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【特集】災害の危険度を見える化する3D都市モデル「PLATEAU」、その社会実装により起きる変化とは。

国土交通省が進める3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU(以下、プラトー)」。無償で使えるオープンデータなので様々な活用法が考えられるが、特に防災分野に応用すれば、平面のハザードマップでは表現できなかった“垂直方向”の情報も考慮に入れた、避難計画や減災対策を講じることが可能になる。自治体は今後、このデータをどのように活用すべきなのか、同プロジェクトのディレクターである内山さんの意見を聞いた。

 Chapter01 - 関東大震災を振り返る。“100年前”に学ぶ教訓とは? ≫
 Chapter02 - 国や自治体等の災害情報共有はどう変化する? ≫
 Chapter03 - 進化するDXサービス、これからの情報入手法とは? ≫
 Chapter04 - 災害対応を高度化する防災IoTの活用例とは? ≫
 Chapter05 - 3D都市モデルは住民の防災意識をどう高める? ≫
 Chapter06 -  地域や立場を越えたつながりで防災力を高める。 ≫

 

Interview
国土交通省 総合政策局
情報政策課 IT戦略企画調整官(併)都市局 都市政策課
内山 裕弥(うちやま ゆうや)さん

被害レベルを可視化できるから住民の防災意識を高められる。

各地の自治体が、豪雨による洪水や土砂災害、台風接近時の高潮などに備え、各種ハザードマップを作成・配布している。

被災想定区域に住む住民たちへの啓発や、最寄りの避難場所への経路表示など、一定の役割は果たしているが、紙に印刷された平面地図がベースなので、“垂直方向”の情報は表現しにくい。

そのため、想定以上の豪雨によりハザードマップ上の避難経路が水没し、通れなくなった事案や、色付き(被災想定区域)ではなかった都心部で内水氾濫が起き、地下階を中心に大きな被害が発生した事案などが複数被災地から報告されているという。

「プラトーは、土地や建物などの形状情報に、用途や高さ、地上・地下含む階数と構造、災害リスク情報などの意味情報を付加した三次元GISのデータです」。

豪雨災害時、どのエリアがどの程度の浸水深になるのか、屋外に出るのが困難な場合、どの建物なら垂直避難できるかといった状況を瞬時に解析できます。また、「PLATEAU VIEW」(詳細はコチラ)というWEBアプリでは、ブラウザ上からプラトーのデータを閲覧できるため、誰もがプラトーの情報にアクセスできる点も大きな特徴です」

と、同データの概要について語る内山さん。土地の起伏や高低差も反映されているので、万が一の河川氾濫時、水や土砂がどの方向に流れるかのシミュレーションも可能だという。

「山裾の斜面に多くの住宅が建っている自治体の例ですが、豪雨時のシミュレーションで土砂災害危険地域を可視化し、危険度に応じて色分けした3D画像を住民に見てもらいながら、迅速な避難行動を呼びかけているそうです」。
 

(参照:「都市空間除法デジタル基盤構築支援事業(PLATEAU補助制度)取組事例集(2022年度)」佐賀県 武雄市の事例)

実際の都市の様子を、サイバー空間上で3D画像として再現するので、平面図では難しかった精緻なシミュレーションが可能。一定以上の浸水深になった場合の、避難ルート変更計画なども事前に策定できるという。さらに、予想される被害状況を3D画像として可視化することで、住民にリアルな危機意識ももってもらいやすいわけだ。

 

 プラトーの特徴まとめ 

テキスト, 手紙自動的に生成された説明

①形だけではなく意味情報を保存できる
②データの連携やソフトウェアの連携がしやすい
③自治体が保有しているデータから効率的に3D都市データを整備できる
④地域の課題に応じて保存する情報をカスタマイズできる

自治体職員が“使い方”を知ることからプラトーの利活用がスタートする。

プラトーの3D都市データは、各自治体が行っている航空測量データや都市計画基礎調査などの情報をもとに作成しているので、スムーズなデータ整備が可能だ。

プロジェクトの開始は令和2年度からだが、現在すでに約130都市分のデータ整備が完了しており、令和5年度中には200都市の3D都市データが完成する見通しだという。

 画像拡大

誰もが無償で活用できるオープンデータであり、バラバラに散在する自治体独自のGISデータとの統合や、アプリケーション開発に展開することも可能。

防災だけでなく、都市計画やインフラ管理、観光、モビリティなど様々な分野で活用できるため、もはや“使わないと損”と言っても過言ではないほど有益なデータ群である。

とはいえ、自治体におけるデータ活用には様々な課題があることも事実だ。「何となく苦手意識があるとか、どういうふうに活用すれば良いのか分からないなど、“入口”で立ち止まっている自治体が多いように思えます」。

そうした自治体に向けて同省では、自治体関係者を集めての説明会を定期的に実施したり、職員を派遣し、当該自治体での活用法を提案したりしながら周知を図っている。

「プラトーに関心はあるが、活用までの道筋が分からないという自治体のために、民間企業とのマッチングイベントも年に2回ほど実施中です。

まず、『3D都市モデルの整備・活用促進に関する検討分科会』に参加してもらい、自治体が解決したいと考える課題を“お題”として出してもらいます。それに対して10社ほどの民間企業から、プラトーを活用したソリューションを提案してもらうという内容です」。

3D都市モデルの整備・活用促進に関する検討分科会の活動記録はコチラ

とにかく触ってみることが、プラトー利活用の入口だと内山さんは強調する。プラトーWEBサイトの「PLATEAU Start Guide」をはじめ、動画配信サイトにも「PLATEAU VIEW の使い方」として公開されている。

