“DXに本気で取り組みたい”という思いをもつことを条件に、対象自治体の全職員がキントーンを1年間無料で利用できるというキャンペーンを行った同社。参加した全国約50自治体には、伴走型の研修プログラムも提供されたという。
一体どんな内容だったのか、サポートを担当したメンバーに話を聞いた。
※下記はジチタイワークス特別号(2023年3月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]サイボウズ株式会社
REPORT1:伴走サポート担当者に聞きました!
キャンペーン参加自治体をサポートする同社のチームには、自治体から出向中のメンバーも。現役自治体職員の視点から、その背景や内容などについて語ってもらった。
椎名 元(しいな はじめ)さん
埼玉県から出向中
平成25年入庁。春日部農林振興センター、県土整備部用地課、保健医療部国保医療課でいずれも3年勤務。令和4年4月より同社へ出向。
板戸 優貴(いたど ゆき)さん
神戸市から出向中
平成27年入庁。生活支援課でケースワーカーを3年、建築住宅局政策課で局の経理や人事・労務を4年担当。令和4年4月より同社へ出向。
大規模なキャンペーンを実施した目的は?
板戸:“DXをどのように進めたらいいのか”と悩む自治体も多いと思います。以前の私も同じでしたが、大切なのは改善に向けて一歩踏み出すこと。その後押しをして、庁内展開までを一気に進めるお手伝いをするために、このキャンペーンが生まれました。基礎の習得から現場での検証、予算化するという面でも、1年間という期間はちょうどいいと思います。
椎名:ツールの使い方だけでなく、業務見直しの方法などを同時に学んで“何のために・どう進めるのか”を身に付けてもらうことも目的の一つです。自治体の現場事情を知っている出向メンバーがサポートすることで、より分かりやすく伝えられたかと思います。
実際にどんなサポートが受けられますか?
椎名:キャンペーン期間中は、DX推進担当者と原課職員向けに、ハンズオンや座学などを交えた伴走プログラムを実施し、スタッフが全力で支援。DXの基本である業務フローの見直しから、アプリの作成、その後の運用までを含めた一連の流れを、手を動かしながら学べます。質問は随時チャットで受け付け、途中でつまずきそうになる方がいればマンツーマンでサポートしました。
板戸:私たちも知識や技術を習得してすぐに教える側へまわっているので、サポートを受ける皆さんの気持ちが分かります。アプリ作成に関する相談だけでなく途中面談なども行って、庁内展開や各種規定の整備など、進め方に関するアドバイスも提示しました。
令和4年4月に募集を開始し、北海道から沖縄、都道府県から市区町村まで、様々な自治体から応募が集まった。同年6月から約50の自治体がキントーンを活用したDXに挑戦している。
REPORT2:伴走プログラムでは何をするの?
課題と感じている業務を改善するため、実際にキントーンを使ってアプリ作成を体験するプログラムを実施。全8回、各回約3時間のオンライン開催で、DX担当と原課職員がペアで参加。現場での効果測定までを伴走する。
START 6月
事前準備
庁内で“改善が必要”と考えられる業務を洗い出し、各自治体が1つずつ改善対象業務として持ち寄る。
椎名さん:持ち寄られた業務の量も種類も、想像以上!改善したい業務は多いものの、やり方が分からない……という悩みが見え隠れしている印象でした。
多種多様な業務が集結!
●公用車管理●農業支援相談の窓口デジタル化●証明書発行のオンライン申請●防災備蓄品管理●補助金申請のオンライン申請●物品貸出申請管理● 証明書発行のオン●街路灯・防犯灯管理●公文書管理●事務事業執行管理・評価●中小企業融資管理●答弁書作成 など50種の業務
7月
①kintone基礎編
②外部連携サービス学習編
③ケーススタディ編
まずは“キントーンで何ができるのか”と、自治体でよく利用されている外部連携サービスの使い方を学ぶ。実際にアプリを試作しながら、基本的な技術を習得する。
8月
④業務フロー図・検証計画の作成+ペアでアプリ作成チャレンジ[1]
各自治体の改善対象業務について業務の流れを整理。DX担当と原課職員が協力してアプリ作成計画をつくる。
⑤高度なカスタマイズをノーコードで実現!
⑥煩雑な集計業務を自動化する!
これまで作成したアプリをより便利にするために、さらに機能アップを果たせる外部連携サービスについて解説。その活用事例や操作方法を学び、効果を体験する。
⑦全庁展開の極意+ペアでアプリ作成チャレンジ[2]
アプリ作成のステップを進めつつ、庁内展開を進めるための極意を、事例も交えて学ぶ。
板戸さん:DX推進のポイントは、ツールの導入から庁内展開までを一気通貫で強力に推し進めること。その方法論をこの回でお伝えしました。
9月
⑧成果発表会
各自治体が作成したアプリの内容や成果を、すぐに実行可能なDX事例として共有。いくつかの自治体からは、アプリの詳細な説明や、検証結果が発表された。
椎名さん:“ぜひ発表したい”という自治体や、高度なアプリをつくっている自治体もあって、皆さんの意欲もスキルも高まっていると実感しました。
番外編:交流会も開催!
プログラムの最後には自由参加の交流会を開催。「個人情報」「予算化について」「庁内広報」などについてテーマごとに情報交換を行った。
板戸さん:それぞれが興味のあるテーマごとに集まり、“こんな工夫をしています”などと情報交換。10月以降も全国で多くのアプリが生まれており、私たちも随時支援しています。
REPORT3:参加自治体のリアルな声を大公開!
