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雑誌と連動した来訪促進で行動派シニアを地域に招く。

日本の各地には、歴史や文化、自然など、豊かな観光資源が息づいている。しかし、その魅力を十分に発信できていない地域は多い。そこで福井県では、消費力の高いシニア層を対象に、情報を発信。新しい誘客の流れを生み出そうとしている。
※下記はジチタイワークスINFO.(2025年11月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[PR]株式会社ハルメク・エイジマーケティング

福井県
交流文化部 誘客推進課
左:課長 斉藤 輝幸(さいとう てるゆき)さん
右:主事 橋本 佳奈(はしもと かな)さん

福井県
交流文化部 誘客推進課
左:課長 斉藤 輝幸(さいとう てるゆき)さん
右:主事 橋本 佳奈(はしもと かな)さん
新幹線延伸を千載一遇の好機と捉えシニア層に焦点を当てる誘客へ。
同県は、全国の観光地と比べて誘客数や認知度で後れを取っているという課題意識を抱いていた。そうした中、令和6年3月に北陸新幹線が延伸開業。東京から敦賀まで直通で行けるようになり、アクセスが飛躍的に向上した。これまで主な商圏は関西・中京圏だったが、今後は関東や東北、沿線地域からの来訪も期待される。「まさに今が100年に1度のチャンスです」と斉藤さんは語る。
「県ではこの好機を逃すまいと、数年前から誘客の準備を進めてきました。カギとなったのは、既存の観光来訪者層のデータです。混雑せず、落ち着いて観光できるためか、来訪者の約半数が50代以上であることが分かりました。それならば、関西・中京など商圏別に展開していた従来のPRから、シニア層を主軸とするPRへ転換すべきと考えたのです」。
日本では、今後さらにシニア層の人口比率が高まっていく。一昔前とは異なり、年齢を重ねても心身ともに元気で、学びや趣味、旅などに積極的に挑戦する人が増加。自分らしく人生を楽しもうとする姿勢が、各地を訪れる観光客としても注目される。「経済的に安定しているので大きな消費を見込めますし、悠々自適のリタイア世代なら繁忙期以外の来訪も期待できます。夫婦2人だけでなく、子や孫を含めた2世代・3世代旅行のきっかけにもなるでしょう。そうした裾野の広がりや、日本の人口構造から見ても、シニア市場へのアプローチは欠かせません」。
シニアに精通した民間企業と観光資源の魅力を再発見。
そこで白羽の矢を立てたのが、シニア女性向け雑誌「ハルメク」である。平均発行部数46.7万部※を誇る定期購読誌で、熱心なファンが多い人気の月刊誌だ。知的好奇心が旺盛で、新しい体験や学びに積極的な読者が多いという。発行元グループは出版に加えて通販やコミュニティ事業などを、シニア女性に絞って幅広く展開。暮らしや価値観に寄り添うことで、ユーザーとの間に強固な信頼関係を築いている。
こうした点から、県はシニア層へのアプローチに最適なパートナーと判断し、グループ会社の中でもPR活動や集客を支援する「ハルメク・エイジマーケティング」に声をかけた。同グループは、これまで数多くのサービスを生み出してきた。1年間でグループのいずれかのサービスを利用したことのあるアクティブユーザーは、約80万人にものぼるという。その基盤を支えているのが、約5,000人の読者モニター組織「ハルトモ」である。暮らしを通じて得た気づきや意見を同社に届ける、いわば“読者の代弁者”だ。今回の取り組みでは、旅の案内役を務めている。
「当県は、全国的に知られるランドマークこそ少ないですが、歴史や文化、自然に恵まれています。好奇心旺盛なハルトモなら、見過ごされがちな場所にも価値を見出し、“知られざる福井”を発信してくれるだろうと期待しました」と橋本さん。県の魅力を同世代の視点から再発見することで、より身近に感じられるようにしたいという思いもあった。
※一般社団法人日本ABC協会「令和6年7月~12月 発行社レポート」より

