来年4月に「2025年日本国際博覧会（大阪・関西万博）」を控える同市。開催に先駆けて「路上喫煙の防止に関する条例」を改正・施行するにあたり、民間施設を含む計120カ所の喫煙所の整備を進めている。「これまで路上喫煙の禁止は努力義務でしたが、今後は過料の対象になります。路上で吸わせないためには喫煙所を設置して、吸える場所を確保することが必須です」と野夫井さん。
万博を見据えた分煙環境整備のスタートとして令和4年8月末、オフィス街に位置する堂島公園に「ランドピア」の「バリアフリー喫煙コンテナ®」を設置した。それまでは灰皿とパーテーション1枚を置いた簡易的な喫煙スペースだったため、煙が周辺に漂う状況で、市への苦情も多かったという。コンテナは、室内のプラズマ脱臭機が煙やにおいを除去し、受動喫煙リスクを下げられることが強みだ。出入口に段差がなく、スロープを造成しなくてもバリアフリーに対応している。
「設置後は煙が漏れることもなく、分煙のマナーも守られていることから苦情がなくなりました。その後、条例の改正が決まり、市内の各所でさらに分煙の徹底を進めています。令和6年3月、6カ所の公園に1台ずつ、同社の喫煙コンテナを追加で設置しました」。
6カ所の公園はいずれもオフィス街や住宅街などに位置し、利用者や通行人が多い。そのうちの一つ、新阿波座公園には朝から昼にかけて、周辺で働く人たちが喫煙のために立ち寄っていたそうだ。「天気が悪いときは近隣のビルの軒下で喫煙する人もいたようで、ビルのオーナーから“喫煙所はいつ開設されますか”と連絡が入ったこともあります」。ほかには、定期的にイベントが開かれる大規模な公園もあり、親子連れや市外からの観光客が訪れることから、できるだけ早い整備が求められていたという。
また、今回のように一度に複数台を導入するには費用が高額となり、予算確保から設置するための手続きまで、様々な工程で時間がかかる。そこで同市はリース契約を結び、設置までが約半年間で完了。通常と比べて3分の1程度の早さだという。「条例の施行を目指して、とにかくスピーディに導入することが最優先でした。設置までの手続きも包括的に任せられることや、設置後は空気清浄機のメンテナンス費もリース代金に含まれることなど、手間も予算も軽減される点が多くてよかったです」。さらに追加で同社のコンテナ型喫煙所を15台、リースで導入することになったという。
分煙の徹底に向けては、市民や訪れる人たちに“知らなかった”と言われないための周知が必要だ。堂島公園に最初に設置したときにも、事前にチラシ配布などで市民に知らせていたことで、スムーズな利用につながっている。今回の6カ所については市のホームページでの告知に加え、部署を横断した広報活動も計画中。海外からの来訪者にも喫煙所の存在が分かるようにと、多言語の案内看板や路面標示も増やすという。また、喫煙禁止区域を巡回しながら、市民に直接呼びかける“路上喫煙防止指導員”も増員予定だ。
「路上喫煙の対策はこれまでも長い間、課題として挙がっていました。万博を一つのゴールとして、まずは見える形での整備を進めています。そうすることで、市民の理解・協力にもつながっていくのではと考えています」。令和2年に健康増進法が改正され、受動喫煙対策の強化が進んでいる。その中で、吸う人・吸わない人、それぞれへの配慮を組み合わせた同市の取り組みは、他自治体でも参考になるのではないだろうか。
大阪市
環境局 事業部 事業管理課
課長代理 野夫井 一真（のぶい かずま）さん
令和5年度当初予算で「大阪・関西万博を契機とした市内全域での路上喫煙禁止事業費」（コンテナ型喫煙所の整備費以外も含む）として確保。
●東京都港区
●埼玉県八潮市
●茨城県取手市
●大阪府吹田市
など
※令和6年3月時点（ランドピア調べ）
ジチタイワークスWEBでは、大阪市をはじめ、地域ごとの課題に応じた導入事例を多数紹介している。
サービス提供元株式会社ランドピア
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