ジチタイワークス

福岡県大刀洗町

【スナックまみ】“女豹”の異名をもつ公務員の仕事観に迫る


ジチタイワークス「公務員ライフを楽しむためのバラエティ増刊号」とは?
社会の難題に立ち向かう公務員の皆さんに、ちょっとした安らぎの時間を提供したい。
そこで今回は、編集室に「公務員のためのバラエティ班」を臨時創設!
疲れたココロとアタマを休めながらも、公務員ライフを少し楽しく、豊かに感じられる……
そんな多彩なコンテンツをお届けします。


※下記はジチタイワークス バラエティ増刊号(2025年1月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

福岡県のとある町に、ヒョウ柄の公務員がいる―。ジチタイワークス編集室がうわさを聞いたのは数年前。常にヒョウ柄を身に着けていることで有名らしい。なぜヒョウ柄なのか、どんな人なのか。気になる彼女に会うため、大刀洗町を訪問した。

福岡県大刀洗町(たちあらいまち)
地域振興課 課長
村田 まみ(むらた まみ)さん

●PROFILE
19歳で大刀洗町へ入庁。税務課、戸籍関連の業務、教育委員会などを経て、2008年に地域振興課へ。地域のコミュニティづくりや産業振興など、まちづくりを手がけて16年。ワードローブには春夏秋冬のヒョウ柄バリエーションがあるそうで、小物や名刺まで抜かりなくヒョウ柄だ。町内外で有名人となり、同町酒店の角打ちコーナーでの撮影中は、来店した住民から「お、まみさん!今日はどうしたと?」と声をかけられていた。

地域に愛される公務員が、ヒョウ柄を貫く理由とは。

―ズバリ教えてください。いつから、なぜ、ヒョウ柄を着ているのですか。もしかして、入庁時からですか?

さすがに入庁時からではないですね(笑)。もともとヒョウ柄は好きでしたけど、仕事でも着るようになったのは平成24年、まちのPRのために当町のフェイスブックページを立ち上げたことがきっかけです。当時はまだ公式ページをもつ自治体は少なく、いち早く立ち上げた自治体が注目されていた頃。この波に乗ろうと決めたものの、シンボリックなものがないと、人を集めるのは難しい。それなら「私がシンボルになってやろう!」と、ヒョウ柄公務員としてPRを始めたのが最初ですね。

―個人でシンボルになろうと!?

そうそう。思惑通り注目してもらえましたよ。ただ、一時はちょっと炎上しちゃって、「公務員が何をやってるんだ」と役場にクレーム電話や投書が来ました。でも当時の同僚や上司が電話を受けてくれたり、地域の人が励ましてくれたりして、守ってくれたんです。「町のためにやっているんだから」と。私はこうして、19歳からみんなに育ててもらって、今に至るんです。

―地域振興課では、どんな業務を担当しているんですか?

色々あるんですけど、地域コミュニティや自治会、観光、産業振興として地域ブランドづくり、ふるさと納税と、広報、地域交通、定住促進、マイナンバー制度やDXと……。

―多すぎませんか!?

小さい町ですからね。私の返事は「イエス」「はい」「頑張ります!」の3種類です(笑)。令和6年7月の機構改革で今は少し担当業務が減りましたけど、非正規含め課員14人で、ワイワイとやっています。

コンパスの針が刺さってる、だから公務員を辞めない

―公務員としてのターニングポイントはありますか?

そうですね、平成20年、当時の新町長に「地域コミュニティづくり」を命じられたときでしょうか。一体何からどうやって?と悩み、ふと当時の政権テーマになっていた「新しい公共」の宣言文を読んでみたんです。そのときに、国はこんなことを考えているのか!と驚いて。そこから「対話によるまちづくり」をしようと、住民とワークショップをたくさん開いたり、地域の運動会に応援に行ったり、イベントを立ち上げたり。町内を動きまわることで、どんどんつながりが広がりました。今では幸福度ランキングで九州ナンバーワンなんですよ。
※大東建託「いい部屋ネット 街の幸福度ランキング2023<九州・沖縄版>」より

地域振興課の出入口横に掲示されている「対話の心得」。住民や職員との対話の場において、大切にしている考え方だそう。まみさん直筆の書。

―まみさんは、公務員を辞めたいと思ったことはないんでしょうか

ありますよ!前述の炎上騒動の頃に、やっぱり色々あって。そんなとき、一緒に仕事をした大学教授に、辞めるつもりだと伝えたんです。そうしたら「それは無理でしょ」と一蹴されて。「人をコンパスに例えると、あなたの軸となるコンパスの針は、町に刺さってるんだよ」と言われました。町から針を外すと、私らしく生きられない。その言葉ではっとして以来、迷いなしですね。

まちづくりは住民と職員で奏でる、オーケストラ。

―あの、焼酎までヒョウ柄なのですが、これは一体何事ですか……?

居酒屋の店主が「大刀洗に焼酎蔵があるのを知らない」というので、町内の居酒屋4店の店主を、まとめて工場見学に連れて行ったんです。そこで「オリジナルのハイボールをつくろう、ラベルもオリジナルで!」と盛り上がったんですよ。そしてその場で、蔵の人と店主たちが「ヒョウ柄にしよう」と即決しちゃって。ご当地ハイボール「大刀ハイボール」として売り出しました。賞までいただいたので、さらにPRしなきゃ。やっぱりまちづくりは面白いです。

「大刀ハイボール 煌(きらめき)」は、福岡国税局の令和6年酒類鑑評会、本格焼酎の部で金賞を受賞。

―実際に「スナックまみ」を営業していると聞いたのですが。

月に1回お店を借りて、コミュニティカフェならぬ、コミュニティスナックを開催しています。起業した人や、移住してきた人、ご近所さんなどが集まって「知り合う場」で、そのスナックのママが私。公務員だから、安心感があるでしょ。私も以前はたくさんの人に会おうと、名刺交換会に行っていた頃があったんですよ。でもそれって、町内でもできるんじゃないかと思って、始めてみたんです。そしたらやっぱり、面白い人がたくさん。もう20回目を超えました。

町内のカフェで開かれる「スナックまみ」。毎月1人、スピーカーを決めて話をする。全員の近況報告も行われ、「一人ひとりにドラマがあるのが面白い」と、まみさん。

―趣味はホルン演奏なんですね。

社会人吹奏楽団に所属していて、昨年は初めて全国大会で金賞を取りました。仕事の合間を縫って練習し、みんなで音を奏でるのは楽しいです。自治体職員の仕事も似ているなと思っていて。だって私たちは、住民が選んだ首長の政策を実行する「事務履行員」でしょう。政策をつくる首長が「作曲者」なら、職員は「表現者」。政策をどんな音で表現するのかは、私たちにかかっているわけです。これからも精進していきたいですね。

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