読者の視点でスポットを選び雑誌・動画・ツアーで届ける。
同社と連携した誘客施策の一環として、令和7年8月から「読む×見る×旅する」プロジェクトを開始。その名の通り、雑誌・動画・ツアーを一体化した取り組みだ。同県在住のハルトモ2人が、オススメの観光スポットや飲食店にハルメク編集長を案内し、その様子を誌面と動画で紹介。さらに、現地を巡るオリジナルツアーを企画・運営し、実際の行動へと導いていく。本プロジェクトにハルトモを起用したことには、大きな意味があるという。同世代がスポットを選定・案内することで読者の共感を呼び、興味・関心を高める発信につながるからだ。
また、固定観念を覆す新たな発見もあった。例えば、誌面で紹介された三方五湖のほとりにある「福井県年縞(ねんこう)博物館」。湖底に堆積した年縞を通して、地球の歴史をたどる希少な博物館だ。「県の施設ではありますが、解説がないと魅力が伝わりにくく、選ばれたのは意外でした。しかし、ハルトモが案内することで面白さが引き出され、読者の心に響く発信になりました」と斉藤さん。読者視点がもたらす効果を改めて実感したという。
さらに、誌面掲載後の読者アンケートでは、恐竜博物館がシニア層にも高い人気を誇ることが判明。一般的に“恐竜は子ども向け”と思われがちだが、シニアの関心領域は幅広い。シニアに特化した媒体と組むことで、従来のプロモーションでは気づけなかった潜在的ニーズの掘り起こしに成功した。

プロモーションの本質を学び受け手に寄り添う姿勢へ。
雑誌と動画で喚起した興味・関心を、リアルな旅へとつなぐ“一気通貫モデル”を構築できる点も大きな魅力だ。「雑誌への広告掲載は従来も行ってきましたが、観光スポットを知ってもらえても、“旅に出る”という行動につなげるのは難しいと感じていました」と橋本さん。今回は、興味をもった読者がすぐに予約できるよう、特集記事の後ろにオリジナルツアーの案内を掲載したという。
最後に、斉藤さんはこう振り返る。「定量的な成果が出るのはこれからですが、同社と一緒に取り組む中でプロモーションの根幹に関わる学びを得ました。それは、情報の受け手視点に立つことの大切さです。私たちは“ここを推したい”という自治体側の事情や思惑を優先しがちですが、受け手の満足度を高めなければPRにはならない。そのことを実感できたのは貴重な収穫でした」。伝える自治体と、伝えられる読者。両者の間に温度差をつくらない姿勢に、感銘を受けたという。今後も同社との協働を通じ、さらなる魅力発信に取り組む方針だ。
同世代の読者による観光案内がシニアの共感を呼ぶ


読者理解を起点にしたコミュニティづくり


担当者の声

ハルメク・エイジマーケティング
営業局 メディア営業部
八頭司 尚(やとうじ ひさし)さん
“ハルメク”への信頼と共感を武器に自治体のシニア誘客をサポートしたい。
培ってきた顧客との“絆”が誘客の原動力
当社グループは50代以上の女性に向けて雑誌や通販、イベント、旅行などを展開し、顧客と深い信頼関係を築いてきました。“ハルメクが紹介するなら信頼できる”と思ってもらえる点が強みです。今回のプロジェクトでは、雑誌による興味喚起から動画での理解促進、現地に導くツアー募集まで、トータルでサポートします。
いまやシニアの価値観やライフスタイルは多様化し、固定観念は通用しません。自治体が想定しない意外なスポットが人気を集めることもあります。そこで重要になるのが、調査やマーケティングにもとづく企画です。全国5,000人以上の読者モニター・ハルトモのネットワークや、シンクタンク部門「生きかた上手研究所」をもつ当社は、企画にリアルな声を反映できます。調査から誘客まで一気通貫で行える強みを活かし、今後も“シニア視点の共感型プロモーション”で自治体の様々な施策を支援します。

誘客の突破口はシニア層にあり

取り組みの流れ
▶ 令和6年3月
・北陸新幹線が延伸開業
▶ 令和6年9月
・共同企画「福井県が好きになる講座」を会場・オンラインで実施
▶ 令和7年8月
・「読む×見る×旅する」プロジェクト始動
令和6年度の取り組み
福井県が好きになる講座
県の魅力を発信するために開催されたイベントで、会場とオンライン合わせて320人が参加した。福井弁講座や福井自慢、在住者へのQ&Aコーナーなど多彩な内容で構成され、参加者の満足度も高かった。
お問い合わせ
サービス提供元株式会社ハルメク・エイジマーケティング
東京都千代田区神田神保町2-2
共同ビル神保町8F
TEL:03-3261-1041
Email:halmek_koukoku@halmek.co.jp











