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【脳の使い方】脳を味方につけて「めんどくさい」を攻略しよう!


ジチタイワークス「公務員ライフを楽しむためのバラエティ増刊号」とは?
社会の難題に立ち向かう公務員の皆さんに、ちょっとした安らぎの時間を提供したい。
そこで今回は、編集室に「公務員のためのバラエティ班」を臨時創設!
疲れたココロとアタマを休めながらも、公務員ライフを少し楽しく、豊かに感じられる……
そんな多彩なコンテンツをお届けします。


※下記はジチタイワークス バラエティ増刊号(2025年1月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

やることが盛りだくさんで、「めんどくさい」と思うのは、自分の性格のせい?脳の仕組みを知れば、ちょっとした工夫でそれを乗り越えられるかもしれない。「めんどくさいが消える脳の使い方」の著者、菅原洋平さんに話を聞いてみた!

ユークロニア株式会社 代表取締役社長
菅原 洋平(すがわら ようへい)さん

作業療法士。ユークロニア代表。国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事した後、現在はベスリクリニック(東京都千代田区)で睡眠外来を担当する傍ら、企業研修を全国で行っている。

 

脳は臓器の一つであると理解する。

私たちは生活の中で、自分の「脳」の存在をどのくらい意識しているだろうか。「脳は、胃や腸などと同じ臓器の一つ。扱い方次第で上手に機能を引き出せます」と菅原さん。

脳は、見る、聞く、触るといった感覚を頼りに、体を動かしている。その情報がうまく伝わらないと、どうしたらいいのか分からず、動くことができなくなるそうだ。「この状態に、私たちは『めんどくさい』という言葉をあてているのです」。

先行きが見えない状況下では、脳は危機に備えて血圧や脈拍を上げ、体を防衛する。これが「ストレス」であり、ストレスはエネルギーを消費して脳を疲れさせる。これが「めんどくさい」の正体だという。

しかし、脳だって、いつまでも警戒態勢は続けられない。そこで、記憶を頼りに予測を立てて体を動かし、エネルギー消費を抑えている。脳の予測と行動がマッチしていれば消費エネルギーが釣り合い、パフォーマンスも高いということになる。しかし、予測と反する行動に出ると脳は疲弊する。「例えば、メールチェックのためにパソコンを開いたのに、ニュースを長時間読んでしまったという場合、脳はエネルギーを使いすぎます。このようなことが、1日に何度も繰り返されることで疲れてしまうのです」。

では、どう解決すればよいのか。「脳に精度の高い予測をさせればいいのです。そのための環境づくりをしてあげることが、脳のオーナーである私たちの役目です」。なるほど。話が面白くなってきたところで、さらに深掘りしてみることにした。

脳をうまくマネジメントしよう!

―脳が働きやすい環境をつくるには、どうすればいいですか?

脳は、情報に慣れることで消費エネルギーをコントロールして、容量オーバーにならないようにしています。過去に体験したことは、知っている情報として処理。新奇情報(未知な情報)を減らすことで、緊急時に備えてエネルギーを蓄えます。記憶にある情報は、脳にとって「安全」で、処理も得意です。一方で、予測がつかない新しいことは苦手。脳にとっては「冒険」です。何が起こるか分からない状態は、エネルギーを多く消費し、ストレスとなります。

だからといって、1から10まで予測通りでは、脳は退屈してやる気を出しません。反対に、全てが予測できないのもダメ。バランスを取る工夫が必要になります。「職場が変わって心機一転、バッグを新調して気合いを入れるぞ!」なんて考えがちですが、これだと新奇情報が増えすぎて、ストレスが重なってしまうのです。面白いことに、新奇情報に内容の重大性は関係なく、「職場が変わった」と「新しいバッグに変えた」は、どちらも同等の冒険であると脳は捉えます。

脳が最も健やかに働くためには、安全と冒険を50%ずつの比率にしてあげるのがポイント。脳にとって最適な環境を設定することで、やる気を引き出せます。

―50%は、どのように設定しますか?目安が知りたいです。

例えば、新規プロジェクトに携わることになったとしましょう。これからどんなことが起きるのか、誰に会うのか、どこに行くのか。初めての体験が多いと先の見通しを立てづらく、脳にとっては冒険の要素が増えすぎます。そんなときは、自分の身のまわりの状況を一定にしてください。使うもの、着る服、食事スタイル、通勤時の道順など、自分の裁量で決められることには変化をつけない。何も考えずに生活できるルーティンを組んでおいて、そこから新奇情報を引くのです。反対に、いつもと同じ状態が続いていて退屈しそうなときは、新しい何かを足してみましょう。

