ジチタイワークス

奈良県奈良市

奈良市役所がRPA導入を検討中 定型作業を自動化で業務効率化

RPA(ロボティック・プロセス・オートメ―ション)をご存知でしょうか。単純な事務作業をロボットにより自動化するものです。人間の業務負担を軽減するうえ正確なため、近年日本でも企業や自治体で注目されています。

これから増加の一途をたどると予想されるRPA。今回は、導入のための実証実験をスタートした奈良市のケースをご紹介します。

※下記はジチタイワークスジチタイワークスVol.4(2019年1月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
 [提供] 奈良県奈良市

導入の背景には職員減と業務多様化

平成30(2018)年5月、奈良市役所は行財政改革の一環として「RPA(ロボティック・プロセス・オートメ―ション)」導入のための実証実験をスタートしました。RPA(通称「アールピーエー」)とは、パソコン上での定型作業を自動化するソフトウェアのこと。帳簿入力や伝票作成、ダイレクトメールの発送業務などの作業をオート
メーション化できます。金融機関をはじめ、民間企業で導入が進んでいますが、地方自治体での事例はまだわずかしかありません。

奈良市はITサービスを手がける民間企業と共同で実証実験を進め、2019年度には導入したいと考えていました。導入を推進したきっかけは「現奈良市長の存在が大きかった」と、奈良市役所総合政策部行政経営課の課長・打上勧さんは語ります。平成20(2009)年に初就任した仲川げん市長は、人件費を削減するために業務内容を見直し、時間外手当の縮小を目指していました。その結果、ピークだった平成23(2011)年度の約13億2000万円から平成29(2017)年度の約8億円(企業局を除く市長部局等の実績)となり、年間残業時間を大幅に減らすことに成功。さらに、仲川市長の改革はそれだけでは終わりません。業務に費やす「時間」は減っていても、仕事の「やり方」そのものはどうなのか。エクセル表のコピー・ペーストや並び替えなど、単純作業に多くの時間を取られてはいないか。市長はそこに目を向けました。

政策の背景には、市の職員数の減少があります。団塊世代の大量退職を経て、奈良市の職員数はピークだった頃に比べると、現在は約3分の2程度だといいます。しかし一方で、業務は年々多様化。さまざまな業務を進めながら、より創造的で生産性の高い仕事に充てる時間を増やす必要があると考えた結果、仲川市長は単純作業を自動で処理できるRPA導入の実証実験を決めました。

作業時間8割減も!実証実験で大きな成果

導入にあたり、気になったのは県内や他の地方自治体での導入事例です。奈良県内ではまだ前例がなかったため、試行錯誤でのスタートとなりました。庁内全体に告知資料を配布し、各部署から候補を公募。最終的に、5つの業務に絞りこみました。適用した業務は、様式が決まっている会計業務や定型の書類作成業務などの事務作業がメイン。なかには、従来の約8割も作業時間が削減された業務もあったといいます。

現在は、効果検証時に得られた知見やノウハウを踏まえて、RPAを効果的に活用できる業務の検討を進めている段階です。

奈良市役所で作成したRPA導入に関する資料の一部

職員には好感触、業務標準化で効率アップ

日常的な業務のうちどの部分を適用すべきなのか、まずはRPAの機能や特色を職員に知ってもらうことが第一。奈良市では幹部説明会を実施しましたが、それだけではなかなか職員に実感を持ってもらえなかったといいます。「パソコン上でRPAの動作を見てもらい、作業に取り入れたことでその効用を本当に理解してもらえた」と打上さん。「こうした体験を繰り返していくことで、RPAを使った業務効率化の意識が少しずつ広がるだろう」とみています。

導入にかかる費用は、システム利用のライセンス料とコンサルティング費用が大部分で、庁内のシステム全体を改修するよりも初期投資は小さくて済みます。実証実験を終えた奈良市は、RPAをうまく活用すれば費用対効果を十分に見出すことができると考えています。

RPAを導入すれば作業の標準化が前提となるため、職員は効率化を自然と考えるようになります。人によってやり方や成果物が異なると、部署間を横断する仕事では特に作業効率が悪く全体のパフォーマンスが下がってしまいますが、そうした問題もすべてRPAが解決してくれます。奈良市の実証実験の結果が正式に発表されれば、他の自治体での導入を検討する試金石となりそうです。

 


奈良市役所の打上勧さん

How To

01都市が目指すべきビジョンの策定

奈良市では時間外勤務縮減などの働き方改革や「よりコンパクトな市役所」実現のための職員数の適正化といったビジョンが前提にあった。これに基づきRPA導入の実証実験に至った。都市が目指すべき将来像が描けているからこそRPAの必要性が明確になる。

02RPAシステムの管理会社を選定

複数のRPAのシステム管理会社が存在するなか、奈良市が現在の管理会社を選んだのは、企業側から市長へのプレゼンテーションがきっかけだった。業務効率化を求める市と、自治体での運用をテストしたかった企業側との思惑が合致し、導入推進が決まった。

03全職員へのRPA導入&実証実験開始の告知

RPA導入の目的や狙いを用紙にまとめ、庁内の各部署に文書で告知。留意点は、RPAの認知度がまだそれほど高くないことだ。RPAの仕組みや特性を知らない職員へも興味・関心を持ってもらうために、RPAでどんなことができるのか具体例を示すことも重要だ。

04庁内全体で適用業務を募集

告知と同時に各部署で実証実験に適用する業務を募集する。パソコン画面上でのIDやパスワードの自動入力、アプリケーションの起動や終了、蓄積されたデータの整理や分類など、適用できるのは主に事務関連の簡単な作業。募集後は十分な精査が必要だ。

05よりわかりやすく!幹部説明会を開催

RPAの機能とメリットをより深く理解してもらうために、各部署の幹部を集めて説明会を実施。作成したPR動画を観てもらうほか、実際にパソコン上で業務処理中のRPAの動作を見てもらった。すると、多くの職員から好感触が得られ、前向きな意見が集まった。

06実証実験及び結果の集計・分析

適用作業の実験結果を集計し、導入前と比べてどのくらいの成果が上がったのか分析・検証する。導入前と導入後の作業時間を比較して、その成果を報告書にまとめる。この結果をもとに、来年度の導入に向けてあらためて適用作業を精査し、さらなる効率化を検討する。

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