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京都府京都市

公開日:2020-02-14

消防庁長官賞を受賞した民泊の火災予防への取り組み

観光・商工
読了まで:4分
消防庁長官賞を受賞した民泊の火災予防への取り組み

訪日外国人の急増によりニーズが高まる民泊だが、騒音やゴミ出し
トラブルなど課題も多く、火災予防にも十分な対策が必要だ。日本屈指の観光都市・京都市では各部局が連携し、民泊の火災予防に取り組んできた。その具体的な内容について、同市消防局予防課の担当者に聞いた。

※下記はジチタイワークス防災・危機管理号Vol.3(2020年2月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]京都市

旅行者の頻繁な出入りが生活に影響を及ぼす

古い木造長屋が多く現存し、狭い路地奥に住宅地が密集する京都市内では、高い自治意識によって生活が守られてきた。そこに旅行者など、人が頻繁に出入りすると、生活への影響は大きい。

「コミュニケーションが取りづらくなり、自治意識の低下にもつながります」と予防課では指摘する。民泊施設が急増する中、住民や宿泊客の安心・安全を守るため、行政による対策が急務となった。

独自のラベルを交付し定期的に研修を開催

京都市消防局では平成30(2018)年、適切な防火対策を行っている宿泊施設に対し、「消防検査済ラベル」を交付する「消防検査済表示制度」を創設した。交付の条件は「消防法令をクリアし、さらに一定の条件を満たす」こと。例えば、法令上は消火器設置の義務がない施設でも、設置が必須。火災に関する注意事項をまとめた外国語併記の書面を、目に付く場所に貼ることも条件だ。

ラベルは屋外の見えやすい位置に掲示する。「現在では約1,000軒がラベルを掲出しています」と予防課の担当者。これに対し、「ラベルがあると、消防局が検査したことが分かるので安心」という声が寄せられている。

さらに、民泊など小規模な宿泊施設に関する内容に特化した「京の宿泊所防火研修」も定期的に開催している。「昨年度は250名の参加がありました。実技訓練も好評です」。例えば「消火器取扱訓練」では、スクリーンに映し出される火に対し、訓練用消火器で放水する。「避難誘導訓練」では部屋に煙を発生させ、携行用電灯を用いて避難する。

参加者の満足度は高く、第6回を終えた時点で93%の受講者が「とても良かった」「良かった」と回答。「火事の恐ろしさを実感した」「煙の中の誘導灯のありがたさが分かった」など、宿泊施設事業者の防火意識向上に一役買っている。

各部局で情報を共有し迅速な対応を行う

民泊には複数の部局が関係する。「行政では各部局が専門的に業務を行い、縦割りになりがちだが、連携が重要」と言う。京都市は平成27(2015)年、「民泊」対策プロジェクトチームを設置。産業観光局観光MICE推進室を事務局に、保健福祉局や都市計画局、消防局、文化市民局等のメンバーで構成されるチームだ。

同チームの始動によって各部局間の情報共有がスムーズになり、迅速な対策が可能になった。例えば、消防局と保健福祉局が連携することで、法令違反の疑いがある宿泊施設に対しては、ただちに現地調査を実施。違反を認めた場合は、その他の関係部局とも連携を図り、徹底した是正指導を行っている。

事業者にとってもメリットは大きい。「チーム設置前は、民泊に関係する部局が個別に指導を行うケースもありました。今では合同で指導するなど、より事業者が対応しやすい形になったと思います」と手応えを感じている。

一連の取り組みにより、京都市消防局は令和元(2019)年、消防庁長官賞を受賞した。総務省消防庁が実施する「予防業務優良事例表彰」において、「連携プレーで実践する民泊等の火災予防プロジェクト」が高く評価されたのだ。

今後の抱負は「一枚でも多くのラベルを交付し、一人でも多くの方に研修を受けていただきたい」。民泊における火災を予防し、住民や利用者の安全を守る取り組みは、今後も続いていく。

How To

01、情報共有によって連携を強化

各部局が情報を共有し、連携を密にしている。例えば違法営業を行う宿泊施設に対しては、合同の立入検査を頻繁に実施し、違法な宿泊施設の根絶に向けた取り組みを強化している。

さらに、各部局から集まる情報の他、「民泊通報・相談窓口」に寄せられた情報も活用。同窓口では、民泊をめぐる市民からの苦情や相談などを受け付けており、多くの情報を一元管理している。

また、消防隊や救急隊などが宿泊施設に緊急出動した場合、現場で収集した情報を記録する「宿泊施設災害現場チェックシート」を積極的に活用。記録内容を共有して、安全対策に役立てている。

02、住民や宿泊客に安心感を与える

収容人員30人未満の小規模な宿泊施設を対象に、一定条件をクリアすることで「消防検査済ラベル」を交付。住民や宿泊客に検査済み施設であることを知らせる。

03、実技訓練を取り入れた独自の研修を定期的に開催

旅館業施設や届出住宅の経営者及び管理者などを対象に、「京の宿泊所防火研修」を定期的に開催。開業予定でも参加可能。1回あたり3時間半、講義と実技訓練を行う。火災現場を想定したリアリティのある訓練を取り入れることで、防火意識の向上につながっている。

Results

予防と事後対応、両方の観点で防火対策を強化

消防が火災現場へ緊急出動した際、「宿泊施設災害現場チェックシート」の活用により、該当の施設が無許可営業であることが判明。即座に市保健福祉局へ連絡を取った結果、旅館業法に基づく緊急命令(旅館業の停止)を行うという全国初の事案に繋がった。

このように、民泊の火災に対する取り組みは、予防的観点の消防検査済のラベル交付・宿泊所防火研修のような取り組みに加え、チェックシートのように、事後でも関係部局との連携が活かせる取り組みを行うなど、多面的に進めることが大切だ。

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