揺れを感知して電気を遮断する感震ブレーカー
地震による火災は、揺れに伴う電気機器からの出火や、停電復旧後の通電時に起こる火災など、電気関係のものが多い。電気火災の防止策として感震ブレーカーが推奨されているが、その普及が課題となっているという。
※下記はジチタイワークスVol.33(2024年8月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[PR]株式会社電池屋
左から
電池屋
代表取締役 横森 弘充(よこもり ひろみつ)さん
営業部 楠原 俊介(くすはら しゅんすけ)さん
電気に起因する火災の防止策として、国が普及を推進する感震ブレーカー。
平成7年に発生した阪神・淡路大震災では、火災が起こった原因の約6割※1が電気に起因し、平成23年の東日本大震災でも過半数※2を占めた。地震で倒れた暖房器具や、破損した電気配線などから出火したという。特に被害が大きかったのが、停電から復旧した際に起こる通電火災だ。
電気工事や防災機器の販売を手がける「電池屋(旧・ヨコモリ電池屋コーポレーション)」の楠原さんは、「地震が起きると、家の中の物が色々な場所に動いてしまいます。例えば電気ストーブが転倒しなかったとしても、その上に部屋干しの洗濯物が落ちてしまい、通電時に出火することもあるのです」と話す。通電したときには住民が避難していて、気づかないうちに火災が発生し延焼を引き起こすケースも多いそうだ。
こうした被害を防ぐために、内閣府、消防庁、経済産業省が連携し、地震時に自動で電気を遮断する感震ブレーカーの普及を推進。場所にかかわらず、全ての地域の住宅に設置が推奨されている。「分電盤に内蔵して揺れを感知したらブレーカーを切るタイプ、コンセントに取り付けて使用するタイプなど、感震ブレーカーにも様々な種類があります。数年前からは、電気工事が不要なコンセントのタップ型が主流になってきています」。
※1 消防庁「平成10年 地震時における出火防止対策のあり方に関する調査検討報告書」より
※2 日本火災学会誌「2011年東日本大震災 火災等調査報告書」より
普及が進まない課題を解決するために、届けやすく使いやすい形状を開発。
防災の施策として、感震ブレーカー購入の補助金を出したり、希望者に無料で配布したりしている自治体もあるが、あまり普及していないのが現状だという。「そもそも住民に、感震ブレーカーがあまり知られていないんです。自治体が配布を試みても認知度が低いため申し込みが少なく、大量に在庫を抱えてしまったという話も聞いています。オペレーションや送料の負担が大きいことも、普及が進まない要因だと思います」と横森さんは話す。
同社ではこうした状況を踏まえ、防災用品のメーカーと共同開発に取り組み、コンセントタイプで3口タップ型の感震ブレーカーを製品化した。令和6年4月から販売を開始している。「自治体が地域住民に届けやすい形状にこだわり、メール便で送れる3㎝以内の厚みを実現しました。例えば、東京都では750万世帯にB6サイズの防災ブックを配布しています。こうした冊子と一緒に送ればコストが抑えられますし、皆さんに使ってもらいやすいと考えました」。
タップ型の感震ブレーカーは、コンセントに差し込んでボタンを押せば、すぐに使える。家全体の電気を遮断するのではなく、熱を発する電気機器を選んで利用できるため、医療機器のように電気が切れると困るものには影響が及ばない。通電を再開する際は、ボタンを押せば元通りに使える。高性能のセンサーを内蔵しており、ペットが触るなど地震以外の振動では誤作動が起きにくい設計だという。
日常生活に防災を取り入れ、命を守る行動につなげていく。
地震はいつどこで起こるか分からないが、過去の経験から学んだ教訓を活かすことはできる。地震による火災は、人の命や大切な物、家屋や商業施設などを焼失させ、地域全体に大きな被害を与えてしまう。電気火災が多く起きていることから、感震ブレーカーの普及は有効な施策といえるだろう。「地震による火災の被害を減らすために、感震ブレーカーの普及を進めようとしている自治体がいます。その取り組みのために私たちの製品が役に立てたらうれしいですね」と横森さん。
地震に対する備えとしては、家具の転倒を防ぐための固定、初期消火ができる消火器の設置など、様々な対策を総合的に行う必要がある。身を守るため、地域を守るための情報を住民に伝え、防災意識を高めていくことが大切だ。日常生活の中で利用できる防災グッズは、注意喚起のきっかけにもなるのではないだろうか。