ジチタイワークス

群馬県前橋市

要介護認定の調査・審査会を円滑に行うため、業務のデジタル化を推進。

認定調査と審査会を効率化するシステム

※下記はジチタイワークスVol.27(2023年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]株式会社日本ビジネスデータープロセシングセンター

『調査員の負担軽減のため、調査票を紙からデジタルへ。』

要介護認定業務では、申請から30日以内に結果を申請者に通知する必要がある。高齢化で申請件数が増える中、それを守りつづけるのは難しい。そこで前橋市では、煩雑な調査票の作成にシステムを導入。調査期間の短縮に成功したという。

紙からクラウドシステムへの移行で認定調査の進捗状況を常に共有。

超高齢社会に突入し、要介護認定の申請件数は増加の一途をたどっている。高齢化率が30%を超える同市も例外ではなく、すでに要介護認定を受けた高齢者だけで1万8,000人以上にものぼるという。そのため新規の申請に加え、今後は既存の認定者による区分変更申請や更新申請も増えることが予測され、抜本的な業務改善が急務だった。

「当市では、調査員の働き方は直行直帰が基本です。調査票などの受け渡しに登庁するのは、週に1回だけ。そのため、調査票の作成から提出までにタイムロスが生じていました」と黒岩さん。そこで考えたのが、システム導入による業務改善だった。「まずは、ベンダーがどのようなシステムをもっているか市場調査を実施。それをもとに要件を設定して、プロポーザルを行いました」。

その結果、「日本ビジネスデータープロセシングセンター」が開発した「介護認定調査員支援システム」を導入することになったという。決め手はクラウドシステムだったこと。「作成した調査票のデータはクラウド上に保存されるため、提出のために登庁する必要がなく、USBのように会って受け渡しをする必要もない。スピードアップが図れる上、業務効率も改善できると考えたのです」。

利便性を実感できるまで調査員の練習に寄り添う。

業務をシステム化する上で懸念点もあったという。「現場にシステムが浸透しないと意味がありません。調査員のデジタルへの苦手意識を払しょくする必要がありました」と五嶌さん。実際に調査業務を行っている池田さんにも話を聞いたところ、「当市の調査員のボリュームゾーンは40~50代で、60代の人も活躍しています。慣れないタブレットでの操作に、“調査員を続けられないかも”とネガティブに捉える人もいました」と振り返る。

そこで、端末操作の研修や、練習期間の設定など、調査員へのフォローを徹底。練習では、紙の調査票と同じものを、タブレットでも作成してみるよう促したという。完成した調査票は担当職員がチェックし、改善点などをフィードバック。それでも苦手意識のある人には、個別相談の時間も設けたそうだ。

「今ではみんなが操作に慣れてきました。調査の内容自体は変わらないと分かったことで、理解が進んだ印象です」。紙の場合は自宅に帰ってから作成しなければならなかったが、タブレットなら訪問先の病院や施設で待ち時間に作業できる。今では“時間を有効活用できる”と喜ばれているそうだ。

調査票の作成だけでなく、その後の点検もスムーズに。

同社は長年、自治体から要介護認定の調査業務を受託してきた。開発した本システムも、すでに年間18万5,000件の調査実績があり、現場の評判も上々という。

例えば、よく記載される内容をあらかじめシステムに登録しておく“特記事項のテンプレート化”。調査員は表示された文章の中から最適なものを選んで、そこに追記・修正する。文章を自分でゼロから考える必要がないため「作業時間を短縮するだけではなく、調査員ごとの記述内容のばらつきも抑えられます。

調査票をチェックする職員や、調査票を読み込む審査委員にとっても、テンプレートに沿った文章は理解しやすいというメリットがあります」と五嶌さん。経験が浅い調査員でも、一定品質の調査票を作成できるというわけだ。

介護認定調査員支援システムのメニュー画面。調査票の入力や、日程の管理なども行える。
 

また、設問の入力漏れや、入力内容の矛盾点もチェックできるという。画面にアラートが表示されるため、作成段階で調査員が気づいて修正。作成後の点検の手間を大幅に削減できる。さらに、調査票のデータを基幹システムへ取り込む作業も軽減されたという。

「今後も高齢化が進むことを考えれば、紙の調査票だけで対応していくのは難しい。当市では、要介護認定業務でもDXを進め、業務改善と適切な人員配置を進めていく予定です」と語ってくれた。

 

『介護認定審査会を円滑に行う工夫を重ね、公正公平な判断ができる環境を守る。』

前橋市の審査会には、解決したい2つの課題があった。まずは、多忙な審査委員の負担を軽減させること。次に、膨大な紙の会議資料をペーパーレス化すること。そのための一石二鳥の施策として取り組んだのが、審査会のデジタル化だったという。

申請件数は増えつづけるが審査委員のなり手は少ない。

「お盆とお正月以外は毎日、審査会を開いています」という黒岩さんの言葉の通り、令和4年度に同市が計画した審査会は528回にも及ぶ。120人の審査委員を5人ずつ24組に分けて対応しているが、今後も申請件数が増えつづけることを考えると、現状のままで対応できなくなることは明らかだった。

「1回で審査するのは25~30人分ほど。事前に調査票や主治医意見書をチェックしなければならず、審査委員の負担は相当なものでした」。審査委員を務めるのは、医療・福祉・保健分野の専門家たち。多忙な中で多大な業務負担を強いることになり、とある関係者からは「負担を減らさないと、なり手が見つからなくなる」と言われていたそうだ。

