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【セミナーレポート】官民連携の先行事例に学ぶ!Withコロナの“3密回避”と“地域活性化”を 両立させるICT活用法

今回のオンラインセミナーでは、Withコロナの“3密”それぞれのシーンで成果を上げている事業者や自治体の事例を交えてソリューションを共有。当日の内容を概要版でお伝えします。

参加できなかった方は、次回のセミナー開催にご期待ください。

 


概要

■タイトル:【株式会社ロコガイド共催】
     Withコロナの自治体デジタル変革のヒント ~民間と連携した3密回避の事例に学ぶ~
■実施日:10月2日(金)
■参加対象:自治体職員
■参加者数:60人
■プログラム:

Session1 密集編
Withコロナにおける混雑状況のデジタル発信 ~混雑ランプを市内に灯す~
Session2 密接編
非接触型のソリューション事例に学ぶ経済活性のヒント
Session3 密閉編
スペースシェアで地方の遊休不動産を収益化 ~テレワーク、ワーケーション推進のアイデア~


Session1:密集編
Withコロナにおける混雑状況のデジタル発信 ~混雑ランプを市内に灯す~

現在、浜松市は事業者や地域全体を巻き込みながら、密を避けつつ地域経済を動かす取り組みをしている。同市が導入したサービス「混雑ランプ」について、提供元のロコガイド・小野寺さんが語ってくれた。

<講師>

株式会社ロコガイド
地域情報部 
事業責任者 部長
小野寺 康崇さん

<ロコガイドについて>
「トクバイ」や「ロコナビ」など、主婦・ファミリー層を中心に月間1,000万人が利用するWebサービス・スマホアプリを取り扱うベンチャー企業。事業を通して地域のDX化を推進している。

「混雑ランプ」とは?

「混雑ランプ」は地域DX化サービスの一つです。買い物は生活の中で必須ですが、感染症にも気を遣わなくてはなりません。そのためには空き時間に店に行き、密を避けるのが有効。ただ、混雑情報を得る手段を市民は持っていません。これを可視化するのが混雑ランプです。

仕組みはいたって簡単。店舗や施設にいるスタッフが、手元の端末で「空き(青)」「やや混み(黄)」「混み(赤)」の3段階からいずれかを設定し、それをWeb上で共有。ユーザーはスマホなどで、行きたい場所の状況を信号機のように確認できます。市役所など通信制限がある場所は、ボタン型端末で状況を設定できます。

 

消費者の意思決定に混雑情報は不可欠!

自治体の場合、住民利用が多い窓口などで導入、窓口状況に合わせて職員が設定をし、公式ホームページなどを通してリアルタイム発信すれば来庁者も安心。私たちはこれを「混雑のソーシャルインフラ」と位置付け行政に無償提供しています。

世田谷区、静岡市、和歌山市、岐阜市などすでに導入済の自治体も多く、メディアでも取り上げていただきました。民間での導入事例は水族館、宿泊施設、温浴施設など多岐にわたり、「時間やコストがかからないのがいい」「利用客からも好評」などと高い評価をいただいています。

混雑情報はすでに生活者の意思決定・行動判断の指標になっており、混雑ランプはこのニーズに迅速かつ手軽に対応可能。老若男女問わず外国人の方にも喜ばれています。


浜松市におけるコロナ禍の地域経済対策

この混雑ランプを、自治体として初めて導入したのが浜松市だ。ここでは、同市の北嶋さんが、アプリを導入の経緯や効果について語る。

<講師>

浜松市
観光・シティプロモーション課 課長
北嶋 秀明さん

コロナ禍において、浜松市では“経済”と“安全”への視点をバランスよく切り替えつつ、施策を実行しています。多摩大学の田坂教授が提唱する「デュアルモード社会」がヒントになっており、様々な施策を行いました。

当市では、市長によるデジタル化のけん引が取り組みの背景としてあります。ICTを活用した先進的なアイデアや取り組みには「私が責任をとるから思う存分動いてほしい」と市長からも職員に向けて発信がありました。そのため、職員はのびのびと施策に打ちこめます。さらに、コロナ禍では週単位でフェーズが大きく変化。計画を立てて許可を取って…といった動きでは追いつかず、意思決定もスピード感をもってやらなければならない。この混雑ランプも、ロコガイドと話をして2日で導入が確定しました。


縦割り組織を解体し、アメーバ型の自治体運営を目指す!

