公立学校施設は、災害時に100人以上を収容できる“指定緊急避難所”の役割を求められるが、多くが老朽化しているという課題がある。「防災安全合わせガラス」で防災面の強化を図る「機能ガラス普及推進協議会」の吹春さんに話を聞いた。
※下記はジチタイワークスINFO.(2022年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]機能ガラス普及推進協議会
避難所の役割も担う学校には老朽化対策や機能強化が急務。
災害時に国が定める避難所の約半数を占めるという公立の学校施設。台風や豪雨、地震などの自然災害が多発する昨今、より防災面の機能が重要になっている。しかし、多くの学校施設は昭和40年代後半から50年代に建てられたもので、老朽化はピークを迎え、設備も旧型のままであるという課題を抱えている。
特に窓ガラスは災害時にダメージを受けやすく、割れてしまうと雨風をしのげなくなるなど、避難所の役割を左右する。「多くの学校施設で使われている強化ガラスは、子どもが衝突してもけがをしにくいよう、割れた破片が粒状になりますが、飛来物が貫通することによって砕けてしまっては避難所としての機能が不十分となってしまいます」と吹春さんは説明する。
そこで同協議会が推奨しているのが、割れにくく、万が一割れても破片が飛び散らない「防災安全合わせガラス」だ。2枚のガラスで合成樹脂製の中間膜を挟み、丈夫で災害にも強いという。「自動車のフロントガラスにも使われており、物が衝突してもひびが入るだけで貫通しにくく、破片が飛び散る2次被害の危険がほとんどありません。台風による飛来物の衝突や、地震の揺れでもガラスが砕けないようになっています」。
国から導入の後押しを受け、“改修”だけで強化できる。
防犯性や安全面のメリットから、個人の住宅では普及が進むものの、公立の学校施設ではコストが導入の障壁になり、全国の普及率は約2.6%にとどまっているのが現状だという。文部科学省は令和4年度から、学校の長寿命化と他施設との複合化を図る改修に対し、費用の3分の1~2分の1を補助している。地域住民の交流拠点としての空間整備や多目的スペースの有効活用など、少子高齢化やWithコロナ、脱炭素社会など、時代に合わせた改修が求められるようだ。
「学校関係者に注目していただきたいのが、校舎の長寿命化改修とほかの公共施設との複合化・共用化を兼ねた改築・改修をすれば、改修費の補助率が2分の1になる点です。多くの施設は老朽化が進んでいますが、多額の費用がかかる“建て替え”より“改修”を文科省は薦めているのです」と強調する。
同協議会は平成29年から、全国の自治体や学校施設を対象に防災安全合わせガラスの寄贈や出張授業を行い、積極的な活用を促している。ある公立中学校で行った出張授業で、様々な種類のガラスを割って強度を比べた際には「生徒、教職員ともに防災を改めて考える貴重な機会になった」と、首長から感謝の手紙が届いたという。
防災と両立した省エネの推進がこれからの学校施設には必要。
日本では2050年カーボンニュートラルの実現、2030年度に2013年度から温室効果ガスを46%削減することを目指しており、学校施設も省エネ化が求められる。具体的には再生可能エネルギーの導入、窓や外壁の高断熱化、高効率照明の導入などで、「窓ガラスについても省エネを推進する、熱遮断性に優れたものが望ましいです」。そこで同協議会では被層ガラスの中空層側のガラス表面に、特殊な金属膜を施した「エコガラス」や「エコガラスS」も推奨している。
今後も防災安全合わせガラスの寄贈や同ガラスおよびエコガラスの出張授業で、防災・省エネリテラシーの向上や機能性ガラスの普及を図るという同協議会。寄贈先から“災害時に安心して誘導できるようになった”との声がある一方、空調設備の設置率は普通教室の92.8%に対して体育館は5.3%にとどまり※、避難環境に問題があることも事実。“学校における空調設備設置と窓や壁の断熱性能確保は両輪で進めるべき”を含め、文科省が“新しい時代の学校施設の在り方”を目指す今こそ、学校の防災強化や省エネ推進を図るときではないだろうか。
※文部科学省「新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について」中間報告より
機能ガラス普及推進協議会
事務局長
吹春 高男(ふきはる たかお)さん
寄贈を希望する自治体・教育委員会を全国で募集!
募集概要
■寄贈ガラス防災安全合わせガラス
■対象物件自治体が指定している緊急指定
避難場所(公共施設や学校施設)
■適用条件寄贈活動の趣旨理解および、寄贈後においても、同ガラスの積極的な活用を目指すこと
■申請方法特設サイトより申請(こちらを参照ください)
過去の寄贈事例
令和4年 5月 岡山県備前市
令和2年10月 大阪市
令和元年10月 和歌山県白浜町
平成30年11月 福岡県添田町
平成30年10月 宮城県石巻市
平成30年 5月 岡山県和気町
平成29年11月 奈良県生駒市
災害対策を強化した窓ガラスが多くの住民と生徒の生活を守る。
防災安全合わせガラスとは?
2枚のガラスで合成樹脂製の中間膜を挟み、熱で圧着して製造する「合わせガラス」。中でも、防災安全合わせガラスは、中間膜を60mil(1.524mm)以上にすることで、より防災機能を強化した製品のみに与えられる名称だ。
特徴1⃣:地震や飛来物に強い
大型の飛来物などがガラス面に衝突しても貫通しにくい。人が衝突した場合でも、高いクッション性により安全性を確保する。
特徴2⃣:2次被害を軽減できる
衝撃を受けても飛び散らないので、2次被害につながりにくく、避難所としての機能を維持できる。
●一般財団法人ベターリビンク「BL-bs部品」認定
品質や性能に優れていることに加え、防災対策を有する製品として第三者機関に認定されている。
設置数の多い「強化ガラス」との違い
断熱・遮熱性に優れた「エコガラス」も
脱炭素社会の実現に向け、学校施設でも省エネ化の推進が求められる。被層ガラスの中空層側のガラス表面に施された金属膜「Low-E膜」が断熱・遮熱性を発揮し、建物内を快適な温度に保つ。
特設サイトにて詳細を公開中です!
防災安全合わせガラスの普及活動に協力していただける自治体・教育委員会に、同ガラスの寄贈や出張授業を行っております。寄贈条件や申し込み方法などは自治体向けのサイトをご覧ください。