ジチタイワークス

【セミナーレポート】「出産・子育て伴走型支援」事例紹介セミナー

令和5年度から本格的に始まった、「妊婦・子育て家庭への伴走型相談支援」と「経済的支援」の一体的実施。

今回のセミナーでは、出産・子育て支援における各自治体での取組みを、より効果的・効率的にする官民連携サービスを紹介します。併せて、「出産・子育て応援交付金」業務の効率化に繋がる官民連携サービスも紹介します。

全ての妊婦・子育て家庭が、安心して出産・子育てできる環境整備や支援の参考してください。

概要

■テーマ:「出産・子育て伴走型支援」事例紹介セミナー
■実施日:2023年7月11日(火)
■参加対象:自治体職員
■参加者数:156人
■プログラム ※レポートでのご紹介は(Program1)(Program5)のみとなります。
Program1
日野市が取り組む子育て支援とDXについて
Program2
保健師負担を1/2~1/3に!R5年度下期からの子育て応援交付金活用:郵送&架電デジタル化事例紹介
Program3
伴走型相談支援充実のためのサポート施策 SNS相談窓口「産婦人科・小児科オンライン」のご紹介
Program4
伴走型支援で活躍!子育てガイドブックの無償協働発行
Program5
三重県桑名市が取り組む「出産・子育て応援交付金事業」事例紹介


日野市が取り組む子育て支援とDXについて

<講師>

東京都日野市 子ども部子ども家庭支援センター
係長 西野 剛史さん

妊娠期から18歳まで、切れ目なく支援をする「(仮称)子ども包括支援センター」の設置を進める日野市。出産・子育て応援交付金事業など、母子保健事業における業務のデジタル化・効率化に向けて取り組んだ内容を、同センターの西野さんが紹介する。
 

確実に目に付く情報発信をしたいと考えた

――SMSの導入のきっかけを教えてください。 

日野市は令和6年度「子ども包括支援センター(仮称)」を設置する予定です。となっています。それに先立ち、出産・子育て応援交付金事業など母子保健事業における業務のデジタル化、効率化を図るため、スマートフォンで送信できるメッセージサービス「ジチタイSMS」を導入しました。

出産・子育て応援交付金事業が国から示された状況下、当初、どうしようかと考えあぐねていました。経済的支援については支給の申請期限が決まっており、遡及対象者も含め申請率や支給率が求められると考えられたこと、妊娠6・8カ月時の対象者全員のアンケートを回収するよう協力の要請がありました。郵送の場合、気づかなかったり捨ててしまったりすることが考えられるため、必ず目に付くような発信をしたいと検討していたところ、SMSを導入している自治体があることを耳にして、このサービスを知りました。

「子育て情報アプリ」など他のデジタルツールも導入していましたが、プッシュ通知のため、主に申請には使用していませんでした。ベンダーに確認したところ、申請用に改変するのは現時点では難しいとのことで、最短で導入できるSMSを選択したわけです。

課内からの反対意見なども無く、準備を進める中で、SMS活用により仕事の効率が上がることの周知も行いました。郵送の場合、印刷物を入れるための封筒の準備や封かん作業が煩雑である一方、子育て世帯の方はスマホを持っていることが想定されるので、スマホに通知ができれば、情報発信の気付きが格段に良くなると考えました。

更に、市の子ども家庭支援センターで、「子育て情報アプリ」や、スマホで入力できる「乳幼児健診でのシステム化(令和5年度中に導入予定)」など、デジタル化を進めていることも後押しになりました。

郵送や電話と組み合わせて確実に情報を届ける

――SMSの活用方法について教えてください。

現在、経済的支援について申請やアンケートにLoGoフォームを活用しています。また、遡及対象の方や子育て応援ギフト案内通知は郵送になってしまいますが、通知後に申請やアンケートの提出がない方にはLoGoフォームのURLを、SMSから発信しています。また、郵送戻りに関しては、SMSで受け取りを促す発信をしています。

妊娠6・8カ月時のアンケートに関してもSMSで発信しています。妊婦面接の時に電話番号を取得し、同時にSMSで送信する旨を予め伝えるようにしています。また、面談の希望があったにも関わらず電話で連絡がつかない方には、SMSで状況を確認して連絡をもらえるよう発信を行っています。
この他にも、ギフトカードが郵送で届いていない時は、郵便局での保管期限が過ぎていることをSMSで発信しています。

作業時間の大幅な削減

――導入した効果についてお聞かせください。

SMSの導入効果として、一番大きいものは、業務が楽になったことです。実際に保健師からは、他の母子保健事業でもSMSを活用したいとの声が出ています。また、以前の郵送通知だと、印刷から発送までの業務が1日仕事になっていましたが、SMSを利用することで時間短縮が実現し、結果的には12時間程度で終わる作業量になりました。SMS通知だと、対象者のレスポンスも良いという感触があります。

担当者のきめ細やかな対応もありますが、遡及対象者の申請期限内の申し込みをほぼ100%まで達成することができました。また、電話連絡だと折り返し対応が発生し、担当が離席していると繋がらないケースがあります。SMSなら、そういったことに時間を取られないので、作業効率は非常に良くなったと考えています。ユーザー側から、SMSが使いにくいなどのクレームが入ることも、今のところありません。

導入するにあたり初期費用はかかりますが、郵送代が1回あたり約73円なのに対しSMSは1回あたり約66円程なので、費用は微減になっています。また、導入にあたり、初期段階から情報セキュリティの部署にも参加してもらいました。SMSの管理をLGWANでできる点もあり、懸念はありませんでした。スマートフォンをお持ちでない方は今のところいませんが、仮にいた場合は、郵送や対面でお渡しをする予定です。

