ジチタイワークス

各自治体がもつ都市データを活用した3D都市モデルが、次世代社会の基盤となる。

国土交通省が主導するプロジェクト「PLATEAU(以下、プラトー)」。3Dの都市データ(3D都市モデル)を活用し、社会課題の解決に向けたイノベーションを創出する事業だというが、その詳細を担当者の内山さんに聞いた。

※下記はジチタイワークスVol.25(2023年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

日本の公共データだからこそ低予算でプロジェクトが実現。

―事業概要を教えてください。

プラトーは、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化を行うプロジェクトです。3D都市モデルとは、3Dで作成したマップ上の土地・建物などに、用途や構造、築年数などの情報を付加した都市データのこと。現在は約130自治体分の整備が完了しており、他国の同様プロジェクトと比較すると、私が知る限り世界最大の面積規模です。

―そこまでの規模とは驚きました。大きな予算がかかっているのでしょうか。

実はこのプロジェクトは、他国と比べて数分の一の費用しかかかっていません。というのも、各自治体が行っている航空測量のデータや、都市計画基礎調査などの情報をもとに作成しているため、元データの取得に費用がかからないのです。一から測量や調査をしなければならない他国と比較して、圧倒的に低コスト、かつ急速に整備できます。各自治体がこれほど充実したデータを保有している国は、日本以外に聞いたことがありません。

―3D都市モデルの活用で、自治体のどのような課題解決に役立ちますか。

分かりやすい例でいうと、まず防災分野です。浸水被害をシミュレーションし、垂直避難が可能な建物を一気に抽出。その建物のオーナーと防災協定を結ぶといったことに役立てられます。建築・都市計画分野であれば、膨大な調査を必要とする開発申請を大幅に省力化した自治体もありますね。防災やまちづくり分野のみならず、観光、教育、環境分野など、令和4年度は約45件の実証実験を行いました。

多分野で活用される3D都市モデル

石川県加賀市(かがし)
太陽光パネルの発電量を算出

屋根の角度データを活かし、各戸の発電量を算出。脱炭素へのインパクトを可視化して政策に活かす取り組み。
 

茨城県鉾田市(ほこたし)
高校生へのまちづくり教育

3D都市モデルを活用したゲームでまちづくりの授業を展開。まちへの理解と参加意識の向上を目指す取り組み。

そのほか…衛星/市民参加/インフラ管理/開発許可/地震/土砂災害/洪水/都市計画・まちづくり/自動運転/交通/ID連携/地域活性化・観光/防災・防犯/環境・エネルギー/モビリティ・ロボティクス/モニタリング/エリアマネジメント など

プラトーWEBの活用事例はこちらからチェック!

データの標準化と拡充で、イノベーションを加速させる。

―かなり多分野で活用できるのですね。

プラトーの肝は、この3D都市モデルのデータをオープン化して、誰でも扱えるようにしていること。自治体はもちろん、民間企業や研究者、エンジニアなど、多くのプレイヤーにその活用を促しています。イノベーションの創出には、そうした異分野同士の連携が非常に重要。これにより新たなアイデアやサービスが、すごいスピードで生まれていますよ。

―今後の課題や展望を教えてください。

最大の課題は、元データの“標準化”です。現在の都市計画基礎調査は、当省のガイドラインが曖昧なこともあり、自治体によって内容や項目にかなりのバラつきがあります。これを整え、より早く低コストに規模を拡大するため、新たな標準仕様について関係者と協議を進めているところです。これまで都市計画のみで使われていた基礎調査の情報は、前述の通り、多くの分野で活用価値のあるデータだと分かりました。ぜひ様々な事業で役立ててもらいたいと思いますし、私たちも引き続きモデルの拡充を進めていきます。

国土交通省 都市局
都市政策課 課長補佐
Project PLATEAUディレクター
内山 裕弥(うちやま ゆうや)さん

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