ジチタイワークス

福井県坂井市

国や県・部署の垣根を越えて住民の命を守る、防災×土木DX。

災害発生時は、多方面から情報を収集し、それらを適切に発信する必要がある。マンパワーが限られている中、自治体はどう対処すればいいのか。坂井市では国や県が管理する情報と連携した総合防災情報システムで、地域の安全を守っているという。

※下記はジチタイワークスINFO.(2020年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
※掲載サービスは、2022年10月時点では福井県内限定の提供となります。
[提供]株式会社ほくつう

災害対策本部室の新設に合わせ改善を目指したシステムの課題。

福井県は、全域が豪雪地帯として指定されており、冬季には積雪による交通まひなども発生する。そのたびに職員は各方面から情報を収集するが、そこに課題を感じていたと向川さんは語る。「道路情報は国や県など管理者によって分散しており、個別に情報収集しなくてはなりません。また、現場からの情報の確認に時間がかかるのも難点でした」。以前は現場に行った職員が撮影した画像をメールで送ったり、庁舎に戻ってカメラからダウンロードしたりしていた。このタイムラグをなくしたいと考えていたという。

また、課題は住民向けの情報発信にもあった。「防災行政無線やエリアメールなど複数のツールがあり、それぞれ異なったシステムで端末も別々なので、対応職員が複数必要な上、時間がかかるのも問題でした」。

当時、同市は令和2年の庁舎改修を控えていた。同時に災害対策本部室を新設することとなり、あわせて災害情報システムも充実させようという計画が浮上。平成29年度から準備を開始し、システムを検討する中で白羽の矢が立ったのが、「ほくつう」が手がける「総合防災情報システム」だった。

新たなシステムの選択は、実績・コスト・柔軟性が決め手。

ほくつうは、石川県に本社を置き、北陸を中心に電気通信工事やシステム関連サービスなどを提供している企業。国土交通省や県の道路・河川管理情報システムなども手がけており、「こうした実績から信頼性が高いと評価しました」と向川さん。

また、コスト面のメリットも大きかったという。「パッケージ型のシステムも検討しましたが、不要な機能も多く、国や県のデータと連携するには別途設備やシステムが必要と、高額の見積もりになりました。同社は国や県の関係システムを構築しているため、スムーズに連携ができます。さらに、必要な機能のみをオリジナルで設計できるため、導入費用を抑えられました。後に機能を追加したり、他システムと連携させたりといった拡張がしやすい柔軟性も魅力でした」。

また、現場の職員がスマホから報告や画像をシステムに送信する際は専用アプリなどが不要で、緊急時に場所や端末を選ばず、迅速に対応できる。こうした実用性も総合的に評価し、同社の総合防災情報システムを随意契約で発注することを決定した。

新システムの構築と納品は、令和2年度末に完了。本番環境でテストを重ね、令和3年8月に本格運用を開始した。同月末の防災訓練も、新システムを使って行われたという。

土木部門で日常的に活用し、有事の迅速対応につなげる。

その後、県が市町への展開を進めていた「除雪状況“見える化”推進事業」においても、同社の「除雪業務支援システム」を導入し、総合防災情報システムと統合。除雪作業の指示や進捗確認といった場面で活躍している。さらに職員の市内パトロール
用車両にもGPS端末を設置し、同システムで動きを確認、的確な指示が可能となった。こうした機能は土木部門の職員からも、“とても使いやすい” “除雪業者に指示を出す際の負担が減った”などと好評だという。

災害発生時、最前線で現場の対応を行うのはこの土木部門の職員だ。パトロールや除雪作業などの通年業務でも同じシステムを使えるのは、効率やコストパフォーマンスの良さだけでなく、緊急時にも迅速に“使いこなせる”ことにつながる。

令和4年8月の大雨の際には、市内で複数の箇所が冠水したが、システムをフル稼働して情報収集。現場パトロールに出た職員が冠水した箇所や通行止めにした道路などを、画像とともにシステム経由でリアルタイムに報告した。

「瞬時に状況が把握できるので、迅速な対処ができ、県や警察、消防への報告もスムーズでした」と宮永さんは振り返る。

庁舎改修時に整備した災害対策本部室。大型モニターやカメラなどを設置し、同システムを通して本部と各現場を双方向につなぐことで、本部の情報収集および意思決定をさらに強化している。
 

坂井市の総合防災情報システム
機能とメリット

過去の災害経験をもとに、同市とほくつうが協働して開発したオリジナルのシステム。国や県など管理主体の枠組みを越えたデータ連携を実現しつつ、様々な防災関連情報を集約。防災・土木の両部門が使いやすいシステム設計で、住民に安心・安全を提供している。

メリット1.情報を一元化し、リアルタイムに収集!本部の意思決定を支援する

地図

国や県とのデータ連携により、カメラ・センサー・通行規制などの道路情報や、河川、気象情報などを地図に集約。

情報記録

現場の職員が対応状況や画像をスマホなどからシステムへ投稿。本部は地図上やタイムラインで瞬時に把握できる。

メリット2.住民への情報発信を迅速化

一斉送信

集約した防災情報を、防災アプリ、メール、SNS、ケーブルテレビなど複数メディアに一斉配信。職員負担も軽減する。

メリット3.災害時の諸業務も効率化

参集

災害レベルに応じて職員への参集指示を自動配信し、参集可否や安否状況が可視化される。出退時間の記録機能も。

システムの横連携で県下の防災プラットフォームを!

