ジチタイワークス

兵庫県神戸市

システム内製化で攻める!神戸市が進める全庁DXとは。

DXを積極的に推進し、他自治体からの視察も絶えない神戸市。先進的な施策やユニークな取り組みを次々に繰り出し、全庁を巻き込んでいる。

その推進のコツを探るため、同市のDX推進担当者と、原課の職員に話を聞いた。

※下記はジチタイワークス特別号(2023年3月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]サイボウズ株式会社

1.DX全体の旗振り役

神戸市 企画調整局 デジタル戦略部
左:デジタル化専門官 宇都宮 哲平(うつのみや てっぺい)さん
中央:ICT業務改革担当 平田 晋也(ひらた しんや)さん
右:ICT業務改革担当 谷 紘一郎(たに こういちろう)さん

現場がもつ課題解決能力を引き出し、迅速な改善とコスト削減を両立させる。

迫られた“働き方改革”のため単発で終わらせないDXを。

平成7年に起きた阪神・淡路大震災。同市はその被害により、厳しい財政運営を迫られ、震災直後から行財政改革に着手した。さらに近年では、限られた人員数で多様な住民サービスを提供する必要性が高まり、DX推進や働き方改革といった業務改善を加速させているという。

外部人材を積極的に登用し、様々な取り組みを進める中、庁内から“設備点検時のデータ収集に職員の手間がかかりすぎる”という相談がデジタル戦略部に寄せられた。解決策として、当時のICT業務改革専門官が「専門知識がない職員でも自ら業務システムを構築できるキントーンを、試験導入してはどうか」と提案。紙ベースでの作業を現場からデータ入力できるようにしたところ、作業時間を大幅に短縮できた。

この成果を単発で終わらせないために、庁内展開に向けた作戦が始まったと、谷さんは振り返る。「ほかにも様々な業務にキントーンが活用できるのではないかと考えました。庁内に展開していき、業務改善のマインドを広げていこう、というねらいがありました」。

庁内体制を整えながらもまずは“自分たちで”が基本。

同部では業務改善の成功事例を庁内向けのブログやイベントなどで随時共有。興味を示す職員がいれば学びをサポートし、今後の展開に必要となるデジタル人材の育成を行った。そこで力を発揮したのが「KOBE Tech Leaders(以下、KTL)」と、庁内でのチャットツールの活用だ。

KTLは、ICTを業務改善や市民サービス向上に活かすことを目的とした、有志が集まる庁内コミュニティで、チャット上にメンバーが集い、DX関連の相談や意見交換を行っている。また、チャットは庁内コミュニケーションの軸にもなり、スピーディな情報交換を実現しているそうだ。「面識のない職員同士でもコミュニケーションをとりやすいのがメリットです」。

さらに、宇都宮さんは「私たちがアプリをつくらないように心がけています。課題を最も知る現場にこそ、最適解があるはず。それを現場職員が自ら導き出そうとするマインドが大切なので、私たちはあくまでサポートを行っています」。こうした取り組みの結果、ツールの活用は急加速。公用車運転日報や新型コロナ関連業務などのデジタル化が続々と現場で実現し、成果も重なっていったという。

全職員展開も視野に入れ自治体DXの横連携を目指す。

展開を進める中で、庁内では“自分でも簡単に使えるので驚いた” “今後も様々なことが改善できそうだ”といった声が聞かれるようになったという。平田さんは「アプリを内製できることが、活用の幅の広さにつながっています。外部のベンダー任せでなく、課題に直面している当事者が内製することで、運用面での変化にも柔軟に対応できる。それがさらに時間やコストの削減につながり、DX推進において大きな強みになるはずです」と語る。

また、谷さんからは「ただやみくもに広げればいいというものではない」とアドバイスも。「全庁に展開を広げていくためにはルールの整備も必要です。そこをきちんとクリアして、自治体同士で知見を共有していけたらいいですね」。

デジタル戦略部による全庁巻き込みのコツ

1.成功事例は庁内広報で地道に拡散

業務改善の好事例が生まれたら、全庁公開のブログに掲載。導入効果も含め、目を引くデザインになるよう工夫しながら庁内へ拡散。他課での事例を知ることで、職員の改善意欲を引き出すねらいがある。同時に、庁内イベントでも紹介し、庁内広報活動をコツコツと重ねていった。

2.相談体制を整え挑戦を後押し

ツールの活用や運用については庁内のイントラネットや職員向けFAQを充実させ、簡単な疑問点は即時解決できる環境を用意。また、“こんなときはこうする”といった動画も掲載している。原課職員が自らツールを活用し、業務改善に取り組める仕組みを整える。その成功体験が次の改善意欲へつながる。

3.職員コミュニティで互助体制も確立

全庁チャットに相談ルームを作成。分からないことがあれば随時質問し、分かる人が回答。このルームは業務改善アイデアを出し合う場にもなっているという。また、意欲のある職員を“キーマン”として育て、その職員を中心に庁内各所で活動を広げ、取り組みを同時多発的に進める。

神戸市DXのあゆみ

H.07
阪神・淡路大震災
行財政改善緊急3カ年計画

H.27
震災後20年間で職員数が約3分の2まで減少

H.29
働き方改革推進チーム設置

H.30
タブレット全庁導入 
 kintone導入(10アカウント)

H.31
FAQシステム導入

R.01
グループウェア・WEB会議システム導入
サイボウズと全庁的な業務改善に関する事業提携協定を締結

R.03
神戸スマート申請システム稼働開始 
 kintoneアカウント数1,000突破

R.04
RPA本格導入
電子契約システム本格導入
 kintoneアカウント数1,700突破


2.部内全職員がアカウントを活用中

福祉局 監査指導部
左:監査指導担当課長 岩崎 誠(いわさき まこと)さん
中央:特別指導監査専門官 宇上 和伸(うがみ かずのぶ)さん
右:横田 優佳(よこた ゆか)さん