唯一、デメリットを挙げるとすると、SMSにURLを添付しない場合だと、対象者が確認したかどうかが把握できないところです。SMSが届いたという署名はありますが、既読等のログが無い点です。なお、市内在住の外国人が増えてきており、中には日本語が話せない・読めないという方もいますので、SMS通知にあたり、外国人向けの英語の文書も準備しています。

 

三重県桑名市が取り組む「出産・子育て応援交付金事業」事例紹介

<講師>

三重県桑名市 子ども総合センター 母子保健係 
主査 堀田 千晶さん

母子保健分野と児童福祉分野を「子ども総合センター」内に設置し、妊娠期から子育て期までの途切れない支援を行っている桑名市。市内8カ所にセンターを設け、情報共有を綿密に行うことで、様々な子育て支援を一体となって実施している体制と取組み事例を、堀田さんが紹介する。
 

桑名市の「出産・子育て応援交付金事業」の全体像と実施例

本市では、担当事務局を子ども未来部の子ども総合センターと市直営の子育て支援センター(地域子育て支援拠点)、福祉なんでも相談センター(市社会福祉協議会)に担当部局を設置し、「伴走型の相談支援」と「出産・子育て応援給付金」の取り組みを行っています。出産・子育て応援給付金事業の、取り組み事例を紹介します。

取り組み①
令和3年4月から、母子保健分野と児童福祉分野とを同じセンター内に配置した「子ども家庭総合支援拠点 桑名市子ども総合センター」を設置。情報共有を綿密に行うことで、児童虐待予防をはじめ、様々な子育て支援を一体となって実施しています。また、「子ども発達・小児在宅支援室」を設置し、発達が気になるこどもへの支援を充実させる取り組みを行いました。更に、令和4年度からは医療的ケアが必要なこどもや保護者への在宅生活支援として、コーディネーターの配置や医療的ケア児のレスパイトを開始しました。

取り組み②
令和2年4月から、母子手帳アプリ「母子モ(ぼしも)」を導入し、市の子育て情報の配信、予防接種・健診の予定・記録の管理、病院・保育施設など、母子保健にかかる情報を通知しています。

取り組み③
妊娠8カ月の面談については、市内8カ所で実施できる体制を作り、対象者の身近な場所で気軽に面談を受けられる体制にしています。また、Zoomを活用してのオンライン面談にも対応可能にしています。

取り組み④
市内に4カ所ある直営子育て支援センターでは、NPO法人等民間団体と共催でマタニティ講座や子育て講座等を実施しています。また、商業施設内に設置している子育て支援センターでは、子育て情報の発信や育児に関する相談を実施。土日祝日も開所し、買い物ついでに立ち寄りやすい仕掛けにしています。

取り組み⑤
出産・子育て応援ギフトの遡及の支給分から、自治体専用デジタル化総合プラットフォーム「LoGoフォーム」を活用しています。

「伴走型相談支援」の取り組み事例

次に、「伴走型相談支援」に関する取り組み事例を紹介します。

取り組み①
妊娠届け出時には、子ども総合センターにおいて保健師等が出産までの準備等に関する相談を受け、 利用可能なサービスを案内する面談を実施しています。

取り組み②
妊娠8カ月頃、市内8カ所で相談・面談を実施できる体制を作っています。職員向けに本事業の研修会を実施し、身近で気軽に相談できる場を多く設定しています。特に、子育て支援センターでの面談は産後の利用の見学も兼ね、いつでも身近で気軽に相談ができ、交流の場としても利用できるという安心感につながると考えています。

取り組み③
出生届出時、子ども総合センターにて保健師等が、出生届を提出した父親等に対して行政サービスの説明や育児に関する相談を受け付ける面談を実施しています。

取り組み④
出産から1~2カ月頃の「こんにちは赤ちゃん訪問」の際、保健師等が産婦と確実に面談を実施するようにしています。また、訪問後にも民生委員が訪問し、身近な地域の子育て情報の提供などを実施しています。

取り組み⑤
母子手帳アプリ「母子モ」を活用し、子育て情報等をプッシュ型でタイムリーに情報を発信しています。

LoGoフォームを活用した出産・子育て応援交付金事業の申請・アンケート例

出産・子育て応援ギフト配布事業では「LoGoフォーム」で電子申請を受け付け、現金で支給しています。利用者の声としては、「経済的に助かる」との声がありました。

応援ギフト配布のほか、妊娠8カ月頃の面談アンケートについてもLoGoフォームを利用しています。案内文に印字したQRコードをスマホで読み込んでアンケート画面に遷移し、面談希望の有無などが回答できます。24時間いつでもWeb上で申請手続きができて、入力は約10分で完了する手軽さになっています。

集計したデータは、給付金支払い業務に活用など、今後は市の地域健康支援システム「健康かるて」にデータ連携していくことで、タイムリーに申請の状況など給付管理ができる体制にしていくことを検討しています。

これらの取り組みにより、職員からは申請内容確認作業の削減による事務負担の軽減になったとの声が聞かれます。紙の申請に比べて簡便となり、データへ移行するまでの確認時間を削減できているメリットがあります。一方で、電子申請であってもデータの不備等の課題もありますが、今後も運用の方を改善しながら、住民はもちろん職員にとっても、安心して利用しやすい制度設計になるよう、尽力していければと思っています。

今後も利用者の利便性の向上や業務改善に努め、利用者の支援ニーズを確実に捉え、創意工夫しながら妊娠期から出産・子育てまでの一貫した支援をより一層充実させていきたいと考えています。

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