国交省が定めた道路橋の定期点検制度を巡り、予算や人員の確保に苦心する自治体も増えているようだ。そんな中で金沢市は、令和3年からAI橋梁診断支援システムを活用した簡易点検を導入し、点検費用や労力軽減につなげたという。
※下記はジチタイワークスVol.22(2022年10月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]BIPROGY株式会社
複数の事業者が点検するため橋梁の診断結果にバラつきが。
平成26年、国交省は長さ2m以上の道路橋に対し、5年に1回定期点検を行うことを定めた。点検者には道路橋の点検に関する技術と実務経験などのスキルが求められるため、費用や人材確保の面で自治体の負担は増大していることがうかがえる。約1,400橋の道路橋を管理している同市でも、点検費用が予算を圧迫し、道路および橋の補修が進めにくくなったほか、技術者不足のため、点検業務の発注がスムーズに行えないなどの課題を抱えていたという。また、点検を10社以上の橋梁点検事業者に委託していたため、診断結果のバラつきが見られることも少なくなかった。
そんな折、地元の建設コンサルタントである「日本海コンサルタント」から提案を受けたのは、同社が「BIPROGY(ビプロジー)」と共同開発したAI橋梁診断支援システム「Dr.Bridge®」と、それを活用した“AI橋梁簡易点検”という手法だった。「ちょうどその頃、新技術の活用で点検の効率化・高度化を推進すべし、と国交省から通達が出されており、タイミングも合致したため、活用方針が決定しました」と、採用の経緯を語る涌波さん。もともと同市は、各種業務のDXに向けた取り組みに積極的だったこともあり、システム活用を後押しした。
打音検査や調書作成を省略し、写真とAIで点検・診断ができる。
同システムは、スマホやデジカメなどで撮影した画像と、点検橋梁の諸元情報などをクラウド上にアップロードするだけで、AIが劣化要因の判断と健全度診断を色分けして表示。その結果データを自動的に点検調書に反映することができる。
従来の方法では、点検者が触診、打音検査などを実施する必要があり、詳細な調書の作成も行っていた。しかし、小規模な橋梁に限りそれらを簡略化し、同システムを活用することで、効率化された点検(AI橋梁簡易点検)が可能となった。これを採用することで、労力や時間が削減され、費用の縮減にもつながったという。
また、担当者の“経験値”による差異が生じがちだった点検結果も、AIが機械的に診断するため、バラつきの抑制につながる。「初めて活用するシステムなので、不明点も少なからずありました。そこで、取りまとめのための書式を作成して委託業者に配布し、ヒアリングや個別指導などを通じて、マニュアルをアップグレードしていきました」。また以前は、1橋あたり20枚前後の調書類が提出されていたが、同システム活用により4枚程度に削減され、最終確認の手間も減ったという。
点検費用の縮減だけでなく、作業の手戻り防止につながる。
同システムを継続的に活用することにより、定期点検1サイクル(5年ごと)につき、2,500万円程度の点検費用縮減を見越しているという同市。「点検は近接目視が基本なので、担当者は橋の下部に潜り込んだり、宙づり状態で点検箇所まで降りたりする必要がありました。しかし、スマホやデジカメで撮影できる箇所なら、今後そういった作業が減るので、安全性も高まると期待しています」。
これから受託事業者側の世代交代も進むだろうが、老朽化診断をAIによる判定に委ねておけば、若手技術者が点検を担当した場合でも作業の不備などによる手戻りを防止することができるだろう。「本市としては、新しいことに挑戦する民間企業の力を借りながら、他自治体の参考になるような事例を公表し、安全で経済的な橋の管理を続けたいと考えています」。
※Dr.Bridge®は、BIPROGY(株)および(株)日本海コンサルタントの登録商標です
金沢市 土木局
道路管理課 技師
涌波 佑奈(わくなみ ゆうな)さん
膨大な判定結果を学習したAIにより熟練技術者と同程度の診断が可能に。
スマホなどで撮った写真と諸元情報の入力だけで、AIが熟練技術者並みの高精度診断を行う「Dr.Bridge®」。橋梁定期点検のあり方に、変革をもたらしそうだ。
橋梁の点検作業を大幅に省力化!
持続可能な社会の実現を目指しています
当社(BIPROGY)は“社会課題の解決を目指す”企業です。Dr.Bridge®をはじめ、持続可能な社会を実現するための様々なテクノロジーを有しています。自治体の課題に関して、気軽にご相談ください。
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