静岡県静岡市

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稼ぐアリーナを官民で目指し地域の価値へつなげていく

稼ぐアリーナを官民で目指し地域の価値へつなげていく

官民連携で進めるアリーナ整備事業

令和8年7月から設計が始まった「静岡市アリーナ」。目指すのは、民間企業のアイデアを引き出し、地域に価値を還元する“稼ぐ施設”だ。前例のない事業を、市はどう形にしたのか。その裏側には、官民双方の工夫と挑戦があった。

※下記はジチタイワークスVol.46(2026年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

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静岡市
社会共有資産利活用推進課
東静岡アリーナ共創係
係長 本多 桂輔(ほんだ けいすけ)さん

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静岡市
社会共有資産利活用推進課
東静岡アリーナ共創係
副主幹 福島 匠(ふくしま たくみ)さん

市が描くアリーナの将来像に対してより高い目標と具体策の提案が。

人口減少や若者の市外への流出を受け、現市長は、若い世代が夢を描き、希望をもてるまちを実現するため、アリーナ整備事業と東静岡地区の新たなまちづくりを推進。大型事業を“未来への投資”と捉えたという。公募を経て、「インフロニア・ホールディングス(以下、同社)」を含む10社が出資するSPC(※1)がパートナーとなった。同社は「前田建設工業」などを傘下にもち、インフラ分野の技術を活かした事業を展開。企画から設計・建設、運営まで関われる総合力が強みだ。

地域への還元と“稼ぐ施設”の整備という同市の構想に応じ、提案ではイベントがない日も人を集める工夫や、施設利用料だけに頼らない収益モデルが示された。年間来場者数については、市想定の約72万人を上まわる約112万人の高い目標が掲げられたという。「アリーナの効果を地域全体へどう波及させるかまで描かれており、将来像に非常に期待できました」と本多さん。同市の構想に、民間側も高い目標と具体策で応えた形だ。この連携の背景には、市が練り上げた公募条件があった。

※1 SPC=Special Purpose Company(ある特定の事業を行うために設立された事業会社)



徹底した調査と対話を積み重ね高い事業性を生む公募条件へ。

「この課に異動するまで、アリーナに関するノウハウは何もありませんでした」と福島さん。「しかし市長の考えを資料に反映するうちに、私自身も次第に描くべき未来が見えてきました」と続ける。その未来を形にするには、事業の進め方そのものを問い直す必要があったという。検討の末、同市が選んだのは、PFI(※2)手法の一種で、民間が建設した施設を市が所有するが、運営権は民間に設定する「BT+(ビーティー・プラス)コンセッション方式」。事業者の運営の自由度を高め、採算性向上と自治体の財政負担低減が見込める先進手法だ。「同時に、公募では、経済効果を含めた事業内容を重視するため、事業計画に多く配点する評価基準を設定しました。当市独自の評価基準です」と本多さん。

これらの設定には、徹底した情報収集と対話が欠かせなかったという。他地域のアリーナを視察し、周辺のまちづくりや寄附金の集め方まで調査。民間企業約60社との対話も実施し、計画を練り上げた。「当市の考えを伝える一方、事業者からも遠慮せず意見を出してもらいました。“前例がないから無理”と判断せず受け止める。私たちにとっても対話は勉強の機会でした。官民で活発に議論することが事業効果を高めると考え、対等な立場を意識して向き合いました」。

※2 PFI=Private Finance Initiative(民間の資金、経営・技術的能力を活用して公共施設の設計・建設・運営などを行う手法)

大規模投資への理解を得るため効果検証と丁寧な説明を重ねる。

一方、公共事業を進めるには、住民らの理解を得る必要もある。同市は、負担上限額300億円について、経済波及効果などを試算して妥当性を検証。その上で各所への説明に奔走した。「地元自治会と市長との意見交換後、住民の疑問にしっかり答えるという市長の思いから、1週間後、再び向かうことに。説明資料を急いでまとめ、臨みました」と福島さん。並行して、市議会への説明も重ね、負担額の承認に至った。

2030年4月の開業に向け、プロジェクトは進む。市債や交付金の充当に加え、寄附を募る市側の取り組みも道半ばだ。約5年にわたり事業に携わってきた福島さんは、「官民連携では従来のやり方にとらわれず、分からないことは調べ抜き、周囲の協力を得る姿勢が大切です」と語る。本多さんも「庁内で知識や思いを共有できる環境づくりが重要。キーとなる職員が一定期間関われる人材配置も必要だと感じます」と話す。

開業後は、来場者が市内で消費や宿泊を楽しめるよう、さらに民間の投資を呼び込むことが市の役割となる。同社も、長期の運営まで見据えた施設づくりと地域企業との連携を通じ、アリーナの価値を広げていく考えだ。官民がそれぞれの力を発揮し、新たなまちづくりが進められていきそうだ。


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