ジチタイワークス

【THE 談会】普通の公務員がすぐに取り組める“働き方のコツ”について

公務員の皆さん、集合~!

世代や分野を問わず集まった公務員たちが、時にシビアに、時に楽しく「ワーク&ライフ談議」に花を咲かすコーナー。今回は、今年5月に話題の本(下記)を共著で出版したお二人と編集室の井上(世田谷区から派遣研修中)が、“働き方のコツ”についておしゃべりしました。

※下記はジチタイワークスVol.27(2023年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

同前 嘉浩(どうぜん よしひろ)さん
岡山県備前市備前緑陽中学一体校準備室長補佐

2002年、建設会社から水道企業団へ転職。2005年に備前市職員となり、2023年4月より現職。2017年、下水道課で事業費約20億円を削減し、国土交通大臣賞(循環のみち下水道賞)や「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2020」を受賞。

博司(はやし ひろし)さん
パブリシンク株式会社代表取締役、合同会社 LOCUS BRiDGE共同代表

2010年、埼玉県北本市に入庁。情報政策・広報・財政・シティプロモーション・ふるさと納税担当として12年間勤務。2022年、全国広報コンクールで内閣総理大臣賞を受賞。「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2021」を受賞。

井上 朋(いのうえ とも)さん
2019年、東京都世田谷区に入庁。財務部納税課に4年勤務。2023年4月から、株式会社ジチタイワークス マガジン編集室にて派遣研修中!「お二人はとっても気さくで、具体的なアドバイスをたくさんくださいました。全国の公務員に、業務改善のヒントやコツが広がりますように!」

 

公務員が定時で仕事を終わらせる55のコツ
同前 嘉浩・林 博司 著(学陽書房)

日々の仕事の効率化を実現した二人による業務改善の指南本。某自治体の首長が「全職員に配ればいい!」と称賛したという注目の1冊。

 


前例に倣う仕事の多くが非効率であることに気づかない。

井上 お二人の本は、すぐにできるツール活用からコミュニケーション術まで網羅されていて、大変参考になりました。なぜ、こういう本を書こうと思ったのですか?

同前 僕は民間から転職しましたが、公務員って“非効率だと気づかずにやっていること”が多いんです。その結果、残業が増えて精神的に追い込まれる人がいることにも驚きました。もっと効率的に働くコツを伝えることで、ラクに楽しく仕事ができるようになればいいなと思ったのがきっかけです。

僕の場合、周囲から「公務員時代は残業が多かったのでしょう?」と聞かれることがあって。そうでもないですよ……と取り組み方を伝えると、すごく興味をもたれます。他人の働き方は意外と知らないものだから、こういう本を出せば役に立てるのではないかと思っていて。そんなとき、同前さんと考え方が近いことを知り、一緒に書くことになりました。

同前 当初は、残業に悩む若手を対象と考えて執筆していました。だけど管理職も読んでくれたら、若手が救われるかもしれないと思うようになったんです。

井上 私は新卒5年目で、業務に“前例”があると、つい頼りたくなってしまいます。しかも数年おきに異動があるので、新しい業務を覚えることに不安があって……。

異動先で全く違う仕事をするのに、即戦力として扱われるのが“公務員あるある”ですね。だから“いい仕事をする”ことより“ミスをしない”ことに意識が向きがち。改善意識をもつ余裕がないのかもしれませんね。

同前 異動が多いからこそ、マニュアルをつくれば業務を覚えやすいし、後任者の役に立つ。でも、その時間がもったいないとか、面倒だとか思われてしまう。だから、異動する先々に改善点があって。民間だったら「こうしてみよう」と話し合うけど、役所にはそういう場や、先行投資という発想がほとんどないですよね。

業務改善は、最初に労力がかかる。そこを乗り越えればラクになるのに、取り組む人が少ないし、言い出しづらい雰囲気もある。だから、「この本に書いてあることを、やってみましょう!」と発信するきっかけになればいいなと思います。

井上 確かに。周囲に「やってみましょう」と発信してくれる人がいたら、自然と取り組めるような気がします。

時短術から働く環境まで、すぐに使えるコツがあれこれ!

