ジチタイワークス

福岡県北九州市

「行政と市民のメッセンジャーとして市政を変えていく」北九州市議会議員・井上純子さん

ジチタイワークス無料名刺WEB企画「私と名刺のはなし」特別編。今回は、バナナ姫ルナとして注目を集めた、元・北九州市職員、現・北九州市議会議員の井上純子(いのうえ じゅんこ)さんにインタビュー。バナナ姫ルナの活動で感じた葛藤、市議会議員に転身した背景、今後の抱負などをたっぷり伺いました!

バナナ姫ルナに変身する日々を送り始める

ー バナナ姫ルナは、どんな経緯で誕生したのですか?
井上さん:観光課で行うプロモーションの一環で誕生しました。「法被やポロシャツを着てチラシを配るよりも目立って話題性があるから」と予算や計画性もなく始まり、私は職務としてバナナ姫ルナに変身しました。

ー あくまで業務の一環だったんですね。全国のメディアから注目を集めることまでは想定していなかったのでしょうか?
井上さん:はい、想像以上に話題になって驚きました(笑)。嬉しい反面、業務命令で活動していたので、「自分の権利はどこにあるんだろう」と感じることもありました。有難いことに色々な案件が来るのですが、全てには対応できないので仕事を選んで活動することになります。出演するイベントの決定やマネジメントは、基本的に組織が行います。伺いを立てながら観光課職員として動き、内容をチェックされるので、「市役所のために活動している」部分もあって、活動するうちに心がどんどん折れていき、モチベーションを保てなくなっていきました。

ー 業務として活動する大変さはありましたか?
井上さん私はスポークスマンとして組織が準備した回答を話しているだけでしたが、それが個人の発言として世の中に発信されることは怖かったです。市役所の職員は本来、個人の考えを求められることはありませんが、取材を受ける際、「バナナ姫ルナとしてどう思いますか?」「井上さんとして今後どうありたいですか?」と、切り口が私個人になっていました。
また、衣装などの準備や維持のコスト、帰宅後の作業時間の多さを負担に感じ、時には「仕事でここまでするのか」という考えが頭をちらつきました。手当も保障もありませんし、公務員や3児の母として生きてきて自分の情報がネット上にさらされる経験は初めてで、「そこまでする必要があるのか、我が子たちとの時間を削ってまですることなのか」と色々な葛藤がありました。

ー バナナ姫ルナとしての活動では、名刺をどのように活用されていましたか?
井上さん:当時は職務用の名刺を使っていました。ただ、バナナ姫ルナの姿で私自身の名刺を出すわけにはいかないので、キャラクターカードをつくって配ったことがあります。市が行っている観光プロモーションの内容を盛り込んで、プロモーションの一部として活用していました。

▲バナナ姫

市民に還元したい一心で活動を再開

ー 業務としての活動を引退された後、個人活動に移行されましたが、どんな想いがあったのですか?
井上さん:バナナ姫ルナに愛着があり、本当は2代目を残したいと思っていたんです。でも、それはかなわず、ただ消えてしまう結果になったので、これで良かったのかと悩みました。「市民が必要としてくれるから私は活動するんだ」という使命感がモチベーションになっていたこともあり、市民に還元したい想いが強かったからです。
私としては、行政が始めた活動なので行政として続けてほしいと思っていたんですが、組織としては「私ありき」の活動だったとのこと。そこで、市職員としての公務員倫理に抵触しないなら、プライベートで活動すればいいと思うようになりました。

ー 業務から個人活動に移行するのは難しくありませんでしたか?
井上さん:個人活動である以上は組織に迷惑をかけてはいけなかったので、イベントや打ち合わせがあるときには有給休暇で対応していましたね。また、バナナ姫ルナ宛ての問い合わせが市役所へ来ないようにする必要もありました。そこで、職務用とは別のメールアドレスや電話番号を用意し、2枚目の名刺を作成しました。ホームページをつくり、問い合わせフォームから直接連絡できる仕組みも整えました。

市職員から市議会議員に転身

ー 市職員から市議会議員に転身されたきっかけを教えてください。
井上さん:バナナ姫ルナの活動をしていなかったら、市議会議員になろうとは思わなかったはずです。バナナ姫ルナになる前は、市職員として働く中で常に市民を意識した仕事ができていませんでした。100%市民の気持ちに寄り添えていなかったし、市民が「お役所仕事だな」と思うのと同様、私もどこかに壁をつくっていました。内部の評価を気にしながら仕事をして、内部で出世していくものだと考えていた時期もありましたね。でも、バナナ姫ルナとして活動する中で、手紙や電話など、私個人に対するリアクションを頂くようになったんです。この出来事が価値観を大きく変えました。

ー 市民から影響を受けて価値観が変わったんですね。
井上さん:また、個人活動に移行してからSNSを始めたことも影響しています。自治体の職務は細分化されている一方、市民が感じる課題や気づきは幅広い。そういった様々な問い合わせをSNSで受けるようになったんです。特にコロナ禍になり、市民が求める情報の質は変わってきました。実際に、北九州市ホームページのアクセス数は4倍に増加しています。今まで行政サービスに関心のなかった市民が、コロナ禍をきっかけに関心を持つようになったと感じています。