導入から1年、幸い大規模な災害は起きていないが、日々の運用の中で情報は蓄積されている。「類似した事例が起きた際に、前回はどう対応したかといった内容を職員がすぐに把握し、心づもりができるはずです。システムの運用については、職員の習熟度が上がれば、今後職員数が減少していく中でも、迅速なオペレーションや災害対応が可能になるでしょう」と向川さんは先を読む。

同時に、他市町でも同様のシステム導入が広がることに期待しているという。「他市町とも災害情報を共有できれば、さらに防災の輪を広げることが可能になるでしょう。県などにもリードしてもらいながら、地域をつなげる防災プラットフォームが構築
されるのが理想です。そうしたシステムの上で、さらに住民の安心・安全を守っていきたいですね」。

坂井市 総務部 安全対策課
左:課長 向川 嘉宏(むこうがわ よしひろ)さん
右:主任 宮永 英之(みやなが ひでゆき)さん

ほくつうの防災×土木ソリューション

平時は土木関連部署での業務で活躍し、有事には災害対策本部の中枢となるマルチシステム。

一般的に、国・都道府県・各市区町村の土木や防災のシステムはそれぞれ別々に構築されており、データの連携には相応の費用と期間がかかる。しかし福井県域では、国・県の両システムを同社が手がけているため、その利点を最大限に活かしたシステムが構築可能だ。

道路情報“見える化”ソリューション
国・県・県警・市町・NEXCOのもつカメラ・センサーなどの情報を総合地図画面(GIS)に一元的に表示し、面的な道路管理を実現する福井県道路管理情報システム「FRIS(フリス)」。

総合防災情報ソリューション
左記の道路情報に加え、バラバラに存在する各種情報を集約する総合防災情報プラットフォーム「X-sis(クロシス)」。

さらに市町を支える強み

強み1.費用負担なしで機能アップグレード

国・県・市町でシステムが異なる場合、いずれかの機能アップグレードを他システムに反映するには、同程度の費用が発生する。しかし、福井県域なら費用負担なしで市町のシステムにも反映される。

強み2.機器の設計・施工もワンストップで対応

同社ではカメラ・センサーなどの設計・施工・メンテナンスまで、トータルサポート体制(24時間3 6 5日)によるワンストップソリューションを提供。市町の課題や予算に合わせた最適なシステム構築が可能となる。

強み3.AIなどの活用で今後も進化を続ける

収集した情報やビッグデータをもとに、AI技術を活用した水位予測や、豪雪時のスタック検知などの突発事象検知の実証実験を行っている。人手不足を補い、被害を最小限に抑える新たな仕組みを構築中。

開発者の思い

当事者目線で開発したシステムで、組織を越えた防災力を福井から発信したい。

現在、多くの民間企業が防災システム開発に取り組んでいるが、同社には地場の企業だからこその強みがあり、県や坂井市のシステムでもそれが活かされている。ここでは同社のSEに、システム開発への思いを語ってもらった。

ほくつう 福井支社 企画開発課
課長代理 増永 憲司(ますなが けんじ)さん

現場から見えた課題と地元企業ならではの共感。

当社はもともと、電気通信工事を多く手がける会社です。道路や河川のカメラ・センサー、道路情報表示板などの設置から保守までを行っています。雪害が多い福井県では、特に道路情報共有の迅速化が以前から叫ばれていました。当社のノウハウを活かしてさらに地元の安全・安心に貢献したいと考え、平成17年にシステム部門を設立。以来、国や県から委託を受けてシステム開発を行っています。

私たちがこだわっているのは、機能が固定されたパッケージシステムではなく、自治体の課題に合わせたオリジナルシステムをつくること。現場の声を反映しながら、システムの機能追加や他システムとの連携といった柔軟性も確保できます。それでもコストを抑えられるのは、地域の中小企業ならではの強みです。

自治体の課題を知る企業が住民の視点で開発する。

これらのシステム開発の根底にあるのは、地元民として感じた疑問です。豪雪などの災害時に住民が走行可能なルートを探そうとしても、国・県・市町それぞれがその管轄のみの情報公開をしていては、ルートを面的に把握できません。私自身、住民として不便を感じており、そうした課題を解決したいという思いがありました。

同時に、行政と長くお付き合いしていることもあり、“縦割り”や“異動”などにより、相互連携が難しいという事情もよく理解しています。これらの課題には我々のような民間が貢献すべきだと考え、当初から組織や管轄を越えた連携ができるシステムを目指してきました。総合防災情報システムでは、こうした地元への思いと、設計・施工・メンテナンスからシステム開発までをカバーする総合力を活かすことができたと自負しています。

今後も進化を重ねながら福井全域を総合サポート!

防災に関わるシステムは住民の命に直結しますから、災害発生時に停止することがあってはなりません。そのため、運用開始までには様々なケースを想定しながらテストを繰り返し、予想外のトラブルが発生したときには迅速にサポートできるようなシミュレーションも行っています。令和3年の豪雪時には福井県のサーバートラブルの復旧に協力し、感謝状をいただきました。

防災システムは日々進化しています。AI 、衛星画像など、今後も新たなテクノロジーが次々に登場するでしょう。我々もそうした進化と足並みを揃えながら、リソース不足に悩む自治体の課題解決に貢献し続けたいと考えています。

福井をよく知る社員が、すぐに駆け付けます!

提案・設計から、システム開発・施工・メンテナンスまでのトータルサポートを、全て地元の社員で対応します。個々の自治体に合った仕様での全体最適化が可能です。気軽にご相談・お問い合わせください。

お問い合わせ

サービス提供元企業:株式会社ほくつう

福井支社 営業部 社会インフラ営業課

TEL:0776-24-9511
住所:〒918-8231 福井県福井市問屋町2-43

※掲載サービスは、2022年10月時点では福井県内限定の提供となります。

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