ジチタイワークス

神奈川県平塚市,広島県尾道市,大分県日田市,熊本県益城町

罹災証明書交付までの業務をデジタル化し、被災後対応をサポート。

発災後、住民が生活再建を図るために必要な罹災証明書だが、交付までに膨大な手間と時間がかかることが課題となっている。独自のデジタル技術によって、これらの業務効率化に取り組む「富士フイルムシステムサービス」の担当者から、課題解決のヒントを探る。

※下記はジチタイワークスVol.19(2022年4月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]富士フイルムシステムサービス株式会社

富士フイルムシステムサービス
経営統括本部 デジタル戦略推進部
佐伯 聡(さえき さとし)さん

職員の業務負担軽減が住民の生活再建につながる。

罹災証明書を交付するためには、被災住家現地調査の計画策定、人員確保、調査班の編成、調査記録作成などを、可能な限り迅速に遂行しなければならない。被災住民を支援する生活再建支援などは、罹災証明書がなければ申請できないからだ。

しかし、多くの自治体は、罹災証明書交付に関する業務を“経験値と人力”に頼っており、被災経験が少ない自治体では計画以上の時間を費やすことも珍しくない。こうした背景のもと、同社が令和3年から開発に着手したのが、独自のデジタル技術を活用した「罹災証明書交付迅速化に向けた取り組み」だ。

被災状況把握や計画策定をデジタル技術により迅速化。

「当社は、CT画像などをAI解析して診断する独自のデジタル技術をもっています。被災地の情報収集でも、この技術をドローンや衛星カメラによる画像解析に応用。広範囲にわたる被災状況把握の迅速化を目指しています」と佐伯さん。「解析結果を端末上の地図情報に落とし込むことで、地域ごとの被害の大小をひと目で分かるように示せます。よって現地調査時に重視すべき地域を事前に選別できるなど、計画策定の効率化に役立ちます」。

また、班編制についても、「AIが経験者と未経験者を織り交ぜた班編制を行うシステムを提供します」とのことで、調査に必要な人数などを割り出すこともでき、応援要請時の判断材料に使えるという。

さらに、手書きの調査用紙は、端末に表示される項目にチェックを入れる仕様に。「1軒当たりの調査時間の短縮や帰庁後の入力作業の効率化が実現できるほか、未経験職員を対象にした研修も省略可能。工数・期間とも大幅な削減が見込めます」と自信を見せる。

同社は現在、システムの完成に向けて被災経験をもつ複数の自治体と協定を結び、共同研究を行っている。「被災経験が少ない自治体にも、被災後業務の大変さを知ってもらいたいのです」。下記、3自治体(熊本県益城町大分県日田市広島県尾道市)へのインタビューでは、罹災証明書交付に関する業務を効率化することの重要性を明確にすべく、各自治体が被災後に悩まされた課題について語ってもらった。

システム導入後の業務改善イメージ

 

case1:熊本県益城町 人口/33,517人 世帯数/13,902世帯(令和4年1月31日時点)

熊本地震発生後、調査マニュアルなどがなく被災住家現地調査が長期化した益城町。被災後業務を効率化することの重要性を痛感したという担当者が、当時を振り返る。

益城町 危機管理課 課長
岩本 武継(いわもと たけつぐ)さん

調査開始までの準備も交付を遅らせる一因に。

昭和29年の町制施行以降、住家被害認定の対象となる災害がなかった益城町。「地域防災計画は策定していましたが、調査マニュアルなどは準備していませんでした」と岩本さん。しかし、平成28年の熊本地震では、町内に複数の活断層が存在することもあり、多数の住家が被災。発災2週間後から1次調査に着手したが、計画策定の段階からつまずいたそうだ。「幸いにも、被災経験がある自治体から派遣された職員が調査行程にも詳しく、指示を仰ぎながら調査を進めました」。

調査開始後も、調査予定地の地図の手配や調査結果の取りまとめなど、煩雑な業務が続き、1次調査だけで1カ月以上が経過。また、職員の経験差によって被害判定に違いが生じたことなどから、2次調査希望の住家は40%を超え、調査終了までに半年以上を費やしたという。

素早い情報収集が迅速な被災者支援を可能にする。

初の大規模被災を通じて、被災後業務に関する様々な課題が浮上したのに加え、地震による地盤沈下で、3カ所の内水氾濫危険地区が出現。対処に追われた多くの職員が“次の災害に備えて、業務のマニュアル化と効率化が必要”という思いを強めていたという。

