社会保険」です。社会保険には以下のタイプのものがあります。
[ 社会保険の種類と主な目的 ]
※小林 義崇さん提供資料より作成
公務員の場合、労災保険と雇用保険が適用されません。「健康保険」と「厚生年金」、そして「介護保険」(40歳以上の方のみ)の3つが、公務員の社会保険であることをまず押さえておきましょう。
社会保険料を引き下げる方法。
健康保険、厚生年金、介護保険にかかる社会保険料は、給料や賞与から天引きされています。この際、給料から引かれる社会保険料は「標準報酬月額」によって、賞与から引かれる社会保険料は「標準賞与額」に応じて計算されます。この2つの数値は、以下のルールで決定します。
標準報酬月額
原則として、毎年4月から6月に支給される報酬(基本給、諸手当など)の平均値にもとづき決定
標準賞与額
賞与支給額から1,000円未満を切り捨てた金額で決定
社会保険料の負担を抑えるには、標準報酬月額と標準賞与額を下げる必要がありますが、標準賞与額は単純に支給額で決まるので対策のしようがありません。一方、標準報酬月額については、以下の方法が対策になります。
1.残業を控えて4〜6月の給料を抑える
標準報酬月額は、毎年4から6月に支給される報酬に応じて決まり、これが原則としてその年の9月から1年間継続します。
つまり、標準報酬月額を左右する4〜6月の報酬が上がりすぎないように残業を控えることが、社会保険料を抑えることにつながります。
2.勤務先の近くに住む
公務員は通勤手当を支給されているはずですが、この通勤手当が標準報酬月額の計算に加味されます。そのため、勤務地の近くに住んで通勤手当を少なくすることで、標準報酬月額を抑えることが可能です。
3.配偶者を扶養に入れる
配偶者の年収が130万円未満であれば、社会保険の扶養に入れることができ、配偶者の社会保険料を負担しなくてもよくなります。また、年金においては「国民年金第3号被保険者」※という扱いになり、年金保険料の負担をせずとも将来の年金を受け取れます。
※国民年金の加入者のうち、厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収が130万円未満であり、かつ配偶者の年収の2分の1未満の人)
給付や福利厚生制度をきちんと活用する。
社会保険料の負担を抑える方法をお伝えしましたが、実際に行うとなると簡単ではないでしょう。標準報酬月額を下げるには、働き方や住まいの場所を変える必要があるからです。
また、標準報酬月額は将来の厚生年金の支給額にも影響することから、標準報酬月額を下げると、将来の年金が少なくなるデメリットがあります。
そのことを踏まえると、社会保険については、“保険料の負担を抑える”よりも、“受けられる給付をきちんと受ける”という意識が必要です。
例えば、健康保険の高額療養費を申請する、介護保険のサービスを受ける、といったことを忘れないようにしましょう。
さらに、公務員の社会保険を管理している共済組合は、福利厚生制度を用意しています。制度の内容は共済組合ごとに違いがありますが、例えば以下のような福利厚生制度があります。
・健康診断などの助成
・宿泊施設を利用する費用の助成
・住宅購入資金の貸し付け
・イベントなどのレクリエーション費用の助成
こうした制度は、主に皆さんが負担する保険料によって賄われていますので、できるだけ利用したほうがいいです。
筆者は東京国税局の職員をしていた頃、共済組合が実施する福利厚生に関わる業務を担当したことがあります。その部署に配属される前は、自分が福利厚生制度についてほとんど知らず、もったいないことをしていたことを自覚しました。
負担している社会保険料をムダにしないためにも、制度の仕組みを理解し、活用できるメリットは積極的に活用していきましょう。