現役公務員インタビュー
職員不足や行政需要の複雑化が叫ばれる中、官民連携の必要に迫られているのは庁内の全職員ではないだろうか。一方、現場では、何から手を付けていいか分からないとの声も上がっている。そこで、様々な連携事業に取り組み、実践経験を積んだ“つなぐ”達人3人にインタビュー。
連携の意義や地域・庁内外とのつながり方など、官民連携に取り組む上での基本となる心構えを聞いた。
【官民連携推進特集】
1人目の達人:兵庫県神戸市 長井 伸晃さん/官民連携の意義について聞きました!
2人目の達人:神奈川県川崎市 上仲 俊輔さん/地域とのつながり方について聞きました!
3人目の達人:神奈川県小田原市 白井 直士さん/庁内外のつなげ方について聞きました! ◀今ココ
※下記はジチタイワークスVol.30(2024年2月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
白井 直士さん
神奈川県小田原市(おだわらし)
経済部 産業政策課
しらい ただし:2021年に産業政策課へ異動し、任命を受けて渋谷区のフレキシブルオフィスへ単独入居。同居する企業との接点から、わずか2年半で7社の企業誘致、24の事業連携という成果を生み出す。
Q:民間事業者との接点はどうやってつくっていますか?
認知してもらうために名刺交換やイベントを活用。
市外企業と接点をつくり、企業誘致や連携事業につなげる取り組みとして、渋谷区のフレキシブルオフィス「WeWork」に入居しています。当市として初めての試みで、私自身も何から始めればいいか分からない状況。最初は自分を知ってもらうため、入居している企業に名刺を配ってまわりました。さらに、オフィス内で市をPRするイベントを複数開催。まずは、まちに興味をもってもらい、次のステップとして関係を構築して連携事業に結び付けるイメージです。PRで終わらせず、コツコツと関係性を築くことが大切だと思います。
当初は自治体しか知らない自分が、企業とやりとりできるのか心配でした。しかし、こちらがモチベーション高く仕事をしていれば熱意は伝わりますし、自治体担当者の印象は事業の広がり方に大きく影響します。例えば、自治体はスピードが遅いと思われていることが多いです。それを逆手に取り、企業からの相談事には、できる限りすぐに調べて返事をすることで、“この人となら仕事がスムーズに動く”というイメージをもってもらう。基本的なことですが、この小さな積み重ねが信頼関係の構築につながると思います。
そうして自分の認知度が高まって、当市の前向きな姿勢が知られると、自治体と何かタッグを組みたいという企業が自然と相談をもちかけてくれるようになります。まずは自分が広告塔になるのが大切だと思いますね。
Q:外部でつくったきっかけを庁内にどうつなげていますか?
日頃から庁内で情報収集をして担当部署のメリットを考える。
関係部署につなぐ場合に注意すべき点は、どんなにいい連携の提案であっても所管課にとっては、通常業務にプラスアルファの業務になるということです。多忙な中、提案をするとネガティブに捉えられかねないので、それを理解した上で、まずは前向きに聞いてくれそうな人やタイミングを見極めて話すようにしています。
ポイントは、ただ企業を紹介して終わりではなく、企業の営業マンになったつもりで提案内容の説明をすること。連携することで、担当部署にとって何がメリットなのかを織り込んで話すように工夫しています。事業が複数の部署にまたがりそうな場合は、官民連携を所管する部署に相談して、庁内へつなげられる話は取りこぼさないようにしています。
企業から提案や相談をもらった際に、いい連携ができるのか、どこにつなげば適切かを判断するためには、庁内の情報収集がカギになると思います。そのため私は、市の総合計画や予算書、イントラネットなどで、どの部署がどんな課題や思いをもっているかを見ています。すると、企業から提案を受けた際に、スムーズに進めることができます。情報さえあれば的確な判断ができるので、情報の収集方法を工夫することが大切ではないでしょうか。
入居を任命されたときの裏話を聞きました!
サイドストーリーに続く
このシリーズの記事
▶ 1人目の達人:兵庫県神戸市 長井 伸晃さん/官民連携の意義について聞きました!
▶ 2人目の達人:神奈川県川崎市 上仲 俊輔さん/地域とのつながり方について聞きました!