ICT技術を活用したまちづくり支援
自治体が抱える様々な課題に対し、ICT技術を活用した解決策を提案・実装支援している「NTT東日本」。かねてより、同社と協業で“DXによるまちづくり”を進めてきた調布市。令和4年から両者が開始した取り組みの、ねらいと展望を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.29(2023年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]NTT東日本
調布市
行政経営部 企画経営課
産学官連携担当
左:長井 彰吾(ながい しょうご)さん
右:片山 実祐(かたやま みゆう)さん
NTT東日本
左:松浦 佑季(まつうら ゆうき)さん
右:山下 裕也(やました ゆうや)さん
自治体の声をしっかり聞いた結果、課題解決の手段としてeスポーツを選択。
-両者の協業について教えてください。
N 松浦:当社の強みは東日本各地に支店があり、普段から自治体に足を運べる点です。密にコミュニケーションをとることで、自治体の生の声を聞き、その声を反映。地域の新たな価値創造に向け、伴走支援に取り組んでいます。同市とも、令和3年8月に調布スマートシティ協議会へ参画して以来、積極的な連携を図ってきました。
調 長井:令和5年度から市は総合計画において“共創のまちづくり”を掲げ、民間と協力しながら様々なチャレンジをしているところです。同社とは市民の包摂的な交流機会を創出する“eスポーツ”や循環社会への転換に向けた“ゼロカーボン”の取り組みを実施しています。
-自治体とeスポーツの組み合わせは意外です。
調 長井:当市の場合、各コミュニティ施設の利用状況が同じ属性やグループに偏っていて、市民の世代間交流が限定的であることが、以前からの課題でした。同社の提案によりeスポーツの魅力を知り、実証的に事業を開始しました。
N 山下:eスポーツは、もともとZ世代を中心とした若者文化で、実際に部活動支援やデジタル教育といったサービスも当社から提供しています。しかし、今回の同市との連携において活かすべき強みは「世代、性別、地域、障害の有無など、垣根を越えた包摂的な交流機会を創出する力」にあると考えました。
調 長井:令和3年度に実証的に開催した体験会では、人との接点に乏しい5歳から70歳代まで幅広い年代の市民が集まり、アンケートでは90%以上の満足度を得られました。この経験が、eスポーツの公共利用を考えるきっかけに。2年目を迎える事業ですが、引き続き広く多様な交流が続く仕組みを市に根付かせていきたいと考えています。
実証フィールドの見学を機に、新たな脱炭素の取り組みを実施。
-ゼロカーボンについても教えてください。
調 片山:当市は市議会とともに令和3年、脱炭素社会の実現に向け「調布市ゼロカーボンシティ宣言」を行っています。さらにデジタル化に対応した食育についても市として力を入れることに。具体的には超小型バイオガスプラントを利用し、学校給食の調理残菜※1から液体肥料を生成したり、再生可能エネルギーに還元したりしています。これらを“都市型循環モデル”と呼び、子どもたちが食の循環型サイクルを学んでいます。
また、ローカル5G実証ハウスで栽培したトマトを学校給食で提供。地産地消にも努めています。反響が大きく、夏には京都大学と連携し、エネルギー生産型資源循環に関する特別学習を実施しました。これらは、当市内にある「NTTe-cityLabo(エヌティティイーシティラボ)※2」の見学がきっかけで実現したものです。
N 松浦:この施設は、地域循環型社会の実現に向けた実証フィールドで、市長や職員の皆さんが何度も足を運んでくれました。当社が取り組む地域の課題解決に向けたソリューションを実際に体感してもらったことが、取り組みにつながったと思います。
※1 仕入れや調理過程を工夫し、最小限にするよう取り組む中で、やむを得ず出てしまう調理くずなど
※2 地域の課題解決に向けてNTT東日本グループが取り組むソリューションを体感できる施設
都市型資源循環モデルの取り組み
NTT東日本のまちづくりの強み
自治体との密なコミュニケーション
各地に支店をもち、地域住民の一員でもある同社社員が、当事者として自治体と密にコミュニケーション。
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課題解決・価値創造に向けた伴走支援
デザイン思考などを取り入れた解決策検討から実装、その後の運用までトータルにサポートし、地域の新たな価値創造を伴走支援。
これからも強固な相互連携により“共創のまちづくり”を推進する。
-取り組みに関して展望を教えてください。
調 長井:当市とNTT東日本グループとは、個別連携や産学官連携など、幅広い分野において強固な連携関係にあると思っています。“共創のまちづくり”の好事例として、今後もシナジーを生み出すような連携事業を、ともにつくり上げていきたいです。
N 松浦:私たちも、同市とは引き続き様々な地域課題解決に向けた議論を重ね、それぞれが保有する特性・資源・ノウハウを活かし、幅広い分野で連携・協力していきたいと考えています。
地域の課題を相談可能
東日本エリアにある29の支店が、各地で地域密着型のDX施策を推進している。社員も地域住民である同社に地域の課題について相談することで、自治体だけでは解決困難な課題の“突破口”が開けるかもしれない。
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