ー 最終的に転身を決意した理由は何でしたか?
井上さん:活動をしていて目線が市民側になっていくうち、市の政策方針が市民の声を拾えているのか疑問で、変えていきたいと感じるようになったことです。現状を変えようと思っても私は平職員で、管理職になるには時間がかかります。「市民の声を代弁して政策に反映できるのは市議会議員だ」と以前から思っていたので、志を果たすには市議会議員が合っていると思うようになりました。

オリジナルの選挙戦でトップ当選を果たす

ー 初めての選挙はいかがでしたか?
井上さん:無所属・選挙コンサルなしで選挙に臨みましたが、ありがたいことにトップ当選させていただきました。用意されたレールに乗ることが嫌いな性格なので、選挙運動は全てオリジナルでしたね。

▲選挙活動の様子

ー 具体的にはどんな取り組みをされたのですか?
井上さん:市議会では市全体の政策が話し合われているものの、政令市の選挙は区で分けられているので、特定の団体やエリアの固定票がある候補の方が有利です。でも、土着選挙をしてしまうと、「目に見える有権者」のためだけの政策になっていきます。市の投票率が下がり、選挙に行かない方が多数派になっている中、無党派層に振り向いてもらう選挙にしようと、主にSNSのライブ配信に選挙運動を絞りました。もちろんバナナ姫ルナの認知度も市民が興味を持つきっかけになったと思います。

ー 支持者からはどんな声が届いているのでしょうか?
井上さん:行政職員から市議会議員へ転身する人を待っていたという声が結構ありました。行政職員は行政のことを一番よく知っているから、課題解決のために動いてほしいというのが市民の声です。そこで、私は主に既存事業にメスを入れることを通じて、最終的に市民サービスの拡充につながればと考えるようになりました。市職員だったこと、バナナ姫ルナの活動をしていたからこその行動力、発信力、それらに対する期待値は高いのだろうと感じています。

ー 市職員から市議会議員に転身したからこそ分かることもあるのでしょうか?
井上さん:議員が行政職員の声を聞く機会が少ないと感じています。これは市職員のときから疑問に思っていました。さらに議員になってから気づいたことですが、議員が会う市職員は限られています。北九州市の場合、議員対応をするのは課長級以上です。ジチタイワークスで取り上げられているような前向きな取り組みや、何かを実現するときに市職員がどんな手順や方法を経ているかは議員にほとんど知られていないので、ぜひ知ってほしいと思っています。

ー 前向きな取り組みに関して印象的だったエピソードはありますか?
井上さん:「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2018」を受賞させていただいた際、何度か広報協力をしたんです。そのとき、市民から「公務員が公務員を褒めて何の意味がある?」というリアクションを頂いたことが非常に印象的でした。市民には「公務員同士が切磋琢磨する」という価値が伝わりづらいのが現状です。議員が市民の声を代弁する存在なのであれば、議員も同じくでしょう。

ー 公務員の活躍を地域の方々に知ってもらうには、どうすれば良いのでしょうか?
井上さん:公務員としてすごいと認められることも大事だけれど、公務員は「市民のため」に存在します。自己満足で終わらず、市民にどう還元されたかという認識を忘れてはいけないと思いますね。以前、兼業やスキルアップを実現することで市役所がより働きやすい環境になったらと思い、議員と意見交換したことがあります。でも、そのときに出た声は「公務員にスキルアップなんてあるのか」「お役所仕事をするだけの公務員に人材育成をしても効果があるのか」というものでした。負の公務員マインドのイメージから、議員も市民も公務員のスキルアップを期待していないんです。
私は、この価値観から変える必要があると思っています。自治体業務は「市民に還元されるか」が判断基準になるため、市民サービスにどう還元できるかを市民や議員にしっかり伝え、相互理解を深めていくことが、公務員が活躍できる機会を増やすことにつながると思います。

▲議員としての活動の様子

市民の声で市政を変えていく

ー 井上さんは、議員をどんな存在だと感じていますか?
井上さん議員は「行政と市民のメッセンジャー」だと思います。行政の情報を市民に分かりやすく届け、市民の代表として課題を吸い上げて政策を改善していく存在を目指しています。

ー 最後に、今後の抱負を教えてください。
井上さん無所属の市民派として柔軟性を持って活動し、多くの声を拾える議員になりたいです。議員になって約1年が経ちますが、市職員だった経歴があり、無所属でしがらみがないからこそ、既存事業の問題提起を自由にできています。今後は、市民の声を一層大きくして市政を変えていくために、議員同士の連携といった広がりを政治家としてつくっていかなければと思っています。

おわりに

今回は、北九州市議会議員の井上純子さんにお話を伺いました。
行政と市民のメッセンジャーとしての熱意が溢れた内容で、インタビューは非常に盛り上がりました!
次回の更新をお楽しみに!

プロフィール

北九州市議会議員
井上 純子(いのうえ じゅんこ)さん

1986年生まれ/北九州市育ち/3児の母。2005年、福岡県立八幡高校理数科卒業(57期)。2005年から15年半、北九州市職員として勤務。2016年から「バナナ姫ルナ」(コスプレ)として市PRを始め、全国メディアから注目を集めて、市のイメージアップに貢献した。2021年、北九州市議選初当選(無所属/八幡西区トップ)。会派『変革と成長』新設、総務財政委員に所属。テレビ朝日「激レアさんを連れてきた。」出演。


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