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【特集】住民支援のための防災アプリ開発・利活用の促進等とこれを支えるデータ連携基盤の構築。

自然災害の激甚化・頻発化に伴い、防災DXに向けた様々なサービスが登場している。しかし、情報提供ツールがあまりにも“乱立”すると、自治体職員や住民は、どのサービス情報を基準にすべきか、判断がつきにくくなるだろう。そうした中でデジタル庁では、自治体職員が適切なサービス情報を入手しやすいよう支援するとともに、「データ連携基盤」の設計・構築を推進中という。同庁の取り組みを、高岡さんに聞いた。

 Chapter01 - 関東大震災を振り返る。“100年前”に学ぶ教訓とは?  ≫
 Chapter02 - 国や自治体等の災害情報共有はどう変化する? ≫
 Chapter03 - 進化するDXサービス、これからの情報入手法とは? ≫
 Chapter04 - 災害対応を高度化する防災IoTの活用例とは? 
 Chapter05 - 3D都市モデルは住民の防災意識をどう高める? ≫
 Chapter06 - 地域や立場を越えたつながりで防災力を高める 。≫

 

Interview
デジタル庁 国民向けサービスグループ
主査 高岡 雄仁(たかおか ゆうじん)さん

「防災DXサービスマップ」の活用で必要なアプリ・サービスを迅速に確認。

気象庁が発表する防災気象情報をはじめ、各自治体が自前で構築・導入した警報発出システム、民間企業や研究機関などによる防災情報アプリなど、“防災・減災”をキーワードにしたシステムやサービスが相次いで開発されている。

しかし、それが逆に情報の取捨選択を難しくし、住民の避難行動の遅れなどにつながる可能性も指摘されているようだ。また、“平時”“切迫時”“応急対応(発災後72時間)”“復旧・復興”の各フェーズにおいて、どのような防災サービスがあって、どの程度の効果があるのかといった情報も、自治体側では把握しにくいだろう。

そこでデジタル庁は令和5年3月、民間事業者による防災DX分野のシステムやアプリなどのサービス情報をまとめた「防災DXサービスマップ」を、WEB上で公開。現在(令和5年8月時点)、141件のサービスが掲載されている。
 

防災DXサービスマップ

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(参照:「防災DXサービスマップ」)※サービス分類名の( )内の数字は当該分類の応募のあったサービス数
 

「自治体や住民の方々にとって、平時から災害への備えを徹底し、災害時には命を守る行動が取れるよう、防災アプリなどを通じて、状況に応じたきめ細かな支援が重要となります」。

防災DXサービスマップを活用することで、職員が必要とする有用なサービスやアプリを、災害の各フェーズにおけるサービス分類から迅速に検索でき、情報入手が簡便にできるようになるという。

さらに、自治体がアプリやサービスを調達する際に必要となる、標準的な要件・機能などについても整理。職員向けにガイダンス資料(モデル仕様書)を作成・公表することで、ニーズに合うサービスを迅速かつ円滑に調達できる環境を整備していく計画だ。

各種機関が災害関連情報を共有できるよう情報のプラットフォームを構築中。

令和3年12月、同庁が策定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定されたのを受け、内閣府は現在、国・自治体・指定公共機関の間でデータ連携を図る「防災デジタルプラットフォーム」の構築を進めている。

その取り組みと連携しながら同庁は、住民向けの「データ連携基盤」の設計・構築に向けた検討を推進中だ。
 

防災分野のデータ連携(イメージ)

(出典:デジタル庁提供資料)
 

「現在、災害のフェーズごとに求められるサービスと、それに必要なデータの抽出などを行っています。それをもとに、各種防災アプリなどとのデータ連携を図ることができる、データ連携基盤の設計・構築を推進します」。

防災デジタルプラットフォームは、令和6年4月から稼働開始予定の「次期総合防災情報システム」(内閣府インタビュー記事で詳しく紹介)が基盤の中核となるが、同庁によるデータ連携基盤も、そのシステムとのデータ連携を図り、住民向けの防災関連情報を共有できる体制を目指している。

「そのために内閣府とは、GIF(政府相互運用性フレームワーク)の活用について意見交換を行っています。具体的には、データ共有により改善される、国や各地の防災対策機関の計画立案における情報処理、データの運用ルールなどを検討の上、それらをもとに、GIFを活用したデータモデル設計に関する協議を行っています」。

災害が切迫しているときには、情報の交錯が防災対応の遅れにつながるおそれがある。国と自治体、当該地域の消防や警察、その他の機関が情報を共有し、一致した認識で行動できる環境整備が必要だ。

デジタル庁が進めるデータ連携基盤の構築と、防災デジタルプラットフォームとのデータ連携は、まさにそのための取り組みの根幹を成すものといえるだろう。

防災DX実装を支援しながら新規サービスの創出にも注力する構え。

前述の防災DXサービスマップに加えて同庁は、デジタル田園都市国家構想交付金を活用したマイナンバーカード利活用サービスをまとめた、「デジタル実装の優良事例を支えるサービス/システムのカタログ(第1版)」を公表。

防災分野も含めた各分野における、デジタル実装の優良事例を支えるサービス/システムの横展開を支援している。

各自治体の職員が、地域事情に合った防災DXサービスの情報を得られるよう、こうしたサービスマップ・カタログを活用していただきたいですね。利用時の率直な感想や意見をフィードバックいただき、それらを反映させながら、自治体にとって、より身近な導入ツールにしたいと考えています」。

同庁は今後、サービスマップおよびカタログの継続的なブラッシュアップを行いながら、「防災DX官民共創協議会」とも連携を強化。災害フェーズやサービス分類を横断的に連携させた新規サービスの創出など、新しい防災DXサービスの市場形成にも貢献する計画だという。

※防災分野のデータ連携等の推進を通じた住民の利便性の向上を目指し、防災分野のデータアーキテクチャの設計やデータ連携基盤の構築等について、官民共創により推進するために発足した協議会
 

 補足 

3段階で構成される防災DXサービスマップ

(1)第1階層/災害の各フェーズや災害対応場面に合わせたサービスが分類されており、情報を得たいサービス分類をクリックすると第2階層のサービスカタログに遷移。

(2)第2階層/サービスカタログでサービス概要の一覧を確認。詳細を知りたいサービスを選択すると、第3階層のサービス詳細に遷移。サービス分類やフリーワードでの検索も可能。

(3)第3階層/サービスの詳細が確認できる階層。導入自治体の実績数、問い合わせ先、参考価格と無償トライアルの有無なども確認できるので、それらを参考に事業者に問い合わせ可能。

 

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