井上 本の中には、実体験にもとづく様々なコツが紹介されています。それぞれ、オススメを1つ教えてください。

同前 実は、本に書きそびれたコツがあります!僕は技術職なので、工事発注した現場を監督する業務をしていました。当時、7つほど現場があり、頻繁に確認に出かけていたんです。すると、移動だけで時間を浪費する。それを何とかしたくて、職場のタブレット端末とLINEを使い、現場に行かずに済むようにしました。確認事項は、業者から画像などを送ってもらえばいい。業者側も我々を待つ時間が減り、結果的に年間で約200時間を削減できました。

「すぐ実践できて一番効果的なコツは?」と聞かれて挙げるのは“使い心地の良いデスクまわりの追求”ですね。職場ではノートパソコンが支給されますが、自分でディスプレイを持ち込んだり、マウスやキーボードを使いやすいものに変えたり。それだけで効率が上がるし、ミス予防にもつながる。与えられた機材で与えられた仕事をするのが当たり前という考えは取っ払う方がいい。自分なりの工夫でいい仕事ができると、周囲にも改善ムードが漂うようになりますよ。

井上 時間の使い方など、ほかに工夫していることはありますか?

同前 午前はクリエイティブなこと、午後は作業に使います。パソコンのデスクトップは、業務ごとのファイル名に締切日を記して、優先順に並べていますよ。

確かに、業務の可視化は大事ですね。また、それらにかかる時間を頭に入れるとスケジュールがブレにくい。タスクが複数の場合は、いったん“全部にちょっとだけ着手”する。手を付けてみると、そうしない場合に比べて“かかる時間の目星”を付けやすくなりますよ。

職場で相談しづらいときは他自治体から学ぶ方法も!

井上 お二人は民間経験があるから“仕事のムダ”にアンテナが立つのでしょうか。効率を疑う目をもてない場合は?

同前 井上さんが純粋だからかなあ。僕は、その純粋さを失ってしまった(笑)。全て疑ってみるし、面倒くさいことを何とかできないか?と考えるようにしています。これだけデジタル化が進んでいるのに、業務のあり方が変わらないのはあり得ないと思っていますしね。

世の中が変化しているのに、自治体が“変わらなくていい”というマインドではいけない。全国の自治体がほぼ同業務をする中で、自分たちが“ベストの方法”で働いているはずがないんです。もっといい方法があるはずだし、それをまねたい、ベストを目指したいという意識が僕にはありました。特に広報担当のときは、他自治体の人々とつながることで、分からないことを聞けるようにもなった。情報共有って民間(競合企業間)ではできない。自治体の強みなので活用しなきゃもったいないですよね。

“すごい”とは、前向きに泥くさく頑張ること。そんな人に光を!

井上 今年もホルグさん主催の「地方公務員アワード」がありますね。業務改善って、受賞者のような“すごい人”だからできるというイメージがありますが……私にもできるでしょうか。

同前 もちろん。僕だってすごくないし、面倒くさがりだから改善点に気づくだけなんです。苦手なこともあるし、周囲に頼ることも多いですよ。

“すごい”というのは、頑張って成果を出していることを指すと思っています。全国の広報担当にはめちゃくちゃ頑張っている人たちがいて、それを知ったとき“自分は全然甘かった!”と触発されました。ただし、広報は成果が見えやすい分野。自治体には成果が分かりづらい仕事も多い。外から見えづらい努力や日々の積み上げが評価(アワードで推薦)されるようになってほしいですね。

同前 どんな仕事でも、前向きに頑張る姿は素敵です。でも、泥くさくやっていると、それを煙たがる人もいる。煙たがられても負けずに頑張った人に光が当たるといいなと思うし、(今年は審査員なので)そういう人を選びたいと思います!

2023年8月21日 受賞者発表予定

お二人も受賞経験をもつアワードの結果が発表!7回目を迎える今年の気になる受賞者は、株式会社ホルグのサイトをCHECK!

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