ジチタイワークス

地域の“理想の灯”を消すな! 迷走する自治体新電力の突破口を探る

平成2 8 年の電力自由化以来、徐々に浸透しつつある新電力。中でも“自治体新電力”は、地域の未来を創生する魅力的な取り組みであり、参入する事業者にとっても開拓しがいのある肥沃な市場と映るだろう。

この分野について編集部でも自治体や事業者への取材を行ったが、そこでは様々な現場の声が聞こえてきた。迷走と模索を続ける自治体新電力の今をレ
ポートする。

※下記はジチタイワークスVol.9(2020年4月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
 [提供] 株式会社リミックスポイント

地域の理想の前に立ちはだかる巨大な壁

自治体新電力は、自治体と事業者が合同出資して電力会社を立ち上げ、地域の再生可能エネルギー活用を中心に電力を調達、地域に供給し、その利益を公共事業などで還元するという、エネルギーの地産地消を目標としたものだ。これにより地域が活性化し、新たな雇用も見込めるため、“電気による地域おこし”と言い換えることもできる。現在、自治体新電力を抱える自治体は全国に50ほど存在する。SDGsの観点から見ても理に適っており、クリーンで幸福な地域社会が目に浮かぶ。ただし、自治体新電力も企業であるからには、経営力が求められる。戦略をもって運営していかなければ、健全な利益を出し続けることは難しい。

電力は、購入先による品質の違いがほとんどないため、市場でも入札でも価格が重視される傾向にある。立ち上げたばかりの小規模の自治体新電力にとって、価格競争の中を勝ち残るのは容易ではない。また、自治体新電力が地域に与えるメリットが住民に浸透していないと、新規契約が増えず、収益が伸び悩み、地域還元に手が回らないというジレンマに陥る。結果として徐々に体力が落ち、経営も困難になってしまう。

これまでいくつもの自治体が地域貢献を目指し参入してきたが、前述の例に類した問題を抱えているところも多い。過去には、電気料金を割高にせざるを得なくなり、自治体が事業者へ支払った電気料金は不当だとして、一部市民が訴訟を起こす問題にまで発展したケースもあった。

さらに、経営において時として足かせとなるのが、コンサル会社との関係だ。自治体新電力を立ち上げる際には民間事業者とコンサル契約を結び、アドバイスやサポートを受けるというパターンがよく見られる。立ち上げ当初は公共施設などへの電力供給で右肩上がりだが、それらのターゲットが頭打ちになれば、その後は新規市場を開拓しなければならない。コンサル会社との関係性が十分でないとこの新規開拓がうまく進まず、売上は停滞する。利益
が減っていく中でも、高額なコンサルフィーは発生し続けるため、結果として地域への還元が実現できない。

日本版「シュタットベルケ」に求められるものとは

では、自治体新電力は不完全な仕組みなのかというと、決してそうではない。アメリカやイギリスなどの自治体新電力では成功している例がいくつか見られる。中でも日本の自治体の手本として最も適していると思われるのが、ドイツの「シュタットベルケ」だ。

シュタットベルケは、ドイツの地方自治体が一部または全てを出資する公社であり、電気やガスなどのインフラをはじめ、交通、通信、福祉など多様な業種でサービスを展開している。事業を通して得た利益は地域の課題解決に還元すると同時に、雇用の確保、節税など様々なメリットをもたらしている。

日本の自治体新電力と比較すると、シュタットベルケは公社といえども企業としてのスキルが高く、地域住民からの支持も厚い。サービスの幅も前述の通り幅広く、ドイツ国内の企業形態の一つとして確立されている。さらに、競争相手とも十分戦える力がある。

一方、日本の自治体新電力はまだ歴史が浅く、企業としてのノウハウや営業力を十分に有していないケースも多い。競争力や地域への訴求力に多くの課題が残されている。つまり、これからの自治体新電力に求められるものは、自立した企業として戦略を練りロードマップを描ける経営力、新規顧客を獲得し続ける営業力、そして地域住民の理解と支持だ。しかし、これらを立ち上げ時から完璧に備えるというのも無理な話だろう。競争相手となる企業には数千億、もしくは数兆単位の巨大資本を持つところもあるのだ。

そこで必要なのが、不足している企業スキルを補うために的確なアドバイスをくれるパートナーだ。新電力というジャンルに関する十分なノウハウを持ち、かつ自治体の課題を理解して共に地域おこしをしてくれる良き相談相手を持つか否かが、自治体新電力の明暗を分ける鍵になるのではないだろうか。もちろん、コンサルフィーが負担にならないということも念頭に置いた上での話だ。

利益を地方創生に直接役立たせることができる自治体新電力、ようやく日本に生まれたこの新たなエネルギーの灯を消してはいけない。そのためにも、前述のような条件を満たしたパートナー探しから始めることが、日本版シュタットベルケを実現するための近道なのかもしれない。

自治体新電力のメリットと課題点

 

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