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【磯部健太さん】サードプレイスは、自己実現をするための最高の場所。

『サード・プレイス』、それは家庭(第1の場)でも職場(第2の場)でもない、リラックスできる心地の良い場所。

本企画では、公務員の肩書を出しながらサードプレイスで活動している人にフォーカス。活動を始めたきっかけや、活動しているからこそ得られたこと、今後の展望など。公務員にとってのサード・プレイスがより身近になるきっかけを語っていただく。

東京都 政策企画局戦略広報部報道課 課長代理
磯部 健太(いそべ けんた)さん

プロフィール
宮城県仙台市出身。民間企業に就職後、転職で東京都庁に入庁。職員として働く傍ら、シンガー・ソングライター兼ボイストレーナーとしても活動。
YouTubeやTwitterでオリジナル曲、歌ってみたを発信し、都庁で唯一パラレルキャリアの実現に向けて取り組みを行っている。「誰か私に名前を。」というアカウントで、日々、活動内容を発信中。
Twitter:誰か私に名前を。
YouTube:ダレワタチャンネル 

【活動実績】
・2019年9月  「誰か私に名前を。」のアカウントを立ち上げ、活動開始。
・2020年4月  クリエイターユニット「RaCreators」を立ち上げ、代表&楽曲担当としても活動。
・2021年7月  音楽制作をアナログからDTMに移行
・2022年6月  MV制作ユニット「kanazawa factory」(金澤文・たおたおん)と作品を共同制作する「誰。project」を始動。
・ 〃   11月  運営チーム「TEAM_D」を発足、バディ/プロデューサーのロブとマネージャーのミオンと活動開始。
・2023年3月  ボイストレーナーとして、無料歌唱相談・指導(週2・3回)を実施。
・ 〃     9月  「TEAM_D」に広報/マネージャーのつーさんが加入。 
・ 〃   10月  「スタふぇす2023 in札幌」のテーマソングを担当 ほか

きっかけは“人の役に立てることはないか”。

私は現在、報道課として知事の定例記者会見の運営や実施、取材対応などを行いながら、平日の夜や週末に、音楽活動を行っています。

活動のきっかけは、“人の役に立ちたい”という思いです。前職で私は、民間企業で営業の仕事をしていました。しかし、利益を追求するあまり、お客さんが欲しいと思っていない商品を売ることに、ときに罪悪感を抱くことも……。

利益追求よりも、誰かの役に立つ仕事をしたいと思い選んだのが、都庁職員の仕事でした。入庁したいま、仕事にとてもやりがいを感じていますが、直接的に都民の方と接する機会が少なく、組織の歯車として働いている感覚があるのも事実です。

そこで、“もっと人の役に立ちたい” “もっと人に喜んでもらいたい”と考えるようになり、そんなときに見つけたのが、パラレルキャリアとしての音楽活動でした。実は、学生時代にストリートライブやバンド活動をしていた私は、音楽なら自分にもできると考え、4年前から活動をスタートさせました。

シンガー・ソングライター「誰か私に名前を。」(ダレワタ)として、1年目はひたすらYouTubeやX(旧Twitter)にオリジナル曲やカバー曲を投稿。そこから現在までの4年間配信を続けた結果、作品総数は90にものぼり、うれしいことにファンになってくれる人も増えています。

令和5年3月からは、ボイストレーナーとしての活動も始め、DMなどを通じてひっきりなしに連絡をいただき、100件以上の歌唱相談・指導をしてきましたが、これらは全て無償で行っています。

(提供:Twitter/誰か私に名前を。)

目指すはパラレルキャリアのパイオニア。

これらの活動は本業が終わってから行うことになるため、活動時間が夜中になることも少なくありません。

子育てもあるので、時間を捻出するのはとても大変ですが、「ありがとう」と言われることで人の役に立てたと感じ、うれしくなります。そのため、どれだけ忙しくても音楽関係の依頼は受けるようにしています。

音楽活動は私のサードプレイスで、“人の役に立ちたい”という思いを満たしてくれる大切なものになっています。

今ではYouTubeやXで都庁職員と名乗っていますが、最初の1年間はこの肩書を伏せて活動していました。公務員という立場上、有償という形での副業が難しいことは分かっており、無償であっても表立って活動することに若干の後ろめたさがあったからです。

しかし、ひっそりと行う音楽活動は、孤独な時間でもありました。そこで、“自分がしている活動をもっと広めたい” “自分のような人がもっと増えてほしい”という思いから、都庁職員と名乗るように。