導入準備は迅速に進められ、令和2年6月に実証実験を開始。市役所窓口をはじめ、観光施設や飲食店、宿泊施設などが対象となりました。混雑状況の判断では、現場の職員や店員さんのフィーリングが重要。それをシンプルに3段階でリアルタイム発信できるというのは実用に向いています。

また、混雑ランプはシビックテック(※)とも連携。混雑データをオープン化して、市内のITコミュニティ有志がそれを活用しWeb上の地図「にゃーにゃー(near,near)マップ」に落とし込んだのです。これによりさらに利便性が高まりました。
※シビックテック:一般の住民が、社会課題や地域課題をテクノロジーで解決しようとする取り組み


取り組みを経て浜松市は、ロコガイドと「ITを活用した地方創生に関する連携協定」を締結。協働による浜松市のDX化を進め、都市ブランドの確立を目指します。混雑ランプも、ホテルやキャンプ場、スーパー、銀行、避難所…と広く導入していく予定です。

これからの時代は、古い縦割りの組織体系では意思決定が追い付きません。興味を持つ職員が結びつき、知恵を出し合うチームを都度組む柔軟な組織体系が、課題解決に向かうカギになると思います。

[参加者とのQ&A]  ※一部抜粋

:導入は難しくありませんでしたか?
:いたって簡単でした。浜松市の場合は実証実験での導入でしたが、担当の連絡先とメアドをロコガイドに渡し、設定用のスイッチを作っていただいて終わりでした。

Session2:密接編
「非接触型のソリューション事例に学ぶ経済活性のヒント」

ここからは、密接を避けるためのICT活用をテーマに、キャッシュレス決済「PayPay」の活用で地域経済を元気にしようと取り組む加西市の事例を紹介。

<講師>

加西市
域振興部 産業振興課 係長
高橋 知弘さん

 

PayPay株式会社
コーポレート統括本部 マーケティング企画部
宇都宮 正騎さん

地域経済のカンフル剤で、利用率が最大60倍に! 

宇都宮:当社との協働で実施したキャンペーンですが、この取り組みのきっかけは?

高橋:コロナ禍で中小企業が大きなダメージを受けたので、「地域経済にお金をまわしたい」ということでした。4~5月頃は直接的・臨時的な金額的支援を行いましたが、5月末頃からは地域経済全体の活性化が必須だと考え、議論を重ねました。地域商品券の発行もできますが、1億円分を配っても同じ額の効果しか見込めません。さらに回収、計算など事務的なコストがかかってしまいます。
その点、電子決済のキャンペーンなら投入金額にプラスアルファが見込める上、事務コストも抑えられ、実施までのスピードも早い。これらを総合的に判断し、地域での浸透率も考慮した上て、PayPayなら可能性があると判断したのです。急ピッチで準備を進め、令和2年8月の1カ月間、市内340の事業者を対象として実施しました。


宇都宮:加西市のキャンペーンでは、思い切った数字を打ち出しましたね。

高橋:還元率は20%、上限2万円なので、PayPayで10万円使えば2万円戻ります。「ここまでやって大丈夫か」という不安はありました(笑)。しかし結果は十分。PayPayの利用率が前月比で1日あたり10倍から最大60倍にまで伸びたのです。9月に入っても高い利用率で推移しており、キャッシュレス決済が定着しつつあるのを感じます。

楽しみながら効果を生む“四方よし”のキャンペーン

宇都宮:利用した市民の反応はどのようなものだったでしょうか?

高橋:まちの人も楽しんでくださったようで。SNSで発信するなど、地域ぐるみで盛り上がっているのが伝わってきました。ポイントを徐々に積み重ねていくのが使う側も嬉しいのだと思います。

宇都宮:当社の営業担当は、「事業継続が厳しい」と弱気になっていた地元事業者さんから「お客が戻ってきてやる気が出た」という声を聞いたそうです。

高橋:まさに狙い通りです。しかも今回の取り組みでは業態も分散されていて、小売店はもちろん自動車整備、飲食、旅行など様々でした。地元事業者にも消費者にも嬉しい仕組みを作ることができた、というのが実感です。

 

宇都宮:加西市の内部からの反応はありましたか?