また、毎回用意する膨大な会議資料も問題だった。審査委員1人当たり160~170枚ほど、会議ごとに約800枚もの紙の資料が必要だったという。五嶌さんによると、「市役所で最も多く紙を消費していたのが、介護保険課でした。紙の場合は印刷や郵送だけでなく、審査会が終わったら、それらを回収して破棄しなければなりません。審査委員だけでなく、職員の業務負担も大きかったのです」。これら2つの課題を一挙に解決しようという取り組みが、審査会をペーパーレスのWEB会議で行うことだった。

負担軽減とペーパーレスに向け対面からWEB会議に移行。

同市はまず審査委員へのリサーチを実施。「簡単なアンケートを行ったところ、想定以上にWEB会議が浸透していることが分かりました。これなら理解を得られると判断し、市場調査を経てプロポーザルを行ったのです」。そうして採用したのが「日本ビジネスデータープロセシングセンター」が提案した「介護認定審査会システムTeleOffice(テレオフィス)」だった。

開発元は「シャープマーケティングジャパン」で、介護に限らず、すでに様々な分野で使われているが、介護分野の販売は同社に一任。自治体からの要介護認定業務の豊富な受託実績が評価されているそうだ。実際、黒岩さんも「業務への理解度が高く、現場に精通しているので、“共通言語”で話すことができます」という。

一般的なWEB会議システムとの違いは、ペーパーレス化の仕組みが備わっていること。オンライン化とペーパーレス化を両立できることが導入の決め手だったそうだ。会議資料を事前に共有・閲覧できるほか、各種メモ機能が豊富に揃う。会議前に自分用としてメモ書きを残したり、会議中にメモを共有したり、紙の資料と同じように作業することができるという。このほか、審査委員を審査会ごとにグループ登録できるため、会議の設定が簡単に。会議の案内なども送付できるため、職員の業務負担も軽減される。

さらに同市は、審査委員にタブレットを貸与。端末ごとに資料のダウンロードや担当外の審査会資料の閲覧を制限するなど、管理もスムーズに行えているそうだ。「“紙の審査資料より読みやすくなった”と言われるように、タブレットの解像度にはこだわりました」と五嶌さん。そのかいあって、「資料が見やすくなった」「手書き文字が拡大できて便利」など、好意的な反応が寄せられているという。

システムの機能を活用することで短時間で質の高い議論を行う。

オンライン化により審査委員は来庁する必要がなくなり、会議前後の時間を通常業務に充てられる。さらに、紙の資料を持ち歩かなくなったことで、機密性の高い情報を取り扱うプレッシャーからも解放される。同システムではデータが端末に保存されることはなく、タブレットを紛失した場合も、情報の流出は避けられるというわけだ。全ての通信は暗号化され、データセンターも国内に設置されている。「紙の資料を持ち歩くよりもよっぽど安全です」と、五嶌さんは話す。

また、紙の資料が不要になったことで、職員の負担も大幅に軽減されたという。「印刷や配送、回収や破棄など、オンライン化により不要になった業務も多く、相当な成果だと感じています。また、これまで審査会の結果はOCR用紙に転記して基幹システムに取り込んでいましたが、今ではデータで連携されます。チェック作業の負担が軽減されただけではなく、データの正確性も向上しました」。

さらに同市では、事前審査の集計にアンケート機能を活用。申請者の要介護度について、5人の意見が一致している場合は議論を簡略化して、時間短縮を図っているそうだ。「事前に専門家の意見が一致しているものを、審査会でわざわざ議論し直す必要はないでしょう。それよりも、本質的な議論に時間を割くべきだと考えています。実際、審査委員に心の余裕が生まれたように感じます」。

今後、申請件数は増えつづけると予測されるが、審査委員の人数を増やすのは難しい。そうなると、1回で審査できる件数を増やしていかなければ、今後、立ち行かなくなるのではないかという危機意識がある。審査会を運営していくためには、人材確保が不可欠だ。可能な限り効率化を進め、審査委員の負担を減らす努力をする。将来を見据えて、持続可能な審査会の仕組みづくりが始まっているようだ。


 

前橋市
左:福祉部 長寿包括ケア課
課長 五嶌 信広(ごじま のぶひろ)さん
右:介護保険課 認定審査第一係
副主幹 黒岩 大輔(くろいわ だいすけ)さん

要介護認定業務 × DX

それぞれの分野において業務に精通した2社が協業

開発企業担当者の声
シャープマーケティングジャパン
東日本開発部 部長 河田 龍作(かわた りゅうさく)さん

TeleOfficeは1,500社以上の採用実績があるペーパーレス遠隔会議ソリューションです。要介護認定業務に強みをもつ日本データーとの協業により、介護認定審査会での採用が増えています。同社の知見を得て業務への理解が深まり、介護分野に必要な機能を標準機能として提供した実績も。今後も現場の課題・ニーズを汲み取り、より便利なシステムへ進化させていきます。


開発・販売企業担当者の声
日本ビジネスデータープロセシングセンター
自治体DX推進室 室長 松田 直人(まつだなおと)さん

当社は、自治体の行政事務業務の受託とITソリューション事業を行っています。介護保険業務に関わる実績と経験から“要介護認定調査”と“介護認定審査会”の効率化・平準化を実現するため、調査員支援システムを自社で開発し、介護認定審査会に向けてはTeleOfficeを提供しています。自治体職員の負担軽減と市民サービス向上のため、より良いサービスの提供に努めていきます。

無料トライアルのお知らせ

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サービス提供元企業:株式会社日本ビジネスデータープロセシングセンター

自治体DX推進室
担当:松田・伊藤・江藤
TEL:078-332-0871
E-mail:dx_eigyo@nihon-data.jp
住所:兵庫県神戸市中央区伊藤町119
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