※監査指導部とは
障害福祉および介護の施設や事業所に対し、指導監督や指定・認可などの業務を行う部署。令和2年に新設され、所属人数は約60人。

原課職員が当事者意識をもつことで、多様な業務を自ら効率化へ進める。

初めの一歩は、紙で生じる煩雑さをどうにか解消したいという思い。

同市には3,500を超える障害・介護の事業所がある。各事業所からの報告・提出資料・指導記録などの情報を、以前は紙ベースで管理していた。この点が課題だったと横田さんは語る。「紙の資料は、事故報告・通報・指導といった業務別にファイリングされており、1つの事業所についての情報を調べるために、複数のファイルを取り出し、手作業で探していました」。

どうにか業務の効率化ができないかと検討する中、令和2年にデジタル戦略部主催のキントーン説明会に部内の職員が出席。そこで“このツールを活用すれば事業所情報の一元管理ができそうだ”と動き始め、まずは数アカウントを試験的に導入したという。当時、育休から復帰したばかりだった横田さんは「最初は新しいツールにピンと来ませんでした」と明かす。

「でもほかの職員が頑張って業務改善に取り組む姿を見て、これではいけないと一念発起。キントーンの活用方法や業務アプリの作成方法などを知るうちに、私にも使えそうだと思い、一緒に取り組むように。私自身が時短勤務のため、限られた時間でいかに効率的に仕事を進めるか考えていたタイミングでもあり、ちょうど良い機会でした」。こうして、部内の業務改革が本格的に始動したという。

業務改善の効果をきっかけに、新しいアプリが次々と誕生。

試験導入では、まず事業所一覧のCSVデータをキントーンに落とし込み、事業所情報を参照できるようにした。職員の反応を見て利便性の向上を確信した横田さんらは、数度にわたり部内で独自の勉強会を実施。キントーンで何ができるのかといった基本からアプリの作成方法までを簡潔に伝えつつ、部内全員が活用で
きる環境を準備していったのだという。

横田さん自身もアプリをつくり始め、それぞれにマニュアルを作成し、周知を繰り返していった。こうした地盤固めを経て、令和4年3月には部内全職員へのアカウント付与が完了。“全員”にこだわった理由は「事業所情報は部内の全職員が使うもの。業務を効率化させるには、全員が閲覧できる環境が必須だったのです」と岩崎さんは説明する。

その後は、職員から要望があれば随時改修するアジャイル方式で進めながら、アプリの数を増やしていったと横田さん。「例えば、以前は事業所からの定例報告をメールでバラバラに受け、それをまとめる作業をしていたのですが、アプリ化することでその作業自体が不要になり、時間が大幅に削減できました。ほかにも事業所向けのFAQや、簡単なアンケートなど、プラグイン(拡張機能)も活用しながら順次アプリ化しています」。

情報共有もペーパーレスも、全員参加だからこそ効果大!

現在では、各アプリが業務フローに溶け込み、全員が日常的に使用している状況だという。3割ほどの職員がアプリを作成できるようになり、本運用されているアプリ数は26まで増えた。活用のスキルを身に付けた職員がほかの人に教えてフォローし、つまずいたときには随時デジタル戦略部へ相談しているという。「キントーンはマニュアルなどが充実しているため、可能な限り自分で調べて進めています。KTLのフォローも心強いです」。

導入効果もあらわれており、宇上さんは「毎週の会議は、キントーンを使って開催しています。情報共有のスムーズ化に加えてペーパーレスを実現でき、年間約1万枚の節約につながっています」と評価する。さらに、業務引き継ぎにおいても効率化ができている。「情報が一元化されているので、新しく配属された職員にはすぐにアカウントを付与し、“ここに情報がまとまっています”と教えるだけで、スムーズです」。

こうした一連の成果について、宇上さんは「部内の全職員で活用しているからこその成果だと思います」と強調する。「DXは何かのツールで1つの事務がラクになるようなものではなく、業務フローの根底から変えていくもの。情報や便利な機能を全員が活用することで、効果が引き出せていると実感しています」。

部内全職員アカウント付与のメリット

供覧の一斉同時確認が可能に

紙の供覧では全員が確認するのに1件当たり数時間かかるが、アプリによる一斉通知で全員の同時確認が可能。上司のコメント追加や改編の履歴も残るため、見落としも防げる。

引き継ぎが効率的かつ正確に

事業所情報のデータが一元化されているので、検索すれば過去の事故報告や通報などが時系列で見られる状態になっている。異動してきた職員にその画面を教えるだけで済む。

監査指導部の業務改革のあゆみ

R.02
デジタル戦略部主催のkintone説明会に参加、試験的に導入して検証を開始

R.03
kintoneの本格導入を決定
部内勉強会を開催しつつアカウントを徐々に増やす
257万枚の文書を順次電子化

横田さん:分からないことは、庁内チャットルームで相談ができるので、知見のある他部局の職員から教えてもらいながらアプリを作成・改修しています。

R.04
部内全職員へのアカウント付与完了
マニュアルの作成など部内周知を行う
デジタル人材育成研修に参加した若手チームが業務改善やDXを進行

横田さん:今後は業務で関連する他部署にもこの仕組みを横展開したいと考え、他部署向け勉強会を企画しているところです。局全体がラクになればと思います。

デジタル戦略部からの一言

監査指導部での活用法も一つの好事例だと思います。庁内へもっと利便性を浸透させていきたいですね。その後は、庁内横断的に活用できるよう全職員にアカウントを付与できたら、という構想も練っています。また、活用拡大に伴い、ガバナンス強化にも取り組んでいく予定です。

 

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