高橋:「面白いことをやっているな」という声が上がりましたね。議員も理解してくれましたし、観光協会など外部の協力も得られたのが大きかった。市単独ではここまでの成果は上げられなかったと思います。市民は還元を受けて楽しく使える、事業者は売り上げを伸ばせる、PayPayはユーザー数が増える、そしてそれらが市の目指す地域経済活性化に繋がる。“四方よし”の企画だったと感じています。

宇都宮: 嬉しい限りです。加西市では第2弾を実施することになっていますね。

高橋:第2弾は10月実施です。第1弾でユーザー数も増えており、地元事業者もノウハウを得ています。さらに盛り上がるのではと期待を寄せているところです。


[参加者とのQ&A]  ※一部抜粋

:自治体組織内での意思決定はスムーズに進みましたか?
:(高)5月末頃に話が出て、8月に実施できたので、スムーズに進んだと評価しています。前例の無い取り組みでしたが、加西市の市長は「いいと思ったらやれ」というタイプなので、すぐにGoサインが出ました。

Session3:密閉編
スペースシェアで地方の遊休不動産を収益化 ~テレワーク、ワーケーション推進のアイデア~

最後は、眠っている施設を自治体が有効活用し、利用者はオフィスや施設などを飛び出して新たな活動の場を得る、そんな取り組みを紹介する。

<講師>

株式会社スペースマーケット
代表取締役社長
重松 大輔さん

 

株式会社ホープ
メディア事業部 HA×SH課 課長
田中 悠太

会議、撮影、イベント…遊休不動産を使いたい人は全国に!

当社では、あらゆるスペースを時間単位で貸し借りできるシェアリングエコノミープラットフォーム「スペースマーケット」を、アプリとWebで展開しています。取り扱いスペースは令和2年7月現在で1 万3,400件です。また、シェアリングエコノミーの普及と業界の健全な発展を目指す「シェアリングエコノミー協会」を立ち上げ、その代表理事も務めています。

自治体との連携も実施しており、浜松市からは2名の出向を受け入れています。また、シェアリングエコノミー協会では、知見を共有する「シェアサミット」などを実施しており、西村経済再生担当大臣やサントリーの新浪社長、各自治体首長など多くの方に登壇いただいています。

時代はモノの所有から共有へとシフトしており、シェアリングエコノミーも身近なものとなっています。これは菅内閣でいうところの「共助」にあたりますが、当社では“場所”にフォーカスして、それを提供できる“ホスト”と、場所を探している“ゲスト”の橋渡しをしています。

例えば「古民家」。ホストからの登録が多く、人気も集まります。古民家は取扱いで困っている自治体も多く、放置すれば“朽ちていく空き家”ですが、月に数回使われるだけでも老朽化防止に一役買い、不法占拠の防止にもなります。利用者が足を運ぶことで近所での消費も生まれるでしょう。

ゲストの利用目的としては、会議、テレワーク、ユーチューバ―やコスプレイヤーの撮影、イベント、キッチン利用、ヨガ教室など多岐にわたります。

<自治体ホスト物件の活用事例>

・秋田県湯沢市の文化財施設でアコースティックライブ
・神奈川県横須賀市の無人島(猿島)でコスプレイベント
・奈良県の山奥にある木造校舎で撮影ロケ etc.


「できない理由」ではなく「どうすれば活用できるか」を考えよう

当社ではコロナ以前から新しいワークスタイルを提唱していました。オフサイトミーティングで気分を変えてみる、古民家を1日借りて企業合宿をするといったスペース活用ですが、新しい生活様式の導入により、こうしたワークスタイルに積極的に取り組む企業が増えていると感じます。テレワークやワーケーション、レンタルスペースで行う会議+懇親会のミックスイベントなど活用事例も多く、この流れはWithコロナ・アフターコロナでも継続していくだろうと考えられます。

さらに、移住施策を推進している自治体にとっては、地域を知ってもらうための“おためし移住”などにも活用できます。遊休資産が財源となり、人を呼び込む役割まで果たしてくれるのです。


 

自治体における遊休不動産の活用は、諸手続きが面倒ということもあるでしょう。よく聞かれるのが「条例で決まっているからできない」というもの。しかし、できない理由を探していても変革は起こせません。首長が新しい取り組みに意欲的な自治体の場合は、「やる方向で進めよう」という一声で動き始めることが多くあります。まずは「どうすればできるか」という視点で考えてみることが大切です。

掲載までの流れは、とても簡単です。登録に際して最初にお金をいただくことはないので初期費用の心配などもありません。まずは小さなスペースでもいいので、ぜひ活用してみてください。

[参加者とのQ&A]  ※一部抜粋

:スペースだけでなく、利用者を集める工夫も必要だと思います。どのようにすればいいのですか?
:スペースの魅力を発信しつつ、ホスト側も、おもてなしの努力を継続していくことが大切です。たとえば撮影スペースであれば大きめの鏡を用意する、ビジネス利用が見込めるならWiFi環境を完備する、といった気配りです。ノウハウを必要としている方には、当社で行っているセミナーもご活用いただけますし、「スペースマーケットホストアカデミー」というWebマガジンも用意しています。

お問い合わせ

ジチタイワークス セミナー運営事務局

TEL:092-716-1480
E-mail:seminar@jichitai.works

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