少しカッコよくいうと、パラレルキャリアである公務員のパイオニア的な存在になりたかったのです。

自分自身がそうであったように、公務員がパラレルキャリアをするにあたっては、多くの人が高いハードルを感じると思います。そこで私は、SNSなどを通じてパラレルキャリアについて発信する際は、“公務員でもパラレルキャリアはできる!やった方が良い!”と、背中を押すイメージで、強めのテンションを心がけています。

そこから、「自分もやっています」「これから頑張りたいです」などのメッセージをもらうと、自身の励みにもつながります。

音楽活動を通して得られたものとは。

私がサードプレイスを見つけたことで、大きく3つの効果を得られたと実感します。

まずは、毎日がシンプルに楽しくなったことです。好きな音楽についてスキルアップできるだけでなく、人の役に立てる機会が増えた点も、日々の楽しみにつながっています。

次に、人生の幅が大きく広がったことです。音楽はつくるだけではなく、誰かに聞いてもらう必要があります。人に届ける過程で情報発信やライティング、マーケティングスキルなどについて勉強してきたことで、音楽以外のスキルが身につき、自身の幅も広がったと感じます。

最後に、人脈が広がったことです。公務員の世界だけで生きていると、通常は庁内での人間関係がメインとなり、外の世界で人脈はできにくいです。

しかし、音楽にまつまわる発信をすることで、外部の人とつながることが増えました。スタートアップの社長やトップセールスパーソンなどと知り合いになり、日々、多くの刺激をもらっています。

このように得られるものも多いですが、公務員がパラレルキャリアをする上では様々な工夫も必要です。

例えば時間の管理です。同僚からは、「よく音楽活動なんてする時間があるね」と言われますが、私は歯磨きの時間や移動時間など、すき間時間を見つけてスキルアップにつながる勉強をしています。

また、本業に全力で取り組むことも重要だと感じています。私の場合、本業に支障をきたしていないからこそ、音楽活動をすることについて上司や同僚から理解を得られている側面もあると感じています。

そして外せないのが、メディアに露出する機会をもつことです。

ラジオや新聞など、様々なメディアに宣伝活動を欠かさず行うことで、取り上げてもらえることが増え、同僚からもパラレルキャリアの活動を認知してもらえるようになりました。

私が口だけではなく、実際に活動していることも分かってもらえると、まわりからの目も少しずつ変わってきたと実感します。

とはいえ、実際にまわりの職員でパラレルキャリアにチャレンジしている人はいないように感じていて、“自分のような人がもっと増えてほしい”という発信活動も、まだ道半ばであると思います。

自分なりのサードプレイスを見つけてほしい。

公務員の世界には、形を気にする人が多い印象があります。しかし私は、サードプレイスを通じて、本当に大事なのは形ではなく価値提供ということを改めて再発見できました。この考え方は、本業にも活かすことができています。

私ができたように、サードプレイスを見つけることで新しい発見や経験ができる人が多くいるはずです。

とはいえ公務員という立場上、パラレルキャリアに前向きになれない人も多いかもしれません。しかし、迷っている人こそ、ぜひ一歩目を踏み出してみることをオススメします。

なかなか一歩目を踏み出す勇気がない人は、一緒に行動する仲間を見つけてください。私の音楽活動も、現在、私を含めて運営チームは4人、それ以前は、クリエーターチーム8人 というように、チームを組んで活動しています。その多くは、SNSなどを通じて仲間になってくれたメンバーです。

現状、私の活動は、公務員の世界では異端と捉えられるでしょう。しかし、そのような空気こそ変えていきたいと考えています。公務員の人が、副業禁止という理由だけで多くの才能を埋もれさせてしまっているのは、本当にもったいないです。

だからこそ私は、これからも自分のやりたいことを体現し、今回のようにメディアを通じた発信も継続したいと考えています。とにかく行動することが全てです。自分自身の力で道を切り開けることを証明し続け、多くの公務員のマインドブロックを壊していきたいと思います。

 

ー 磯部さんの作品紹介(一部抜粋) ー

片道切符 “One-way Ticket”

アクトジジョウ

 

サード・プレイス記事一覧
#1 【金治 諒子さん】ほんのちょっとの勇気から始まった、私のサードプレイス。
#2 【荒井 怜央さん】サードプレイスでみつけた新たな彩り。

#3 【朝里 樹さん】趣味だった怪異・妖怪の記録を続け、作家デビューを果たした現役公務員。 
#4 【矢嶋 直美さん】広がる人との縁が私の人生に彩りを与えてくれる。
#5 【磯部 健太さん】サードプレイスは、自己実現をするための最高の場所。←今ココ
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