共同研究を実施する同社のサービスに対しては、「“どの住家がどの程度の被害を受けているのか”という情報が、ドローンなどを通して速やかに収集できるだけでも、職員の工数減少につながり、迅速な被災者支援が実現できるはずです」と答えてくれた。

case2:大分県日田市 人口/62,903人 世帯数/27,388世帯(令和4年1月31日時点)

近年、3度も激甚災害級の豪雨被害を受けた日田市。頻発する自然災害に備えて、罹災証明書交付に関する業務をデジタル化する必要があるのか。担当者の考えを聞いた。

日田市 税務課
左:原田 陽広(はらだ たかひろ)さん
右:菅原 誠悟(すがわら せいご)さん

地理的条件を背景に水害に特化した対応に注力。

山に囲まれ、九州最大級の河川の上・中流域にあたる地理的条件から、同市は以前から、水害対策に余念がなかった。例えば、日頃から職員間で自発的に被災後業務の勉強会を行い、例年、梅雨前には、河川氾濫による水害に特化した調査マニュアルの整備を実施。「令和2年7月の豪雨では350件近い住家・非住家被害が発生しましたが、発災から2週間ほどで罹災証明書の交付を始められました」と菅原さん。

「とはいえ、地図に色鉛筆で書き込んだり、資料は表計算ソフトに落とし込んだりと、かなりの部分を手作業が占めており、効率化の限界を感じていました」。気候変動の影響なのか、山沿いに線状降水帯が発生するタイプの集中豪雨が増えていることから、被災後業務のさらなる効率化は喫緊の課題になっているという。

職員数が減少する中で業務のデジタル化は必須。

「本市は市域が広いので、庁舎から車で1時間以上かかる地域も多数あります。現地に行かずとも、衛星カメラなどで被害状況が可視化できるようになれば、便利だと感じました」と原田さん。

さらに、「職員数が減少する中で、罹災証明書交付に関わる業務の省力化は必須だと感じています。そのためには、デジタル技術によるサポートは欠かせないでしょう。省力化が実現すれば、人命救助に関わる業務や避難所運営に割ける職員数も増えるはずです」と、同システムの導入により、あらゆる防災活動に好影響を与える可能性があることを、期待を込めて語ってくれた。

case3:広島県尾道市 人口/131,578人 世帯数/63,822世帯(令和4年1月31日時点)

DXによる地域課題解決を目指し、実証実験サポート事業のパートナー企業を公募した尾道市。防災・減災分野で同社を採択した背景には、過去の豪雨災害があったという。

尾道市 企画財政部 資産税課
奥本 修史(おくもと しゅうじ)さん

過去の大規模豪雨災害時に手探り状態で調査を遂行。

山と海に囲まれた地形の同市は、豪雨による土砂災害だけでなく、地震による津波に対しても、危機管理対策を構築する必要性を感じているという。特に近年、大雨による大・中規模の災害が頻発しており、平成30年には、大量の罹災証明書を交付しなければならない規模の豪雨災害が発生。「当時、被災住家現地調査の経験をもつ職員がほとんどいなかったため、手探りで業務を進めたと聞いています」と奥本さん。

その経験をもとに、調査に関する取り組みの方向性は固まってきたものの、人事異動などで知識の蓄積と共有が進まず、「現在でも課内には、調査の経験および、住家の被災程度を判断・評価できるスキルをもつ職員が少ない状況です」と現状を語る。

実証実験で効率化を実感、機能向上にも期待したい。

令和3年より、尾道市実証実験サポート事業を開始し、懸案だった防災・減災分野で、同社の取り組みを採択。被災後業務の進め方を見直すことにした。同年11月、ドローン映像をもとに調査班を自動編成する機能を試行し、公共施設を被災住家に見立てた現地調査の実験を実施。実験は2日間だったが、そこに至るまでの打ち合わせなどを通じて、“被害住家台帳を住基情報などとどうリンクさせるか”などの課題が抽出できたという。

「調査に関わる職員を登録する際、災害時対応の経験値を入力することで適切な班編成ができる機能は、業務の迅速化につながると感じました。チュートリアル機能などが追加されれば、経験がない職員の活躍にも期待できます」。

 

 

お問い合わせ

サービス提供元企業:富士フイルムシステムサービス株式会社

TEL:03-3291-2600
住所:〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-7-1 興和一橋ビル5F

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