「自分たちで勉強したり説明会に参加したりする積極的な自治体は、我々のチームとの接点も大きくなり、おのずと使いこなせるようになるものです。その反面、デジタル技術導入に意欲的ではない自治体に対して、プラトー活用をどのように広げていくかが、今後の我々の課題だと考えています」。

機能を一部紹介
◎まちを歩く
グラフィカル ユーザー インターフェイス自動的に生成された説明

◎時系列の人流データを表示する

動画で解説!PLATEAU VIEW の使い方


※PLATEAU公式YouTubeチャンネル掲載動画

プラトー活用による可能性が分かる“自治体発”のユースケース。

「全国各地の3D都市データ整備」という先端的な取り組みだけに、自治体側も、“何か革新的なことをやらねば”と、構えてしまいがちだという。しかし、内山さんの考えは異なる。

「自治体のユースケースは、“画期的”である必要はありません。単に紙のハザードマップを3D化するだけでも、住民への伝えやすさは大きく変化するはずです。そこから一歩ずつ進んで、自治体が“やりたい”と考えている方向に進化させれば良いのです」。

 ユースケース1 

例えば、埼玉県蓮田市で実施された「住民個人の避難行動立案支援ツール」の実証実験では、洪水による浸水の広がりを時系列で可視化するシステムを、3D都市モデルを使って開発。建物から避難場所への避難ルートが、時間経過によって限定されていく様子を分かりやすく表現した。

水害から身を守るには、想定されるリスクに応じた避難行動を事前に理解し、的確に行動できるよう備えることが重要だ。そこで、このシステムを住民参加の防災訓練などに用いて、早期の避難行動に向けた意識付けを目指すという。
 

- 住民個人の避難行動立案支援ツール -
詳細はコチラ

 

 ユースケース2 

熊本市で実施された「徒歩および車による時系列水害避難行動シミュレーション」の実証実験は、水害のパターンと避難パターン別の、問題点把握と校区レベルの地区防災計画の立案、住民1人ひとりの防災行動計画(マイ・タイムライン)の普及促進を目指したもの。

“できるだけ早く避難場所に行きたい”と考えて車で移動するより、水害のパターンや発災からの時間経過によっては、徒歩の方が早く目的地に到着できるケースもあることを、3D都市モデルで可視化する試みだ。

利用者が、水害の種類・避難の開始地点やタイミング・避難先・避難手段(徒歩・車)を指定することで、自身の避難行動の軌跡を目で見て体験でき、実際の避難にかかる時間や、避難に遅れた場合に想定される状況を把握することが期待できる。
 

- 徒歩および車による時系列水害避難行動シミュレーション -
詳細はコチラ

プラトーの利用主体は地域住民!“何を提供するか”がカギとなる。

内山さんによると、自治体が“こういうことをやりたい”と発信したテーマに対し、民間企業が協力するパターンや、逆に民間企業側が“こういうことができる”と提案し、自治体と連携するパターン、国交省の説明会への参加がきっかけとなり、実証実験地として名乗りを上げるパターンなど、プラトー活用のきっかけは多様だという。

いずれの場合も、何らかのシステムを開発するには自治体側がコストを負担しなければならないが、国交省が令和4年度に創設した「都市空間情報デジタル基盤構築支援事業」を活用することで、自治体の負担はかなり軽減できる。

「大都市部ばかりが取り組んでいるわけではありません。人口3,000人規模の村が、防災とモビリティ、農業用ドローンの運用など、複数の目的を持ってプラトーを使っている事例もあります」。

都市の規模にもよるが、例えば都市計画基本図や都市計画基礎調査をフル活用すれば、300万円程度の予算で100km2の建築物モデルを整備することも可能という。

結局は、自分たちのまちをどうしたいのか、住民に何を提供したいのかという目的意識を、明確にすることが重要ということだ。

「極端な話ですが、“うちのまちは紙のハザードマップで十分”と考えている自治体は、それで良いと思います。プラトーをベースに開発したシステムによって、何らかのメリットを受けるのは住民です。

住民に何を提供したいのか、まちの課題をどういうふうに解決したいのかが明確になれば、プラトーをどのように活用するかの方向性も決まるのではないでしょうか」。

なお、同プロジェクトのサイトでは、前項で紹介した事例以外にも多数の自治体によるユースケースが紹介されている。また、“何らかの形で活用したいが、なかなかアイデアが前に進まない”という自治体に向けては「ユースケース開発ガイド-自治体編」を作成。

プラトーをより有効に活用できるよう、実際に手を動かしながらサービスを具体化していくための方法が紹介されている。こうした情報を参考にしながら、3D都市モデルの実装を少しずつ進めていくのも、将来に向けた“防災まちづくり”の一手段といえそうだ。

ユースケース開発ガイドー自治体編-

基本的な情報からサービス設計に必要なステップ、具体的な事例などを紹介。実際にどう活用すればいいか分からない……そんな自治体に向けた、便利で分かりやすいガイドブックです。

新しいサービスをつくるためのステップを一部紹介!

アイデアと目的を整理する
テーブル自動的に生成された説明

 

 INFORMATION 
「都市空間情報デジタル基盤構築支援事業」の概要
〇対象事業
 3D都市モデルの整備・更新、3D都市モデルを活用したユースケースの実装経費
〇補助対象
 都道府県、市区町村
〇補助率
 【通常タイプ】1/2
 【早期実装タイプ】10/10(定額補助、上限1,000万円)※1,000万円を超える事業費は地方負担となる

 (自治体向けパンフレットはコチラ

 

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