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"組織の力"と"地域の力"で子どもの学びを支えていく。

不登校の児童・生徒をまち全体で支援する体制の構築
東日本大震災やコロナ禍を契機に、不登校の問題に向き合った大槌町。教育委員会にスクールソーシャルワーカーを配置し継続的に現場に関わる体制を構築。さらに、総合教育会議の活用で理解者を増やしているという。
※下記はジチタイワークスVol.46(2026年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

大槌町
教育委員会 学務課
スクールソーシャルワーカー
南 景元(なむ きょんうぉん)さん

大槌町
教育委員会 学務課
教育相談員
大森 厚志(おおもり あつし)さん

大槌町
教育委員会 学務課
けやき共育推進員
村田 輝大(むらた きひろ)さん
環境の変化で増加した不登校をまち全体の課題として捉える。
平成23年の東日本大震災で、町内にある5校の小学校のうち4校が被災。以前より検討されていた学校の統廃合や小中一貫校化の対応とともに、子どもたちの心のケアも急務となった。震災後は不登校の児童・生徒が増加したものの、学校へ派遣された心理・福祉の専門職の尽力によって、一時的に減少。しかし令和3年以降、コロナ禍で再び増加したことをきっかけに、教育課題としてまち全体で向き合うことになったという。
スクールソーシャルワーカーの南さんは「コロナ禍を境に不登校の概念が変化したと感じています。学校に行きたくないというより、体調不良などで休むうちに欠席日数が30日を超えてしまう。保護者の不登校に対する考え方も多様化してきました」と話す。こうした変化を背景に、教育委員会だけでの対応が難しくなっていた。そこで、不登校の相談支援など、これまでの活動を統合し、令和5年に「けやき共育」を始動。これは、学校・家庭・地域が一体となって子どもの成長や学びの多様性を支える取り組みだ。
この体制では、町が正規雇用したスクールソーシャルワーカーが、継続的に各学校や家庭と関わる。「学校にいるスクールカウンセラーに相談できる子どもばかりではありません。登校できなかったり、悩みを打ち明けられなかったりする子どもに対して家庭訪問で自ら接点をつくり、首長部局と連携するのが私の役割です」。中学校の校長を経験し、現在は教育相談員を務める大森さんは「スクールソーシャルワーカーが長期的に現場に関わることで、子どものささいな変化にも気づきやすくなります。また、福祉の専門職でもあるので、健康福祉課との調整もスムーズに進めることができています」と話す。

▲体験学習の一例。地域住民が講師となり、まちならではのプログラムを子どもたちに提供している。けやきルームのスタッフも見守る。
有識者も集う総合教育会議で現場の思いや変化を伝える。
同町では、小・中学校の教育課程の中に「ふるさと科」を導入。年30回ほどの活動のうち、3回は子どもたちの内面を育む「こころの授業」の機会がある。ふるさと科のプログラムは、郷土料理づくりや自然・文化体験など様々で、地域住民が講師を担っているそうだ。
不登校傾向にある小・中学生、高校生が通う教育支援センターけやきルームでもこれらをアレンジし、木工教室や表現ワークショップなどを実施。「不登校になると地域と関わったり、多様な人と触れ合ったりする機会が少なくなります。国語や算数などの座学だけではなく、体験学習を通じて個々の経験の格差を埋め、学びの選択肢を保障したいと考えています」。プログラムの参加判断は子どもたちに委ねるなど、自由度の高い設計だ。
全ての子どもが安心して学習に取り組める環境を整えるためには、関係者の相互理解が欠かせない。そのために活用しているのが、総合教育会議だ。同会議には町長、副町長、教育長のほか、児童精神科医など外部の有識者も参加する。「教育委員会から現場に携わる職員も出席し、会議の場で子ども一人ひとりの変化を伝えています。そうすることで理解が深まり、予算を含めた強力なバックアップが得られるようになりました」。

不登校対策から未然防止への展開で支援の幅を広げる。
こうした体制が整う一方で、発達特性や集団への苦手意識がある子どもの顕在化により、不登校は低学年化・増加しているという。しかし、けやきルームで児童・生徒に日々寄り添う村田さんは「当初は暗い顔をしていた子どもが、体験を通じてやりたいことを見つけ、明るい顔を見せてくれるようになりました」と話す。このような前向きな変化を着実に積み重ねていきたいと意欲を見せる。
総合教育会議からの提言を受け、令和7年度からは教育活動の中で子どもたちを支える仕組みにシフト。不登校の未然防止などに取り組んでいる。「個別支援が必要になる前から、学校や保護者と接点をもち、子どもたちが安心して過ごせるようにしていきたいです」と南さん。具体的な施策として、こころの授業の充実や、教育相談の拡充を図り、保護者へのアプローチも進めていく。
今後の展望については「けやき共育を通じて、幅広い世代で学ぶ喜びを分かち合い、互いに多様な生き方を尊重できる地域を育んでいきたいです。これからも、子どもたちが町木のけやきのようにしっかりとまちに根を張り、のびのびと成長できるようにサポートしていきたいと考えています」と力を込めた。
