例えば、4月は新しいことを始めたくなる季節ですが、公務員にとっては異動の時期。そんなときは、日常生活を変えない方がいい。仕事の環境が落ち着いたら、まずはプライベートで冒険の要素を足してみるのをオススメします。

―脳に負担をかけない日々の過ごし方を教えてください。

「自分は脳の上司である」と意識して、脳に届ける言葉を工夫してみてください。例えば、「これをしなきゃいけないんだった」という言葉では、やるのかやらないのかが脳に伝わりにくい。こうなると脳は動けません。やる必要があるのなら、「これをする!」と言うのです。これは脳内で思うだけでもいいですが、実際に言葉を発すると聴覚情報にもなります。ほかにも、視覚などの感覚データを増やせば、より強烈に届けることができます。また、数字などで具体性を示すことも大切です。このときに出す数字は、自分の経験を根拠にしたものがいいでしょう。

メールチェックを例に考えてみましょう。毎日、メールにどれくらいの時間をかけているか知っていますか?本当は30分ほどかかる作業なのに、5分しかないタイミングで始めてしまうと、ほかの仕事が押してしまい、脳は予測外の事態に追い込まれてしまいます。ストレスなく1日を過ごすためには、「なるべく早くやる」といった曖昧な表現は避け、まずは自分の作業時間を測って、脳に正確な情報を渡してあげましょう。

変えるべきはあなた自身ではなく、脳への見せ方や聞かせる言葉です。試すときは脳の負担を抑えるため、1日あるいは1週間で1つにします。こうしたことを続けるうちに、行動は変わってくるはずです。


 

 


日々の業務について職員にホンネを聞いてみると、実は様々な悩みを抱えていることが判明。代表的な3つのお悩みを取り上げ、菅原さんに、思考と行動を変えるアドバイスをもらった。



不安になる理由は、脳にとって100%安全な状態から、100%の冒険に変えようとしているから。変えるのは1日もしくは1週間に1つだけ。業務に支障のない小さなことから始めます。例えば、上司に書類を渡す時間を変えて反応を見る。提案のベストタイミングが分かったところで次は……といった具合です。他者に協力を求める際も、今の作業は変えずに、物の場所を変えるか作業の順番を変えるだけを提案。実行した感触を共有しながら、現在の作業を1つずつ省いていくと、目標達成への協力が得られやすいです。



ストレスの中にいる自分を大きな物語の登場人物にして、ここからどんなストーリー展開になるのか、どうすれば面白くなるかを考えながら過ごしてみてはいかがでしょう。このような思考法を「ナラティブアプローチ」といいます。「緊張する」ではなく「男は席に座ると、次第に脇にじっとりとした汗を感じ、それをごまかすようにしきりに原稿をめくりはじめる」という具合で物語にすると、現状を客観視でき、次の展開がイメージできます。これで脳は予測を立てられ、まるで役を演じるように、焦らず行動できます。



学習効率はアウトプット7割、インプット3割がいいといわれています。インプットに注力しすぎると「分かったつもり」になってしまうので、早くアウトプットしてください。まだよく分かっていない段階で説明してみると、何が分かっていないのかが明確になるはずです。アウトプットに相手は必要なく、口に出したり、書いたりすることが大事。言葉にして、どんどん外に出してください。「運転中は独り言でアウトプットする」という経営者もけっこういますよ。異動後に覚えることが多いときにも使えるテクニックです。
 


 

 

菅原さんからのメッセージ

自治体現場のお悩みを聞いたとき、専業主婦・主夫の方と同じだと感じました。仕事の幅が広くてゴールがなく、自分の裁量で決められないことが多くて、見通しを立てづらい。脳にとってはストレスが多いですが、脳の扱い方を知ることでパワーを引き出すことができます。

そのためにはまず、自分のスペックである脳に関心をもつことが大切。食事や運動、睡眠はもちろん、生活のあらゆる場面に脳のスペックを上げるチャンスがあります。日常の中にある選択を実験と捉えて、何を選んだときにどんな結果を得るか、楽しみながら気軽に試してみてください。結果がよかったものだけを取り入れていくと、行動は勝手に変わります。自分を変える必要も、頑張ることもない。脳をうまく操って「めんどくさい」を減らし、活躍につなげてもらえるとうれしいです。

「めんどくさいが消える脳の使い方」
著:菅原 洋平
ディスカヴァー・トゥエンティワン

さらに詳しく脳の仕組みや活かし方を知りたい場合は、菅原さんの著書を読んでみよう。シーン別の対処法など、記事では紹介しきれなかった内容が盛りだくさんだ。

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