WEB上で意見を募集し、議論ができる政策検討プラットフォーム「アイデアボックス」。デジタル庁で採用されるなど、注目を集めている。今回、県内市町と連携し共同運用を行った福井県の担当者に、導入の背景や成果を聞いた。
※下記はジチタイワークスVol.20(2022年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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県民の暮らしに直接関わる市町との連携が必要不可欠。
国による「自治体DX推進計画」の策定により、ますます地域社会のデジタル化・スマートシティ化が重要視されている。その中で同県は、県内の市町、市民団体と連携してアイデアボックスの活用を開始。その背景には、県のDX推進プログラム「スマート福井」があったという。スマート福井では、生活のDX(くらしのデジタル化)、産業のDX(しごとのデジタル化)、行政のDX(自治体のデジタル化)という3つの方針を掲げている。担当の角さんは「令和3年度にDX推進室を立ち上げ、全庁を挙げて取り組む中で、県民の考えや動向を知りたいと考えていました」と話す。
同サービスの存在を知り、使ってみてはどうかという話も出ていた矢先に無料トライアルの情報を入手し、迅速に導入が決定した。県全域を巻き込んだ運用は全国初だという。「特に生活のDXなど、直接県民と関わるのは各市町が主となります。そこで声をかけ、今回の連携に至りました」。
建設的な意見が多く集まり短期間でも大きな手応えが。
県主導の運用となるため、スタートに合わせ、事前に市町に対して“県民に意見を聞いてみたい課題はないですか”と、案を募った。初の試みだったこともあり、ユーザー数や投稿数にあえて目標は設定せず、まずやってみることに重きを置いたという。
主な周知方法は、プレスリリースと県のホームページ、そして新聞で取り上げられた際の記事のみだったが、令和4年1~2月に実施した2カ月間でおよそ90人の登録があり、コメント登録数は460件を超えた。「今までもパブリックコメントなどを実施してきましたが、それと比較しても想像以上の手応えがありました。県のプロジェクトにしては登録数が寂しいという声もありましたが、2カ月という短い期間でしたので、上出来だったのではないでしょうか」。
そのほか、議論の活性化を図るため、シビックテック活動団体「Code for FUKUI」と連携し“場を盛り上げる”工夫をしたことも役立ったという。大きなテーマでただアイデアを待つのではなく、市町の身近な課題を投稿することでハードルを下げ、誰でもコメントしやすい雰囲気をつくった。
庁内でも職員としてではなく、一県民として意見を出すケースが見られるなど、盛り上がりを見せたそう。「私も県民として賛同したい意見がたくさんありました。行政目線ではないアイデアが出ること、県民同士でアイデアがブラッシュアップされる点にメリットを感じています」。
◆管理者向けのサポートも充実
・AIによる不適切投稿のアラート機能
・集まった意見の自動取りまとめ機能
・運用マニュアルの提供など
福井県のアイデアボックス活用例
1.アイデアを募集する
生活、産業、行政、自由提案の4つのカテゴリで、DXによって解決したい地域課題やアイデアを募った。
2.アイデアが投稿される
県内市町から集めた課題をDX推進課が意見募集として投稿。県民からも具体的なアイデアや課題が寄せられた。
3.コメントや投票でアイデアが進化
投稿へのコメントや投票により議論が活性化。市町とのやりとりや、県民同士での意見交換も見られた。
4.集まったアイデアを効率的に分析し活用
期間終了後にアイデアを集約。市町や担当各所に正式な回答を依頼し、実現に向けた意見の活用を促した。
実現したアイデア
大規模なイベントの参加受付を、手書きではなくスマホなどでも可能にしてはどうか。
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回答
職員がスマートフォンによる参加登録の仕組みを作成。令和4年3月25日から複数施設で導入しています。
県教育総合研究所のHPを更新し、ノウハウを教師以外も活かせるようにしてほしい。
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回答
令和4年3月1日に更新しました。基本的に教職員対象ですが、生徒向けコンテンツも掲載しています。
双方向の活発な意見交換で県民のアイデア実現を目指す。
今回集まった意見の中で、すでに実現したものが4件、前向きに検討されているものが6件と、早くも具体的な成果が上がっている。手応えを感じる一方で、「行政側からのリアルタイムな反応が欲しい」という指摘もあった。今回は投稿時にはお礼のコメントのみで、内容は後日取りまとめを行ったため、即時性をもたせることができなかったが、将来的には市町に自由に投稿、活用してもらうことで素早いレスポンスをねらう考えだ。
「投稿やコメントの内容は誰でも自由に閲覧することができるため、どの市町にとっても課題解決のヒントになると確信しています。DX推進課はあくまで旗振りと橋渡しの役割。多くの市町や県民に参加するメリットを感じてもらい、双方向の意見交換の場として盛り上げていきたいですね」。
2カ月の運用を終え、今後は本運用に向けてのルールづくりが急務だ。参加者をどう増やしていくか、管轄を越えたスピーディーな意見活用の実現など、乗り越えるべき課題も多い。取り組みを継続することでDXの推進、ひいては県民の豊かで暮らしやすいまちづくりへつながることを期待したい。
福井県 地域戦略部 DX推進課 参事
角 浩吉(かど こうきち)さん
全国での利用実績
官公庁にて12年間の利用実績があり、デジタル庁立ち上げの際の意見募集などにも採用されている。
●デジタル庁のほか、内閣官房、経済産業省、国土交通省、文部科学省などの官公庁
●横浜市、千葉市、三重県などの地方自治体
無料トライアル実施中
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