■北海道旭川市(あさひかわし)
左:総務部 行政改革 水沢 悠(みずさわ ゆう)さん
右:学校教育部 学務課 太田 一弘(おおた かずひろ)さん
令和2年度に実施した全庁業務量調査で、事務作業などのノンコア業務や紙ベースの業務が多いことが判明。“日本一のデジタル都市”を目標にDXを推進する中でキントーンのキャンペーンを知り、応募を決めたという。
取り組み課題・就学相談の申込受付をキントーンのアプリで一元化
Q1:業務改善の対象に就学相談を選んだ理由は?
>>煩雑な作業を効率化してミスを防ぐためです。
太田:特別支援教育に関する保護者からの相談申し込みを、年間900件近く紙で受け付け、それをデータ入力していました。学校や相談員との連絡もメールやFAX、紙書類の郵送などを使い分けており、業務フローが非常に煩雑化していたのです。また、個人情報を扱うことになるため、ミスは許
されません。こうした状況を改善するため、選定しました。
Q2:この取り組みを経て庁内ではどんな変化が起きていますか?
>>庁内全体で業務の見直しが進んでいます。
水沢:全職員がアカウントをもつことで、原課のタイミングで迅速に業務改善を進められました。また、他自治体が作成したアプリやDX関連情報も豊富に得ることができました。ちなみに、他業務では7つのアプリをすでに運用しています。就学相談受付に関する業務時間は、年間で約4割削減できる見込みです。さらに、連絡手段の統一でデータ入力のミスも減り、関係者への報告漏れ防止にもつながりました。これにより、市民にも充実したサービスを提供できると考えています。
Q3:参加した感想と今後の展望を教えてください。
>>得られた知見を、さらに庁内に広めていきます。
太田:伴走プログラムがとても役に立ちました。キントーンアプリのつくり方を丁寧に教えてもらえ、分からないことはチャットで気軽に相談できます。DX担当の水沢と協力しつつ、一つひとつの業務の流れや、誰が関わっているかを洗い出してフロー図を作成。既存のツールも活かしながら、必要な情報をアプリに落とし込むことができました。
水沢:今は、アクセスで長年稼動しているシステムのアプリ化も計画中です。アプリ作成の知識・技術はもちろん、業務見直しの基礎など、伴走プログラムで提供された内容は職員研修でも使えそうです。今後も知見を広めつつ、庁内の機運をさらに高めていきたいと思います。
■福井県
左:地域戦略部 DX推進課 河合 義文(かわい よしふみ)さん
右:福井県 和敬学園 松田 健宏(まつだ たけひろ)さん
取り組み課題・児童自立支援施設での行動記録・評価の効率化
Q1:キャンペーン応募の背景はなんですか?
>>各部署でのDX推進を加速させるためです。
河合:DXを推進する中で、289人のDXリーダーを各部署に配置するなど様々な施策を行ってきました。すると自発的に業務改善に取り組む職員もあらわれ始めたので、ノーコード・ローコードツールの活用を進めようと思ったのがきっかけです。改善対象業務に児童自立支援施設の業務を選んだのは、児童の行動記録をエクセル中心で行っており、管理・評価が非常にしづらかったのが主な理由です。こうした課題解決がキントーンの得意分野だと聞き、決定しました。
Q2:業務改善の感想と成果を教えてください。
>>業務フローの見直し方が分かりました。
松田:伴走プログラムでは、基礎から実践まで幅広く学べました。情報の一元化を図ることができ、情報管理のマネジメントも行えるようになったと感じます。今までDX担当者とのやりとりはなかったですが、ともに課題に挑戦し、アドバイスをもらえて心強かったです。今回作成したアプリでは、業務の中で774時間を削減できる見込みになっています。同時に、業務でのボトルネックも見えるようになったのは大きな収穫です。この研修によって、所属全体で不均一だったデジタルや情報リテラシーの向上にもつながったと思います。
Q3:伴走プログラムは全庁展開でどのように役立ちましたか?
>>誰もが挑戦しやすい環境をつくるきっかけになりました。
河合:庁内全体の関心が高まり、ベンダーに頼らず自分でアプリをつくろうと頑張る職員も増えました。私も学んだことを広げるため、基本操作研修会を企画。約70人が参加し、操作の基礎から実際にアプリを作成する演習まで、みんなでトライしました。キントーンが好評だったのは、チャレンジしやすい環境を整えたことも要因だと思います。現在は、庁内全体で26所属・約80業務のアプリ作成を並行してサポートしています。これらにより約5,500時間の業務時間削減を見込んでいます。
参加した50自治体の声を集めました
※サイボウズが令和4年8~9月に実施したアンケート結果をもとに作成
○職員が使える研修コンテンツが充実している!
○トップダウンでなくても頑張っている人がたくさんいると分かり、自分もこの環境で頑張ろうと思えた
○他自治体のセキュリティの考え方が非常に参考になった
○どこの自治体も同じような悩みを抱えていることに気づきました!
○ハードルが低くて◎
○交流会では同じ悩みをもつ自治体と顔を合わせて情報共有でき、仲間づくりにつながった
○自治体向けサポートが豊富!
○交流会で聞いた他自治体における原課サポートの手法をまねしてみたい
○部門や場所を問わず情報共有できるようになった
○職員自身がアプリを作成することで、業務効率化の意識を醸成できそう
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