“職員不足の中でいかに住民サービスを向上させるか”というジレンマは、自治体共通の課題だろう。そうした中、昭和村では小規模自治体ならではの全庁を挙げたアプローチで、この課題に向き合っているという。現場の担当者に話を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.23(2022年12月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]サイボウズ株式会社
昭和村 総務課 企画創生係 主査
小林 勇介(こばやし ゆうすけ)さん
人口約1,200人のこの村が100年後もあり続けるために。
奥会津の山々に囲まれた小さな村である同村は、令和3年3月に村の最上位計画となる「第5次昭和村振興計画」を策定した。高齢化と人口減少が進む中でも心地よく暮らせる村を目指し、“先端的過疎への挑戦”を目標の一つに設定。DX担当の小林さんはこう語る。「これから日本各地で起きる問題に先行して直面しているこの村を、実証実験のフィールドとして捉え、産学官連携の取り組みを進めています。同時に、限られた職員数で住民サービスを支えるには、デジタルによる業務の効率化が必須です。そのため、令和2年頃から様々なツールを比較検討していました」。
選んだのは、専門知識のない職員でも直感的操作で業務アプリをつくれる「サイボウズ」の「kintone(以下、キントーン)」だった。採用の決め手は、「考え方次第で何にでも活用できると感じたため」だという。「守備範囲が広く、コスパもいい。すでに導入を検討していたLINE WORKSと連携できるのもうれしいポイントでした」。こうした評価のもと、令和3年4月にキントーンを導入。各課の若手職員8人で結成されたDX推進チームとともに、業務の改革に踏み出した。
スモールスタートから全職員へ迅速に展開し、意識を変える。
初年度は14アカウントで業務効率化に着手。アプリの内製は小林さんが担当し、他自治体の活用事例を参照しながら進めたという。導入直後は、従来エクセルで管理していた住民からの申請受付と進捗管理をアプリ化。同時に、必要に迫られていた新型コロナワクチンの接種予約システムを4月末までに構築するなど、スピード開発を続けていった。
「とにかくやってみよう、という気持ちで様々なアプリを開発しながらも、特に“電子決裁”は効率化の効果が大きいと考えていました。次年度の運用開始を目指して、決裁フローの確認や内部規定の調整など、準備を並行して進めました」。
令和4年4月にはアカウント数を48まで増やし、ほぼ全職員が電子決裁の機能を活用できるように整備。紙からの脱却はスムーズに進まないケースもあるが、対話を繰り返すことが大切だと小林さんは言う。「最初は“紙で出力したい” “申請書の様式が違って大丈夫なのか”といった相談もありました。紙だから信頼性が高いとはいえませんし、電子決裁なら日時や履歴が全て残りますよ、といった点を説明しています」。
電子化やDXは“目的”ではなく村の未来を幸せにする“手段”。
令和4年9月時点で約130のアプリが稼動中だという同村。「紙の手続きや回覧より処理が早くなったと実感しています。例えば、超過勤務申請が1,000件を超える年もありますが、その事務作業がほぼゼロになりました。紙の削減にもつながっています」。
今後はマイナンバーカードによる公的個人認証を導入し、住民の電子申請も範囲を拡大予定だという。これらの開発を担いつつ、小林さんはすでに次のステップを見据えている。「窓口業務での紙も減らしたいし、村の公式LINEと連携してもっと便利にしたい。各アプリはより使いやすくカスタマイズしたいですね。それと同時に、われわれ職員の考え方も変えていかなければなりません。DXは全て村の未来のためにやっていることですから」。
“先端的過疎”の実現に向け挑戦を続ける同村。現在は公共インフラとして村内全域にWi-Fiを整備中で、それを活用した様々な施策を展開予定だ。村全体を大きな実験室として試行錯誤を続けた結果が、超高齢社会の好例となる日がくるかもしれない。
自治体規模や業務を問わず活用可能!柔軟に用途が広がる業務改善ツール。
キントーンは、住民サービス向上や業務効率化に貢献するアプリを簡単に内製できる、業務改善プラットフォーム。現在約190の省庁・都道府県・市区町村が活用中。
昭和村 キントーン活用の歩み
令和3年度:14アカウント DX推進チーム職員 60アプリ
庁内業務
申請受付管理、超過勤務申請など
住民申請
ワクチン接種予約、住民提案・提言受付など
まずは庁内でスモールスタート。住民向けサービスも情報セキュリティのリスクが低いものから提供を開始し、対象を徐々に拡大。
令和4年度:48アカウント ほぼ全職員 130アプリ※
庁内業務
電子決裁スタート
住民申請
個人情報を含む申請も受付
全庁に利用を広げ、電子決裁で効率化とペーパーレスを進める。年度内にはマイナンバー認証も導入、住民の電子申請も拡大する予定。
※令和4年9月時点
小林さんに聞く!全職員利用のメリット
職員の出勤簿もアプリで管理がラクになりました。また、自治体には業務ごとに個別のシステムがあって煩雑。それらのシステムとも連携し、今後は個人・各課・全体の業務環境をキントーンでシンプルにしたいですね。
活用の幅は「ガブキン」で広げる
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